59 / 71
59.夜会の始まりですわ
しおりを挟む会場にファンファーレが鳴り響きます。
「国王陛下並び妃殿下、第一王子殿下、第二王子殿下、及びご婚約者様方のおなりにございます!」
そしてわたくし達を呼ぶ声が聞こえると、会場内が騒めくのを感じましたわ。
そうでしょうね。
まずは王太子殿下とお呼びしていたはずのジュリオ殿下を第一王子殿下と呼びましたし、ご婚約者様方ですものね。
少しでも勘のいい方でしたら、重大な発表があるという通達を思い出されている事と思いますわ。
陛下と陛下にエスコートされた王妃様を先頭に、ゆるゆるとわたくし達は王族用の席へと進みます。
けれどその時点ではしわぶき一つ聞こえませんわ。それも当然でしょう。皆様、頭を垂れておりますもの。
一番広いこの広間をこの国の貴族たちが埋め尽くし、しかもその全員がーー男性は頭を垂れ、女性はカーテシーをしているのです。壮観の一言に尽きますわね。
「皆のもの、顔をあげて楽にしてくれ」
まずは王妃様を椅子に腰かけさせた陛下が、王妃様に寄り添うように横に立つと皆様に声をかけました。その声で皆様が顔をお上げになります。そして壇上にいるわたくし達を見つめて、またざわりと騒めきました。
あら、あそこにいるのはサリュース様ではございませんの?
では隣りに居るのはウィンダム侯爵とご夫人かしらね。
わたくしは壇上から見える位置にいたサリュース様に目を止めました。やっぱり嫡男ではなくサリュース様を連れていらっしゃったのね、ウィンダム侯爵。
わたくしは壇上におりますけれど、スポットライトが当たっている訳ではありませんし、会場内は豪奢なシャンデリアと魔道具の灯りでとても良く見えるのです。
それにしてもサリュース様には驚かされますわね。
だって青一色のドレスを身に纏っていらっしゃるのですもの。
この国では、金と青の2色は王族のお色ですの。ですから、たとえ自分の婚約者が青い目をしていたとしても、青一色のドレスを身に纏えるのは王族の婚約者だけなのですわ。
こんな公の場で青一色のドレスを身に纏うなど、本来であれば顰蹙もののはずなのですが、よくウィンダム侯爵もお許しになったものですわね。
このひと月あまり相手にされてもいませんでしたのに、サリュース様は本気で今日、ジュリオ殿下とわたくしの婚約破棄が為されると思っていらっしゃったのでしょうか。いいえ、そう思ったからこそ青い色のドレスを身に纏っていらっしゃるのでしょう。そして自分とジュリオ殿下が婚約できると、そう信じて。
そしてウィンダム侯爵も、たぶん他の貴族の方たちもそう思っていたのではないかしら。
ジュリオ殿下とサリュース様のお噂はだいぶ広まっておりましたし、貴族なんて方たちは、そういった情報の収集に余念はございませんもの。でなければ自分たちが美味しい思いをすることなど難しいですからね。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
3,139
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる