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「申し訳なかった」
いきなり私の目の前で、高貴なお方が頭をおさげになりました。
私は驚いてしまいましたが、娘のアマンダを抱いているので、どうしたらいいのか分かりません。
「オースティン、君に頭を下げられたら彼女も困ってしまうよ」
「しかし、だな。あのリーリアのせいで一つの家庭が壊れてしまっている。そして大変、不本意ではあるが、私はあのリーリアの兄なのだよ。せめて謝罪くらいはせねばけじめがつかないだろう」
アマンダが生まれてようやく2か月が経ちました。
産褥期も恙無く過ごせた私の体調は、すっかり元通りです。
そして現在、私たちは王城に呼び出されているのですが、私の目の前にいる高貴な方も気になりますが、それよりも後ろで猿轡を噛まされ、椅子に縛り付けられている女性が、とても気になります。
だって物凄い形相でこちらを睨みつけてくるのですもの。
私たちが何かしてしまったのでしょうか。けれど、まったく心当たりがありません。
しかも椅子に縛り付けられてはいませんが、夫がスラックスに白シャツだけの姿で同僚に後ろ手に拘束されて、その女性の隣で項垂れています。
これはいったいどういう状況なのでしょう。
私は思わず周囲を見回しました。
ここは王城の一画で、会議室のようなところでしょうか。
大きなテーブルを挟んで、こちら側には私とアマンダ、突然の呼び出しに緊張気味の父と母、そして、かなりお怒りの姉が座り、あちら側には姉の夫であるトレバー様に、この国の高貴な方であるオースティン王太子殿下と眉間に皺を寄せたエヴァン第二王子殿下、お美しい顔を悲し気に歪めているケイリー第一王女殿下がいらっしゃいます。
そしてその奥に、椅子に縛り付けられた女性と夫が近衛騎士数名に、脇を固められているのです。何か不味い事でもしたのでしょうか。
「まずは詳細を説明しないと」
「あ、ああ、そうだな」
あちらではトレバー様とオースティン王太子殿下が、ボソボソと何か仰っているようですが、私たちの方まで声が届いてきませんでした。
「ここに居るクライヴ・ダーリンは、そなたの夫で間違いないだろうか」
オースティン王太子殿下のお言葉に、私は首を傾げます。
今、聞きなれない名前を聞いたような気がしました。
「いや、クライヴ・テレンスだった男で、クライヴ・ランバートで間違いないだろうか」
「え、あ、はい。クライヴ・ランバートであれば、私の夫でございます」
私が戸惑ったからでしょう、オースティン王太子殿下はもう一度言い直してくださいました。
その名前であれば、確かに自分の夫の名前ですから、私はそう返事をします。しかし、先ほどの聞きなれない名前は何だったのでしょう。
「まず、ブラッドリー・ランバート侯爵、並びにルーシャ・ランバート侯爵夫人、そしてシェリル・ランバート嬢、アメーリア・ファーナビー公爵夫人」
「はい」
名前を呼ばれた私たちは応えを返します。
「シェリル・ランバート嬢と夫君であるクライヴ・ランバートの婚姻は解消となった」
「は?」
「言いたいことも聞きたいことも多々あるだろうが、順を追って説明するので静かに聞いてもらえるだろうか」
オースティン王太子殿下がそう仰るのであれば、私たちは従うしかありません。私たち家族は一斉に頷きました。
「ありがとう。シェリル嬢とクライヴの婚姻が解消になった理由だが、我が国の第二王女であるリーリア・ベーヴェルシュタムがクライヴ・ダーリンとの婚姻を望んだためである。また、それ以前に、シェリル嬢とクライヴとの離縁が認められていた」
「え」
「驚くのは当然だが、クライヴ・ランバートが我が妹リーリアを暴漢から助けた功績により男爵位と新たな家名も与えられていた事は知っているだろうか」
オースティン王太子殿下の言葉に黙って耳を傾けますが、王女様を助けた事は知っておりますが、爵位や家名を与えられるなんて話など私は知りません。
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