秘密がばれた竜王は従者たちに求愛される

天霧 ロウ

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 ベルケットの件から数日。
 たまには散歩をしたいという願いにゲオルグ以外は快く付き合うと言ってくれた。さすがに四匹に囲まれていると息が詰まる。そのためもっとも圧を感じないセレンケレンのみ従事することを許した。
 そして、セレンケレンのおすすめである花に埋め尽くされた小島にきていた。

「クローツェル様、ここ最近上の空ですけどなにかあったんですか?」

 花冠を作っていたセレンケレンの太ももを借りて花の香りと日向の心地よさを堪能していたクローツェルは閉じていた目蓋をゆっくりと持ち上げた。

「なぜそう思う」
「だって、クローツェル様が寝転びたいから腿を貸してくれなんて今まで言ったことないじゃないですか」
「そうだろうか?」
「そうですよ」

 セレンケレンは断言するとできあがった花冠をクローツェルの頭に乗せてくる。淡い色の小さな花を用いた花冠はクローツェル好みだ。

「ほう、綺麗にできてるな」
「クローツェル様がほしいならあげますよ」
「ならもらおう」

 花冠をもらえた嬉しさにゆったりと尻尾の先が揺れる。久しぶりの穏やかな時間にいつになく落ち着く。セレンケレンの手がクローツェルの髪を一束とると三つ編みを作っていく。そのさまを飽きることなく眺めているとセレンケレンの手が不意に止まった。

「どうした?」
「クローツェル様、嵐が来ます。本島に戻りましょう」
「本当に来るのか?」

 遠くを見ても雷雲の姿はまるでない。頬を撫でていく空気も陽気さをはらんでいる。気候に敏感な風竜の直感が外れることがないといえど、あまりに突拍子すぎる。
 セレンケレンははるか遠くをまっすぐ見据え、めったに見せない険しい顔をした。

「天候をなめてはだめですって。さ、帰りますよ」
「そこまでいうならしょうがないな」

 小さくため息をついて起き上がると、先に立ち上がったセレンケレンが手を差し伸べてくる。その手を取って立ち上がり、もらった花冠を自分の部屋へと繋がる空間へといれて背中にしまっていた翼をだす。数度羽ばたいて空を飛べば、セレンケレンに引っ張られながら天空の島へと向かう。
 セレンケレンが告げたように小島からでて数分、あれほど晴れやかだった空はあっという間に暗くなり、大粒の雨が降ってきた。地上であたる雨よりも冷たく、体温を奪っていく。そのせいかあまり動かさない翼の動きがいつもにまして鈍くなる。そのことに察したセレンケレンがクローツェルの腰に手を回すとかすかに眉を寄せた。

「一度近くの島で休みましょ」
「そう、だな」

 体の芯もだいぶ冷えてきていくら浄化の力で体調を崩さないといえど堪える。なにより握っているセレンケレンの手がいつになく冷たい。
 近くの島に下りれば、幸い洞窟があった。中は少しじめついているが、雷雨が鳴り響く外に比べれば雨風をしのげるだけでじゅうぶんだ。
 セレンケレンが軽く腕をふれば、じめっとした空気がでていき洞窟内はカラッとした空気が循環する。ふっと息を吐いて淡い黄緑色に輝く火の玉が宙に浮いた。おかげでクローツェルの翼や服はすぐに乾き、体の芯まで冷えていたのもだいぶましになった。

「助かった」
「どういたしまして」

 ニコッと無邪気に笑って返すセレンケレンにクローツェルも自然と微笑んだ。だが、よくよく見ればかすかにセレンケレンの体が震えていた。風竜は風の流れを操って体温調整する反面ほかの竜に比べその体は非常に弱く繁殖力もそれほど強くないのだ。ゆえに今ではもっとも数が少なくなってしまった。
 それでも竜将としての誇りなのかセレンケレンは無理矢理震えを抑え込んで、なんてことないように振る舞っているのだ。

「セレンケレン、ちょっときてくれ」
「どうしました?」

 疑うことなくそばに来たセレンケレンの腕を掴むと引き寄せた。少しだけ体勢を崩したセレンケレンが眉を上げてパチパチと目をしばたいた。

「クローツェル様、薄暗い中でいきなり引っ張るなんて危ないじゃないですか。どうしたんです?」
「体が冷えている。このままではお前が風邪を引いてしまう」

 はっきりと言えば、セレンケレンが緑色の瞳を見開き、唇を引き締めた。だが、それも一瞬でにこりといつも見せる人懐っこい笑みを浮かべた。

「もう、クローツェル様ったら大げさですって。僕はこれでも竜将ですよ? このぐらいのへっちゃらです」
「ならなぜ震えている? 風竜が寒さに弱いことはお前が一番わかっているだろう」

 そこまで指摘すると、セレンケレンは笑みを引っ込めて小さく唇をとがらせた。

「僕はクローツェル様を守るためにいるんです。そんな僕がクローツェル様に迷惑をかけるわけにいかないじゃないですか」
「迷惑なんて思ってないとも。ほら、隣に座るといい」
 
 優しく手を引っ張れば、セレンケレンの細長い尻尾が少し揺れ、観念したようにクローツェルの隣へと腰を下ろした。自分より頭一つ小さくまだ細い体を腕の中に抱き寄せる。
 案の定セレンケレンの体は冷え切っていた。翼を出してさらに包み込んでやれば、少しだけ震えが止まった。クローツェルの肩に頭を預けたセレンケレンが申し訳なさそうに眉を下げた。

「クローツェル様のお手を煩わしてすみません」
「気にするな」

 ぎゅっと抱きしめていてもセレンケレンの体はいっこうに温まらない。外をみればまだ雷雨はやみそうになかった。

「今頃、ベルケットやハリューシカが血相を変えて探しているだろうな」
「でしょうね。僕も竜将なのに情けないなあ……」

 困ったように笑うセレンケレンにどう言葉をかけるのが正解なのかわからない。さらに冷えていく体をさすってやるものの温まる気配もない。このままで本格的に命に関わってしまう。
 そういえば、以前読んだ本で素肌でくっつくと温まる描写が書かれていたことを思い出す。本当かどうかはわからない。けれど、試す価値はあるだろう。

「セレンケレン、いったん離れてくれ」
「は、はい」

 表情を取り繕う気すらもうないのか、寂しそうな顔をしてそろそろと離れる。クローツェルは長衣のボタンを外した。本当は陥没した乳首を見せたくないがそうもいってられない。膝を立てて足を少しだけ開く。
 あっけにとられているセレンケレンの方へ向くと腕を広げた。

「傍に来い、セレンケレン」
「わかりました……」

 こわごわと近づいてきたセレンケレンを腕の中に抱きよせれば、セレンケレンの体が小さく跳ねた。翡翠色の柔らかい髪を優しく撫でながら真っ平らな自分の胸に顔を当てさせ、抱きしめ直す。

「これならさっきより寒くないだろう」
「寒くは、ありませんが」

 行き場のない両手をさまよわせながらセレンケレンが上目遣いで見てくる。セレンケレンの体はまだ冷えていた。思い切ってセレンケレンの腰に足を絡ませてさらに密着すれば、セレンケレンの顔が真っ赤になった。

「ク、クロールェル様っ、このくっつきかたはよくありませんって!」
「しかし、こうした方が温まるだろう?」

 命に関わるのに悠長なことをしていられない。ましてや成長期も控えているとなれば余計にその思いは強くなる。背中を優しくさすっていれば、ズボン越しといえどちょうど蕾の位置になにやら硬い感触が伝わった。思わず手を止めて、セレンケレンを見下ろせば耳やうなじまで朱色に染まっていた。

「セレンケレン、なにやら硬いものが当たっているのだが」
「だからいったじゃないですか! このくっつきかたはよくありませんって!」

 密着しているせいかズボン越しにセレンケレンの高ぶりがぴったりと食い込んでいる。それでも、一度意識してしまうときになってしょうがない。

「どうにか収まらないのか」
「無理ですって! クローツェル様も男ならわか……え? あれ?」

 セレンケレンは困惑気味に密着しているお互いの股の間へ視線を落とした。あきらかに雄の象徴がないクローツェルの足の間にますます眉を下げた。

「クローツェル様の股間、ないじゃないですか」
「…………」
「あ、もしかして幼少期の頃に理由があって切除したんですか?」

 ぎこちなく笑いながら早口気味にセレンケレンが尋ねてくる。しばらく視線を外していたが、じっと見つめてくるセレンケレンに観念して告げた。

「私のこれは生まれつきだ」
「え、えぇー?! だ、だって、この形って」

 セレンケレンがマグマのごとく顔を赤くして密着している足の間へと視線を落とす。
 気のせいかさっきよりも大きく硬くなっている気がする。布越しだからなんとか耐えられているが、もし生だったらと思うとクローツェルの顔も少しだけ熱をおびていく気がした。
 すっかり高ぶらせてはいるもののセレンケレンはいまだに理解できないのか、何度もクローツェルの顔と密着しているお互いの足の間を見比べる。それでも無理矢理納得したのかこわごわと聞いてきた。

「このことはほかの竜将は知ってるんですか?」
「ベルケットは私の体のことを昔から知っている。ゲオルグとハリューシカにはつい先日バレた」
「そういうことだったんですか。あー、でも、これでゲオルグが急にクローツェル様のご機嫌を伺うような態度に納得できました。今まで文句言ってたのに態度が百八十度変わっておかしいなあって思ってたんですよ」

 セレンケレンはあきれたようにため息をついた。
 セレンケレンが冷静さを取り戻したおかげか少しだけ落ち着いた高ぶりに内心ホットしつつも、それでも手っ取り早く落ち着かせるには出させた方がいいのだろう。問題はどこにださせるかだ。
 いくら空気を循環させているといえど、洞窟内にださせるのは気が引ける。かといって外は雷雨だ。せっかく温まりつつある体をまた冷やさせるわけにはいかない。ならば、答えはほぼ決まっている。

「セレンケレン、セックスはしたことあるか」
「は? え? ちょっ、いきなり何言い出すんですか?!」

 再び完熟トマトのごとく赤くなったセレンケレンの反応は言葉よりも雄弁だ。初体験となると、いささか不安を感じるが雄としての本能でどうにでもなるだろう。

「風竜の精子はそれほど強くないと聞く。洞窟内でだされても困るからお互い暖をとるついでに私の中にだすことを特別に許可する」
「い、いやいやっ、クローツェル様っ、ご自身が何を言われてるかわかりますか?!」
「理解している」
「してないでしょっ?! いいですか、確かに風竜の精子はほかの竜に比べて妊娠率は低いですけど、それでもする時はするんですよ! そ、それにセックスは好きな人とするべきです!」
「そうか。セレンケレンは私のことが嫌いだったのか」
「そんなことありません! 僕なりにクローツェル様をお慕いしています。でも、だからといって今セックスするのは違うって言うか……」

 セレンケレンは視線をさまよわせた後、シュンと頭を下げた。頑なにクローツェルとセックスをしようとしないセレンケレンからはベルケットと似た空気を感じる。

「お前は私に好意を持っている。そして、私が許可するといっているのになぜためらうのだ。ゲオルグやハリューシカなら喜び勇んで突っ込んでくるぞ」
「理性が溶けてるその二匹と一緒にしないでくださいよ……。いいですか、クローツェル様。クローツェル様は体は特殊ですけど僕らの唯一無二の王様です。ただの竜ではないんですよ」
「わかっている」
「わかっていたらセックスをしていいなんていいません」

 あれこれ理由をつけて必死に耐えているセレンケレンに感心してしまう。それでも本能なのかきっちり高ぶらせている姿はある意味滑稽だ。これではきりがない。
 クローツェルはいったんセレンケレンを腕の中から解放すると、ズボンを脱いでゴロリと寝転がった。足を広げて自ら蕾を左右に広げて見せつけた。

「御託は聞き飽きた。私がいれていいと言っているのだ、早くこい」
「ぅ…、わかりました」
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