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第1章 魔王融合〈デモンズユナイト〉
魔法拒絶者
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「おはよー」
「よー委員長。よーソーマ」
ソーマとユナは、どうにかこうにか始業前に教室に到着した。
「おーすコウ」
「ソーマ。今日も嵐堂と一緒か。まったくいいよなー委員長さまと仲良くて」
前の席に座ってる戒城コウがソーマに話しかけてくる。
小柄な体にツンツンした髪の毛。
ゲームとかオカルトのことで話が合う。
学校ではいつも一緒のソーマの親友だった。
「ちがうって。別にそうゆうんじゃねーし」
「だってさ今朝も同じ『フライト』だっただろ。いいよな俺も1回くらい」
「だ、か、ら、やめろって!」
コウのからかい言葉に、ソーマが椅子から身を乗り出して本気でキレかけた。
「もう……やめなって2人とも。コウくんは言い過ぎ。ソーマくんも気にしすぎ!」
後ろの席から2人をなだめるのは少しナヨッとした感じの男子。
クラスメートの姫川ナナオ。
フワフワした髪の毛に綺麗な顏つきをしていて、学校のブレザーを着ていないと女の子と間違えられることも多いらしい。
ナナオも、ソーマとコウといつも一緒だ。
「ああ。ごめんナナオ……」
ソーマは後ろを向いて、ナナオに頭を下げた。
朝の件で、少しイライラしていた。
いつもと同じ事なのに。
魔法。
魔法拒絶者。
スクールバッグからテキストを取り出しながら、ソーマは心の中で何度もその言葉を繰り返していた。
#
『大暗黒』
まだソーマが生れる前に世界を襲った大異変。
原因不明の暗黒に空がさえぎられて3日の間、世界は闇に閉ざされた。
そして4日後。
闇が晴れたその日から人間の暮らしは一変してしまった。
この世界に住む人間全員に、これまで持っていなかった能力が備わっていたのだ。
手を触れずにペンやスプーンを動かす者がいた。
心に思い描くだけで、紙やロウソクに火をともす者がいた。
手で触れた相手の傷を塞ぎ、病をいやす者がいた。
「思念干渉による世界規則の個人改変および創造行為」
科学者たちはこの現象をそう定義した。
だがそんな正式名称が決まる頃にはもう、世界中の人々はこの力のことを単純にこう呼んでいた。
ただ「魔法」と。
ソーマたちが生れる頃には、様々な観察と実験によって魔法の力は体系化されていた。
「創造」「破壊」「治癒」「感覚」「変性」……
多岐にわたる魔法の属性。
人によって得意な属性や、苦手、または全くできない属性もあったが、学ぶことでそれを補うことが出来た。
ソーマたちの生まれた世代は、ちょうど「第2世代」と呼ばれていた。
この世代は、その上の世代よりも遥かに魔法の習得が早かった、そして遥かに強力な魔法を使いこなすことができる。
もう人間にとって魔法の存在は、社会や生活と切り離せないモノになっていたのだ。
新生児の1000万人に1人しかいないと言われている特異体質。
『魔法拒絶者』と呼ばれる者たちを除いては。
ソーマは魔法拒絶者だった。
他の子たちがあたりまえに出来ていることが、どうしても出来なかった。
どれだけ集中してみても、勉強してみても無理だった。
「創造」も「破壊」も「治癒」も「感覚」も「変性」も……
ソーマは魔法を使うことができないのだ。
#
だから、学校で一番キツイのは魔法実技の時間だった。
「なんだよソーマと一緒かよ。まったくツイてねーな……」
校庭ではソーマの隣で、黒川キリトがあからさまに大きなため息をついた。
ソーマとキリトは同じチームだった。
「まあまあキリトくん。ソーマくんがんばろう!」
横からキリトを止めるのは姫川ナナオ。
ソーマ、キリト、ナナオの3人が同じチームになっていた。
魔法拒絶者は、魔法実技の授業は見学を許可されている。
だがソーマは自分から言って実技に参加していた。
クラスメートたちの動きやタイミングを参考にして、なんとか魔法の呼吸みたいなものを掴めたら。
そんな思いで参加していた。
今日の科目は『トライボール』だった。
反射神経と、魔法を的確なタイミングで使う判断力が求められる競技だ。
1チーム3人。
1回の試合で使われる「ボール」も3つ。
1つはスカイボール。
バドミントンみたいな羽の付いた軽い球。
風を操る「気象」系魔法の使用者が優位を取りやすい球だった。
1つはアースボール。
特殊な陶器でつくられた手で持ち運ぶことができないくらい重い球。
モノの重さや競技場の地質を変化させる「変性」系魔法の使用が必要な球だった。
1つはミドルボール。
このボールだけは特に変わったことのないバスケットボールくらいの大きさ。
手で持ち運ぶことが可能だが、これは地面に落とした時点で落とした競技者のチームが負ける。
これら3つのボールをそれぞれ1回づつ。
敵チーム側の奥の円陣に先に落とした側のチームが勝者となるのだ。
自分の陣営のサークル前で、3人は1列に並んだ。
3つのボールは自陣と敵陣のちょうど真ん中に並べられている。
「はじめ!」
体育教師の羽柴が、そう言ってホイッスルを吹いた。
試合が始まったのだ。
「よしっ!」
ソーマはミドルボールめがけて直進する。
他の2つはソーマの手には負えない。
ミドルだけはどうにか先取しないと。
「風精!」
ソーマの背中から、ナナオの掛け声。
ゴオオオ……
ソーマの目の前で風が巻いて、スカイボールが舞い上がった。
「よー委員長。よーソーマ」
ソーマとユナは、どうにかこうにか始業前に教室に到着した。
「おーすコウ」
「ソーマ。今日も嵐堂と一緒か。まったくいいよなー委員長さまと仲良くて」
前の席に座ってる戒城コウがソーマに話しかけてくる。
小柄な体にツンツンした髪の毛。
ゲームとかオカルトのことで話が合う。
学校ではいつも一緒のソーマの親友だった。
「ちがうって。別にそうゆうんじゃねーし」
「だってさ今朝も同じ『フライト』だっただろ。いいよな俺も1回くらい」
「だ、か、ら、やめろって!」
コウのからかい言葉に、ソーマが椅子から身を乗り出して本気でキレかけた。
「もう……やめなって2人とも。コウくんは言い過ぎ。ソーマくんも気にしすぎ!」
後ろの席から2人をなだめるのは少しナヨッとした感じの男子。
クラスメートの姫川ナナオ。
フワフワした髪の毛に綺麗な顏つきをしていて、学校のブレザーを着ていないと女の子と間違えられることも多いらしい。
ナナオも、ソーマとコウといつも一緒だ。
「ああ。ごめんナナオ……」
ソーマは後ろを向いて、ナナオに頭を下げた。
朝の件で、少しイライラしていた。
いつもと同じ事なのに。
魔法。
魔法拒絶者。
スクールバッグからテキストを取り出しながら、ソーマは心の中で何度もその言葉を繰り返していた。
#
『大暗黒』
まだソーマが生れる前に世界を襲った大異変。
原因不明の暗黒に空がさえぎられて3日の間、世界は闇に閉ざされた。
そして4日後。
闇が晴れたその日から人間の暮らしは一変してしまった。
この世界に住む人間全員に、これまで持っていなかった能力が備わっていたのだ。
手を触れずにペンやスプーンを動かす者がいた。
心に思い描くだけで、紙やロウソクに火をともす者がいた。
手で触れた相手の傷を塞ぎ、病をいやす者がいた。
「思念干渉による世界規則の個人改変および創造行為」
科学者たちはこの現象をそう定義した。
だがそんな正式名称が決まる頃にはもう、世界中の人々はこの力のことを単純にこう呼んでいた。
ただ「魔法」と。
ソーマたちが生れる頃には、様々な観察と実験によって魔法の力は体系化されていた。
「創造」「破壊」「治癒」「感覚」「変性」……
多岐にわたる魔法の属性。
人によって得意な属性や、苦手、または全くできない属性もあったが、学ぶことでそれを補うことが出来た。
ソーマたちの生まれた世代は、ちょうど「第2世代」と呼ばれていた。
この世代は、その上の世代よりも遥かに魔法の習得が早かった、そして遥かに強力な魔法を使いこなすことができる。
もう人間にとって魔法の存在は、社会や生活と切り離せないモノになっていたのだ。
新生児の1000万人に1人しかいないと言われている特異体質。
『魔法拒絶者』と呼ばれる者たちを除いては。
ソーマは魔法拒絶者だった。
他の子たちがあたりまえに出来ていることが、どうしても出来なかった。
どれだけ集中してみても、勉強してみても無理だった。
「創造」も「破壊」も「治癒」も「感覚」も「変性」も……
ソーマは魔法を使うことができないのだ。
#
だから、学校で一番キツイのは魔法実技の時間だった。
「なんだよソーマと一緒かよ。まったくツイてねーな……」
校庭ではソーマの隣で、黒川キリトがあからさまに大きなため息をついた。
ソーマとキリトは同じチームだった。
「まあまあキリトくん。ソーマくんがんばろう!」
横からキリトを止めるのは姫川ナナオ。
ソーマ、キリト、ナナオの3人が同じチームになっていた。
魔法拒絶者は、魔法実技の授業は見学を許可されている。
だがソーマは自分から言って実技に参加していた。
クラスメートたちの動きやタイミングを参考にして、なんとか魔法の呼吸みたいなものを掴めたら。
そんな思いで参加していた。
今日の科目は『トライボール』だった。
反射神経と、魔法を的確なタイミングで使う判断力が求められる競技だ。
1チーム3人。
1回の試合で使われる「ボール」も3つ。
1つはスカイボール。
バドミントンみたいな羽の付いた軽い球。
風を操る「気象」系魔法の使用者が優位を取りやすい球だった。
1つはアースボール。
特殊な陶器でつくられた手で持ち運ぶことができないくらい重い球。
モノの重さや競技場の地質を変化させる「変性」系魔法の使用が必要な球だった。
1つはミドルボール。
このボールだけは特に変わったことのないバスケットボールくらいの大きさ。
手で持ち運ぶことが可能だが、これは地面に落とした時点で落とした競技者のチームが負ける。
これら3つのボールをそれぞれ1回づつ。
敵チーム側の奥の円陣に先に落とした側のチームが勝者となるのだ。
自分の陣営のサークル前で、3人は1列に並んだ。
3つのボールは自陣と敵陣のちょうど真ん中に並べられている。
「はじめ!」
体育教師の羽柴が、そう言ってホイッスルを吹いた。
試合が始まったのだ。
「よしっ!」
ソーマはミドルボールめがけて直進する。
他の2つはソーマの手には負えない。
ミドルだけはどうにか先取しないと。
「風精!」
ソーマの背中から、ナナオの掛け声。
ゴオオオ……
ソーマの目の前で風が巻いて、スカイボールが舞い上がった。
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