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42 罠【優奈子】
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招待客が続々と集まるのを目にしてにっこり微笑んだ。
今日の主役はこの私!
私の引き立て役に学生時代の友人達も大勢呼んだ。
私と斗翔さんの婚約パーティーを盛り上げるためにね。
みんなの記憶に残るくらい盛大にやりたいってお父様に言うと、渋っていたけど、最後には私のわがままを聞いてくれた。
当然よね。
だって、可愛い一人娘の婚約パーティーよ?
安っぽい場所でなんかやりたくないわ。
高級有名ホテルのホールを貸し切ってもらった。
それこそ、芸能人が結婚式を挙げるような会場だった。
「今日は婚約パーティーに招待していただいてありがとう」
「お相手は建築デザイナーの森崎斗翔さんでしょ?テレビの特集でみたことがあるわ」
学生時代からの友人達はうらやましいと口々に言った。
斗翔さんだけじゃないわ。
私はこの婚約パーティーのために新しいドレスやアクセサリーを買って、誰にも負けないくらい豪華にしたんだから。
主役だってわかるようにね。
堂々とした立ち姿で会場に入った。
斗翔さんは先に行ってるねと優しく私に言ってくれたから、隣にはいないけど―――
『朝日奈建設、森崎建設合併記念パーティー』
舞台に掲げられた看板に大きな文字が書かれていた。
婚約のこの字もない。
私を見る人は誰もいない。
舞台で話す人達に視線が集中し、私のドレスはまるで場違いだった。
「合併……?」
マスコミが集まり、眩しいほどのフラッシュがたかれ
ている。
朝日奈建設の社長と斗翔さんが握手をして微笑んで撮影され、次々に質問が飛び交った。
「朝日奈建設に吸収合併とのことですが、森崎建設の名前が消えることになります。よろしいのでしょうか?」
「業界トップの朝日奈建設の経営手腕は信頼できるものです。社員のためにも安定した経営をしていただけるのであれば、社名が消えても構いません」
斗翔さんがにこやかに言った。
以前の彼なら、絶対に受け答えなどしなかったくせに今はまるで別人のようだった。
森崎社長と呼ばれることに違和感がない。
「経営から離れ、自分はデザイナーの仕事に集中したいと思っています」
その言葉に全員が納得していた。
森崎の社長になってから、斗翔さんが完成させたものはなく、社長でいることにたいして内部からは反対の声があがっていたのも事実だった。
問題はそこじゃない!
「これはどういうことなの!?」
「優奈子さんの婚約パーティーじゃなかったの?」
「嘘をついたの?」
ひそひそと友達が後ろで話す声が聞こえてきた。
おかしいとか、結婚できると思ってなかったとまで、言われて顔が赤くなるのがわかった。
こんな恥を私にかかせていいと思っているの!?
舞台に駆け寄ろうとしたのをSPがサッと阻んだ。
「どきなさいよ!」
「これでわかっただろう、優奈子」
お父様がSPと一緒に現れた。
「金でものをいわせてもお前になびかない相手もいる」
その言葉に誰が共犯者なのか、すぐにわかってしまった。
「ひ、ひどいわ!」
「お前が今までやってきたことを考えるいい機会だ。そのチャンスをもらったと思いなさい」
今まで―――?
斗翔さんら今までの男とは違っていた。
ちょっと私が誘惑し、お金があるのを見たら、みんな簡単に私を好きになった。
だから、今回もうまくいくって信じていたし、今日は私の婚約パーティーであることも疑ってなかった。
お父様だって『おめでとう』と祝福したわよね?
それなのに―――
「私を裏切ったのね!」
「お前をわからせるためだ。思いどおりにならないことがあるということを」
つまり、この合併もお父様は知っていたし、斗翔さんに協力していた。
素知らぬ顔で!
怒りで手が震えてきた。
それと同時に私がいかに無力なのかも知った。
お父様が敵?
敵になったら、私はなにができるの?
「いいか。これからはお前に好きなようにはさせないからな。カードも止めて使ったものはチェックする。それから、行動もSPに見張らせるぞ!いいな!」
「私を監視するの!?」
「君がやってきたことじゃないか」
暗い影が落ちたような気がした。
振り返るとそこには朝日奈伶弥がいた。
「あ、あなた」
「妻と娘も今日のパーティーに連れてきていてね。まずは謝罪をしてもらおうか」
しつこいにもほどがある。
綺麗な顔でにっこりと微笑んだ。
もしや、これを仕組んだのはこの男ではと思わずにいられなかった。
「朝日奈様、このたびは娘がとんでもないことをしでかしまして」
「柴江頭取の娘さんと聞いたから、どんな立派な娘さんかと思いましたが」
「恥ずかしい限りです」
お父様が頭を下げているのを見て私は敗北を悟った。
そして、会見中だというのに私の横に現れたのは青いドレスを着た綺麗な女性―――
会見中だというのに斗翔さんはその姿をいち早く見つけると、舞台から飛び降りて夏永さんに駆け寄ると抱きついた。
「夏永!」
嬉しそうな顔で抱き上げてぐるぐるとまわって子供みたいにはしゃいでいた。
そして、彼は朝日奈伶弥に言った。
「後は頼みます」
「ああ」
しかたないなと返事をするのが早いか、斗翔さんは夏永さんの手を握って会場から出ていった。
まるで、その先には幸せしかないというような満ち足りた顔で―――
今日の主役はこの私!
私の引き立て役に学生時代の友人達も大勢呼んだ。
私と斗翔さんの婚約パーティーを盛り上げるためにね。
みんなの記憶に残るくらい盛大にやりたいってお父様に言うと、渋っていたけど、最後には私のわがままを聞いてくれた。
当然よね。
だって、可愛い一人娘の婚約パーティーよ?
安っぽい場所でなんかやりたくないわ。
高級有名ホテルのホールを貸し切ってもらった。
それこそ、芸能人が結婚式を挙げるような会場だった。
「今日は婚約パーティーに招待していただいてありがとう」
「お相手は建築デザイナーの森崎斗翔さんでしょ?テレビの特集でみたことがあるわ」
学生時代からの友人達はうらやましいと口々に言った。
斗翔さんだけじゃないわ。
私はこの婚約パーティーのために新しいドレスやアクセサリーを買って、誰にも負けないくらい豪華にしたんだから。
主役だってわかるようにね。
堂々とした立ち姿で会場に入った。
斗翔さんは先に行ってるねと優しく私に言ってくれたから、隣にはいないけど―――
『朝日奈建設、森崎建設合併記念パーティー』
舞台に掲げられた看板に大きな文字が書かれていた。
婚約のこの字もない。
私を見る人は誰もいない。
舞台で話す人達に視線が集中し、私のドレスはまるで場違いだった。
「合併……?」
マスコミが集まり、眩しいほどのフラッシュがたかれ
ている。
朝日奈建設の社長と斗翔さんが握手をして微笑んで撮影され、次々に質問が飛び交った。
「朝日奈建設に吸収合併とのことですが、森崎建設の名前が消えることになります。よろしいのでしょうか?」
「業界トップの朝日奈建設の経営手腕は信頼できるものです。社員のためにも安定した経営をしていただけるのであれば、社名が消えても構いません」
斗翔さんがにこやかに言った。
以前の彼なら、絶対に受け答えなどしなかったくせに今はまるで別人のようだった。
森崎社長と呼ばれることに違和感がない。
「経営から離れ、自分はデザイナーの仕事に集中したいと思っています」
その言葉に全員が納得していた。
森崎の社長になってから、斗翔さんが完成させたものはなく、社長でいることにたいして内部からは反対の声があがっていたのも事実だった。
問題はそこじゃない!
「これはどういうことなの!?」
「優奈子さんの婚約パーティーじゃなかったの?」
「嘘をついたの?」
ひそひそと友達が後ろで話す声が聞こえてきた。
おかしいとか、結婚できると思ってなかったとまで、言われて顔が赤くなるのがわかった。
こんな恥を私にかかせていいと思っているの!?
舞台に駆け寄ろうとしたのをSPがサッと阻んだ。
「どきなさいよ!」
「これでわかっただろう、優奈子」
お父様がSPと一緒に現れた。
「金でものをいわせてもお前になびかない相手もいる」
その言葉に誰が共犯者なのか、すぐにわかってしまった。
「ひ、ひどいわ!」
「お前が今までやってきたことを考えるいい機会だ。そのチャンスをもらったと思いなさい」
今まで―――?
斗翔さんら今までの男とは違っていた。
ちょっと私が誘惑し、お金があるのを見たら、みんな簡単に私を好きになった。
だから、今回もうまくいくって信じていたし、今日は私の婚約パーティーであることも疑ってなかった。
お父様だって『おめでとう』と祝福したわよね?
それなのに―――
「私を裏切ったのね!」
「お前をわからせるためだ。思いどおりにならないことがあるということを」
つまり、この合併もお父様は知っていたし、斗翔さんに協力していた。
素知らぬ顔で!
怒りで手が震えてきた。
それと同時に私がいかに無力なのかも知った。
お父様が敵?
敵になったら、私はなにができるの?
「いいか。これからはお前に好きなようにはさせないからな。カードも止めて使ったものはチェックする。それから、行動もSPに見張らせるぞ!いいな!」
「私を監視するの!?」
「君がやってきたことじゃないか」
暗い影が落ちたような気がした。
振り返るとそこには朝日奈伶弥がいた。
「あ、あなた」
「妻と娘も今日のパーティーに連れてきていてね。まずは謝罪をしてもらおうか」
しつこいにもほどがある。
綺麗な顔でにっこりと微笑んだ。
もしや、これを仕組んだのはこの男ではと思わずにいられなかった。
「朝日奈様、このたびは娘がとんでもないことをしでかしまして」
「柴江頭取の娘さんと聞いたから、どんな立派な娘さんかと思いましたが」
「恥ずかしい限りです」
お父様が頭を下げているのを見て私は敗北を悟った。
そして、会見中だというのに私の横に現れたのは青いドレスを着た綺麗な女性―――
会見中だというのに斗翔さんはその姿をいち早く見つけると、舞台から飛び降りて夏永さんに駆け寄ると抱きついた。
「夏永!」
嬉しそうな顔で抱き上げてぐるぐるとまわって子供みたいにはしゃいでいた。
そして、彼は朝日奈伶弥に言った。
「後は頼みます」
「ああ」
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まるで、その先には幸せしかないというような満ち足りた顔で―――
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