5 / 12
5.
しおりを挟む「申し訳なかった」
いきなり私の目の前で、高貴なお方が頭をおさげになりました。
私は驚いてしまいましたが、娘のアマンダを抱いているので、どうしたらいいのか分かりません。
「オースティン、君に頭を下げられたら彼女も困ってしまうよ」
「しかし、だな。あのリーリアのせいで一つの家庭が壊れてしまっている。そして大変、不本意ではあるが、私はあのリーリアの兄なのだよ。せめて謝罪くらいはせねばけじめがつかないだろう」
アマンダが生まれてようやく2か月が経ちました。
産褥期も恙無く過ごせた私の体調は、すっかり元通りです。
そして現在、私たちは王城に呼び出されているのですが、私の目の前にいる高貴な方も気になりますが、それよりも後ろで猿轡を噛まされ、椅子に縛り付けられている女性が、とても気になります。
だって物凄い形相でこちらを睨みつけてくるのですもの。
私たちが何かしてしまったのでしょうか。けれど、まったく心当たりがありません。
しかも椅子に縛り付けられてはいませんが、夫がスラックスに白シャツだけの姿で同僚に後ろ手に拘束されて、その女性の隣で項垂れています。
これはいったいどういう状況なのでしょう。
私は思わず周囲を見回しました。
ここは王城の一画で、会議室のようなところでしょうか。
大きなテーブルを挟んで、こちら側には私とアマンダ、突然の呼び出しに緊張気味の父と母、そして、かなりお怒りの姉が座り、あちら側には姉の夫であるトレバー様に、この国の高貴な方であるオースティン王太子殿下と眉間に皺を寄せたエヴァン第二王子殿下、お美しい顔を悲し気に歪めているケイリー第一王女殿下がいらっしゃいます。
そしてその奥に、椅子に縛り付けられた女性と夫が近衛騎士数名に、脇を固められているのです。何か不味い事でもしたのでしょうか。
「まずは詳細を説明しないと」
「あ、ああ、そうだな」
あちらではトレバー様とオースティン王太子殿下が、ボソボソと何か仰っているようですが、私たちの方まで声が届いてきませんでした。
「ここに居るクライヴ・ダーリンは、そなたの夫で間違いないだろうか」
オースティン王太子殿下のお言葉に、私は首を傾げます。
今、聞きなれない名前を聞いたような気がしました。
「いや、クライヴ・テレンスだった男で、クライヴ・ランバートで間違いないだろうか」
「え、あ、はい。クライヴ・ランバートであれば、私の夫でございます」
私が戸惑ったからでしょう、オースティン王太子殿下はもう一度言い直してくださいました。
その名前であれば、確かに自分の夫の名前ですから、私はそう返事をします。しかし、先ほどの聞きなれない名前は何だったのでしょう。
「まず、ブラッドリー・ランバート侯爵、並びにルーシャ・ランバート侯爵夫人、そしてシェリル・ランバート嬢、アメーリア・ファーナビー公爵夫人」
「はい」
名前を呼ばれた私たちは応えを返します。
「シェリル・ランバート嬢と夫君であるクライヴ・ランバートの婚姻は解消となった」
「は?」
「言いたいことも聞きたいことも多々あるだろうが、順を追って説明するので静かに聞いてもらえるだろうか」
オースティン王太子殿下がそう仰るのであれば、私たちは従うしかありません。私たち家族は一斉に頷きました。
「ありがとう。シェリル嬢とクライヴの婚姻が解消になった理由だが、我が国の第二王女であるリーリア・ベーヴェルシュタムがクライヴ・ダーリンとの婚姻を望んだためである。また、それ以前に、シェリル嬢とクライヴとの離縁が認められていた」
「え」
「驚くのは当然だが、クライヴ・ランバートが我が妹リーリアを暴漢から助けた功績により男爵位と新たな家名も与えられていた事は知っているだろうか」
オースティン王太子殿下の言葉に黙って耳を傾けますが、王女様を助けた事は知っておりますが、爵位や家名を与えられるなんて話など私は知りません。
36
あなたにおすすめの小説
幼馴染みの婚約者が「学生時代は愛する恋人と過ごさせてくれ」と言ってきたので、秒で婚約解消を宣言した令嬢の前世が、社畜のおっさんだった件。
灯乃
ファンタジー
子爵家の総領娘である令嬢の前に、巨乳美少女と腕を組んだ婚約者がやってきた。
曰く、「学生時代くらいは、心から愛する恋人と自由に過ごしたい。それくらい、黙って許容しろ」と。
婚約者を甘やかし過ぎていたことに気付いた彼女は、その場で婚約解消を宣言する。
前半はたぶん普通の令嬢もの、後半はおっさんコメディーです。
番を辞めますさようなら
京佳
恋愛
番である婚約者に冷遇され続けた私は彼の裏切りを目撃した。心が壊れた私は彼の番で居続ける事を放棄した。私ではなく別の人と幸せになって下さい。さようなら…
愛されなかった番。後悔ざまぁ。すれ違いエンド。ゆるゆる設定。
※沢山のお気に入り&いいねをありがとうございます。感謝感謝♡
嫌いなところが多すぎるなら婚約を破棄しましょう
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私ミリスは、婚約者ジノザに蔑まれていた。
侯爵令息のジノザは学園で「嫌いなところが多すぎる」と私を見下してくる。
そして「婚約を破棄したい」と言ったから、私は賛同することにした。
どうやらジノザは公爵令嬢と婚約して、貶めた私を愛人にするつもりでいたらしい。
そのために学園での評判を下げてきたようだけど、私はマルク王子と婚約が決まる。
楽しい日々を過ごしていると、ジノザは「婚約破棄を後悔している」と言い出した。
【完結】馬車の行く先【短編】
青波鳩子
恋愛
王命による婚約を、破棄すると告げられたフェリーネ。
婚約者ヴェッセルから呼び出された学園の予備室で、フェリーネはしばらく動けずにいた。
同級生でありフェリーネの侍女でもあるアマリアと、胸の苦しさが落ち着くまで静かに話をする。
一方、ヴェッセルは連れてきた恋の相手スザンナと、予備室のドアの外で中の様子を伺っている。
フェリーネとアマリアの話を聞いている、ヴェッセルとスザンナは……。
*ハッピーエンドではありません
*荒唐無稽の世界観で書いた話ですので、そのようにお読みいただければと思います。
*他サイトでも公開しています
婚約破棄の代償
nanahi
恋愛
「あの子を放って置けないんだ。ごめん。婚約はなかったことにしてほしい」
ある日突然、侯爵令嬢エバンジェリンは婚約者アダムスに一方的に婚約破棄される。破局に追い込んだのは婚約者の幼馴染メアリという平民の儚げな娘だった。
エバンジェリンを差し置いてアダムスとメアリはひと時の幸せに酔うが、婚約破棄の代償は想像以上に大きかった。
伯爵家の箱入り娘は婚儀のまえに逃亡したい
瑞原唯子
恋愛
だから、きっと、恋を知らないままでよかった。
伯爵令嬢のシャーロットはもうすぐ顔も知らないおじさまと結婚する。だから最後にひとつだけわがままを叶えようと屋敷をこっそり抜け出した。そこで知り合ったのは王都の騎士団に所属するという青年で——。
---
本編完結しました。番外編も書きたかったエピソードはひとまず書き終わりましたが、気が向いたらまた何か書くかもしれません。リクエストなどありましたらお聞かせください。参考にさせていただきます。
年上令嬢の三歳差は致命傷になりかねない...婚約者が侍女と駆け落ちしまして。
恋せよ恋
恋愛
婚約者が、侍女と駆け落ちした。
知らせを受けた瞬間、胸の奥がひやりと冷えたが——
涙は出なかった。
十八歳のアナベル伯爵令嬢は、静かにティーカップを置いた。
元々愛情などなかった婚約だ。
裏切られた悔しさより、ただ呆れが勝っていた。
だが、新たに結ばれた婚約は......。
彼の名はオーランド。元婚約者アルバートの弟で、
学院一の美形と噂される少年だった。
三歳年下の彼に胸の奥がふわりと揺れる。
その後、駆け落ちしたはずのアルバートが戻ってきて言い放った。
「やり直したいんだ。……アナベル、俺を許してくれ」
自分の都合で裏切り、勝手に戻ってくる男。
そして、誰より一途で誠実に愛を告げる年下の弟君。
アナベルの答えは決まっていた。
わたしの婚約者は——あなたよ。
“おばさん”と笑われても構わない。
この恋は、誰にも譲らない。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 いいね❤️励みになります!ありがとうございます!
【完結】アナタが選んだんでしょう?
BBやっこ
恋愛
ディーノ・ファンは、裕福な商人の息子。長男でないから、父から預かった支店の店長をしている。
学生でいられるのも後少し。社交もほどほどに、のんびり過ごしていた。
そのうち、父の友人の娘を紹介され縁談が進む。
選んだのに、なぜこんなけっかになったのだろう?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる