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12 おまけ セルカ視点の話1
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毎朝目が覚める瞬間は嫌いだった。というのも、朝目覚めたら自分だけしかいないからだ。来客用に執事という名の木偶人形を自動的に動かしているが、しょせん悪質なおままごと。
だが、今は違う。それどころか目を開ける瞬間が幸せなのだ。セルカを四つの腕でしっかり抱きしめ、差し込む朝日がザクベルの穏やかな寝顔を照らす。キラキラと輝く短い銀髪と睫毛は燐光をまとったように淡く輝く。
冷たそうな青い肌は見た目に反して温かい。セルカは逞しい胸板に顔をすり寄せ、うっとりとザクベルの寝顔を見上げた。
「あの日、ギルドに行って本当に良かった」
でなければ、自分はザクベルと出会わず、今でも毎朝憂鬱な気分だっただろう。
産まれながら魔物の血を引く自分と違い、後天的に人外になった魔人の話はセルカも度々耳にしていた。それでも、体の一部や身体能力が変わる程度で魔物と人間の混血である自分とたいして違いないものだと思ったものだ。それは異能持ちにたいしても同じだった。
毎年恒例の収穫期は人手が不足する。しかし、今年度は収穫量が多いにもかかわらず、出せる給料も例年と大差ないため人手が一向に集まらなかった。ほかにもノーストリア家のものはいるが、彼らには観光側を頑張ってもらっているため農園はセルカ一人で切り盛りしていた。
今年も亡くなった父の友人――ホドックは文句を言いながら手伝ってくれるだろうが、本質を見抜く異能を持つ彼は能力こそ素晴らしいものの肉体は普通の人間だ。
「やっぱり人手が足りなさすぎるなあ」
だが、割に合わない期間限定の仕事を誰が手伝ってくれるだろうか。ギルドに早くから申請したものの応募してくるものはいない。
「しょうがない、もう一度ギルドに行って頼むか」
仮にも貴族と通称される北区域を直轄するノーストリア家の当主として情けないが、背に腹はかえられない。セルカだって北区域は全地域の食事事情を七割支えているわりには割が合わない責任感を覚えるが、それが自分の役目なのだからしょうがない。
そうして久しぶりに中央区域へ出向いた時、ギルドがいつもと違ってぴりついた空気をしていた。原因はすぐにわかった。同時に場違いな存在がいた。
多くの刻印を体に刻み、カーゴパンツに脛まである黒のブーツを身につけた二メートルを優に超える筋骨隆々の男――魔人がいたのだ。それだけでも目を引くが、黒い腹掛けからのぞく青い肌は腕が四つある。
くすみがない短い銀髪はギルドの味気ない電灯に照らされても淡い燐光を放つがごとく煌めいていた。受付嬢と交わしている声は少しどもり気味で覇気がないが、疲れを滲ませるかすれたなめらかな低音がより魅力的に聞こえた。
受付嬢とやりとり終えたのだろう。会釈して踵を返す。厳つい顔には大きな傷があり、髪と同じ色をした三白眼もあって傲慢で強圧的な雰囲気は否応なく身構えさせる。
両耳にも刻印が刻まれたピアスを三つずつつけているあたりよほど凶悪な魔人なのだろう。けれど、彼のためにこしらえられたようでとても似合っていた。なにより浮世離れした異質な雰囲気がより魔人の魅力をかき立てていた。
魔人が出て行くと張り詰めていた空気が一気に緩み、いつも通りガヤガヤと騒がしい空気に包まれていく。しかし、セルカの頭は突然現れた強烈な存在に脳はおろか、心にまで焼き付いた。そして、彼と親しくなって恋人になりたいと思った。
そうと決まれば、先ほど親しく話していた受付嬢に彼の情報をもらいにいった。普通なら個人情報は渡してもらえないが、セルカは北区域を管轄するノーストリア家の当主だ。当主である証しの指輪と正当性のある理由を伝えれば、ギルドは融通を聞かせてくれる。
アルシェと名乗った受付嬢よりさらに偉いギルド長に奥の個室へ案内された。ギルド長は向かいに座るなり頭を下げた。
「申し訳ありません、いくら貴族の方でも彼の個人情報は開示できません」
「それは彼が管理局と関係している魔人だからかい?」
魔人になる経緯がどうあろうと見つけ次第、処分するのが法律で決まっている。それなのに堂々と町中を歩けるのは中央管理局公認か管理局直轄の魔人だけだ。二者は似ているようで違う。
前者は公認であって管理局の管理下にはいないのだ。たいして後者は管理局の管理下におり、噂では命すら管理局の一言であっけなく失われると聞いたことある。
セルカの問いにギルド長は青ざめ渋々頷いた。
「そうか。でも名前ぐらい教えてくれてもいいじゃないか」
「名前だけなら、まあいいでしょう。彼はザクベルといいます」
「ザクベル、ザクベルか」
忘れないように復唱してしっかり頭と心に刻む。チラチラと様子をうかがうギルド長にセルカは持ち前の美貌を活かすように目尻を下げて微笑んだ。
「彼に依頼を頼みたいんだけどいいかな? 君もわかると思うけど、もうすぐ北区は収穫シーズンでね。人手がまったく集まらないんだ。彼はすごそうだし、彼を借りたい」
「可能ではありますが、ザクベルに依頼したいのでしたら一度中央管理局へ通した方がいいと思います」
「私は貴族なのにかい?」
貴族の権限は管理局の局長と同等だ。棘を含むセルカの発言にギルド長は慌てて続けた。
「ザクベルは特殊な魔人でして……。貴族であるあなた様の仕事は内容に関係なく最高ランクの仕事となります。そのような仕事をザクベルに任せるのは、その……」
うまいこと言っているが、ザクベルを異様に隠そうとするあたり、おおよそ中央管理局の研究部門が関係しているのだろう。
実体があるかよくわからない部門だが、以前セルカが北区域の当主になった際、統括管理責任者が挨拶しに来た。派手な赤髪と白いスーツが似合ったハンサムだという記憶があるものの、セルカの直感が自分以外の人間を駒としか思っていないロクデナシと答えを出したのを思い出した。
黙り込んだセルカへギルド長が早口に言った。
「で、ですが、彼はあのような見た目なもののとても勤勉な魔人です。その勤勉さから現在ギルドでは、管理局に監視なしでも――不意の悪意に対して力を使わないかなど――社会に適合していけるか試験を提案している最中なのです」
「じゃあ、試験現場を私の農場でやればいいじゃないか。私の大農園は広いし、彼を雇ったらそれ以外雇う予定ないから被害も最小限にとどめられる。管理局も不満はないだろう」
すうっと萌黄色の瞳を細めて微笑みかける。ギルド長は冷や汗をハンカチで拭いながら「管理局に提案してみます」と答えた。満足の答えを出したギルド長にセルカは鷹揚に頷くと立ち上がった。
それから二日。管理局からの返信はすぐにきた。セルカの提案は受け入れられ、ギルドの受付嬢であるアルシェを通して依頼するとのこと。ザクベルは時間をきっちり守るためザクベルが依頼完了を報告する日を教えてもらいこっそり観察しようと思った。
ワクワクしながらザクベルがくるのを待っていたら、すでにザクベルは来ていたようだ。アルシェと言葉を交わしていた。盗み聞きしようとしたが、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返れば、東西南の当主達だ。タイミングが悪いと思いつつも、むげにするわけにもいかず彼らの会話を右から左に流しながら適当に愛想良く笑っておく。セルカの美貌なら許されるのだ。早く会話を切り上げてくれと思っていれば、かすかに視線を感じた。
視線を感じた方へ振り向けば、バチッとザクベルと目が合う。ザクベルはすぐに視線をそらすと慌てて出て行ったようだ。まさかの反応にセルカは後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けた。
「セルカ、真顔になってどうした?」
「あ、いや。やり残した書類を思い出してね。私は先に帰るよ」
ニコッと愛想良く笑って三人に告げると早足でギルドを出た。
家に帰ったセルカは広いベッドにうつ伏せて倒れるなり、ため息をついた。
「はじめて目が合ったのに……」
まっすぐで誠実な色を宿した銀の瞳までセルカ好みだ。ゴロゴロとベッドを転がっていると、天井を呆然と見上げた。
「依頼、受けてほしいなあ」
でないと接点ができない。貴族でありドリアードの血を持つセルカは管理している大農園と繋がっているため領地から滅多に出られないのだ。だが、翌日そんな不安は嘘のように吹き飛んだ。
ザクベルが依頼を引き受けたと聞くなり、セルカは自分でも信じられないほど行動が早かった。
まずは警戒されないように優しく声をかけつつ、素直に思っていることを告げた。セルカからしてみれば、ザクベルも見た目が変わった青年の一人でしかない。だが、ザクベルからしたらその言葉は特別だったようだ。
農場に連れてきて物理的距離も埋められた。少しずつザクベルとの距離が近づいているのを感じながら、一定の距離以上埋められない。どう崩すか考えていれば、天はセルカの味方をしたようだ。
試験とはいえ、自室に入ろうとしたらあやうく半身飛ばされそうになった。やりすぎだと内心憤りながらも、ザクベルが助けてくれなかったらと思うと血の気が引く。そんなセルカにザクベルから一緒に寝起きを提案されたのだ。
当然断る理由はない。内心でガッツポーズしながら、せっかくだからとザクベルの逞しい胸板に密着し、上目遣いでお願いした。
荷物を取りに戻ったザクベルを確認した後、書斎である自室に戻るなり、にやけてしまう。
「扉はやり過ぎだろうけど、ザクベルと寝起きできるなら悪くないな」
このままなし崩しに肉体関係まで持ち込んで、あとから心を掴むのも悪くない。だが、真面目なザクベルのことだ。恋愛よりも責任感がでて、セルカをそういう対象としてみてくれなくなるだろう。
「まあいい。時間はまだある。一緒に寝起きしてれば、ザクベルだってセックスしたくなるはず」
ザクベルが自分へ向ける恋慕に気づかないほどセルカは鈍くない。しかし安易に好意を告げたらザクベルを困らせる可能性がある。からかったりするのはいいが、本気で困らせたくないのだ。
焦がれていた相手と自分のベッドで一緒に寝るという思いがけない状況はセルカの魔物の血を暴走させた。
だが、今は違う。それどころか目を開ける瞬間が幸せなのだ。セルカを四つの腕でしっかり抱きしめ、差し込む朝日がザクベルの穏やかな寝顔を照らす。キラキラと輝く短い銀髪と睫毛は燐光をまとったように淡く輝く。
冷たそうな青い肌は見た目に反して温かい。セルカは逞しい胸板に顔をすり寄せ、うっとりとザクベルの寝顔を見上げた。
「あの日、ギルドに行って本当に良かった」
でなければ、自分はザクベルと出会わず、今でも毎朝憂鬱な気分だっただろう。
産まれながら魔物の血を引く自分と違い、後天的に人外になった魔人の話はセルカも度々耳にしていた。それでも、体の一部や身体能力が変わる程度で魔物と人間の混血である自分とたいして違いないものだと思ったものだ。それは異能持ちにたいしても同じだった。
毎年恒例の収穫期は人手が不足する。しかし、今年度は収穫量が多いにもかかわらず、出せる給料も例年と大差ないため人手が一向に集まらなかった。ほかにもノーストリア家のものはいるが、彼らには観光側を頑張ってもらっているため農園はセルカ一人で切り盛りしていた。
今年も亡くなった父の友人――ホドックは文句を言いながら手伝ってくれるだろうが、本質を見抜く異能を持つ彼は能力こそ素晴らしいものの肉体は普通の人間だ。
「やっぱり人手が足りなさすぎるなあ」
だが、割に合わない期間限定の仕事を誰が手伝ってくれるだろうか。ギルドに早くから申請したものの応募してくるものはいない。
「しょうがない、もう一度ギルドに行って頼むか」
仮にも貴族と通称される北区域を直轄するノーストリア家の当主として情けないが、背に腹はかえられない。セルカだって北区域は全地域の食事事情を七割支えているわりには割が合わない責任感を覚えるが、それが自分の役目なのだからしょうがない。
そうして久しぶりに中央区域へ出向いた時、ギルドがいつもと違ってぴりついた空気をしていた。原因はすぐにわかった。同時に場違いな存在がいた。
多くの刻印を体に刻み、カーゴパンツに脛まである黒のブーツを身につけた二メートルを優に超える筋骨隆々の男――魔人がいたのだ。それだけでも目を引くが、黒い腹掛けからのぞく青い肌は腕が四つある。
くすみがない短い銀髪はギルドの味気ない電灯に照らされても淡い燐光を放つがごとく煌めいていた。受付嬢と交わしている声は少しどもり気味で覇気がないが、疲れを滲ませるかすれたなめらかな低音がより魅力的に聞こえた。
受付嬢とやりとり終えたのだろう。会釈して踵を返す。厳つい顔には大きな傷があり、髪と同じ色をした三白眼もあって傲慢で強圧的な雰囲気は否応なく身構えさせる。
両耳にも刻印が刻まれたピアスを三つずつつけているあたりよほど凶悪な魔人なのだろう。けれど、彼のためにこしらえられたようでとても似合っていた。なにより浮世離れした異質な雰囲気がより魔人の魅力をかき立てていた。
魔人が出て行くと張り詰めていた空気が一気に緩み、いつも通りガヤガヤと騒がしい空気に包まれていく。しかし、セルカの頭は突然現れた強烈な存在に脳はおろか、心にまで焼き付いた。そして、彼と親しくなって恋人になりたいと思った。
そうと決まれば、先ほど親しく話していた受付嬢に彼の情報をもらいにいった。普通なら個人情報は渡してもらえないが、セルカは北区域を管轄するノーストリア家の当主だ。当主である証しの指輪と正当性のある理由を伝えれば、ギルドは融通を聞かせてくれる。
アルシェと名乗った受付嬢よりさらに偉いギルド長に奥の個室へ案内された。ギルド長は向かいに座るなり頭を下げた。
「申し訳ありません、いくら貴族の方でも彼の個人情報は開示できません」
「それは彼が管理局と関係している魔人だからかい?」
魔人になる経緯がどうあろうと見つけ次第、処分するのが法律で決まっている。それなのに堂々と町中を歩けるのは中央管理局公認か管理局直轄の魔人だけだ。二者は似ているようで違う。
前者は公認であって管理局の管理下にはいないのだ。たいして後者は管理局の管理下におり、噂では命すら管理局の一言であっけなく失われると聞いたことある。
セルカの問いにギルド長は青ざめ渋々頷いた。
「そうか。でも名前ぐらい教えてくれてもいいじゃないか」
「名前だけなら、まあいいでしょう。彼はザクベルといいます」
「ザクベル、ザクベルか」
忘れないように復唱してしっかり頭と心に刻む。チラチラと様子をうかがうギルド長にセルカは持ち前の美貌を活かすように目尻を下げて微笑んだ。
「彼に依頼を頼みたいんだけどいいかな? 君もわかると思うけど、もうすぐ北区は収穫シーズンでね。人手がまったく集まらないんだ。彼はすごそうだし、彼を借りたい」
「可能ではありますが、ザクベルに依頼したいのでしたら一度中央管理局へ通した方がいいと思います」
「私は貴族なのにかい?」
貴族の権限は管理局の局長と同等だ。棘を含むセルカの発言にギルド長は慌てて続けた。
「ザクベルは特殊な魔人でして……。貴族であるあなた様の仕事は内容に関係なく最高ランクの仕事となります。そのような仕事をザクベルに任せるのは、その……」
うまいこと言っているが、ザクベルを異様に隠そうとするあたり、おおよそ中央管理局の研究部門が関係しているのだろう。
実体があるかよくわからない部門だが、以前セルカが北区域の当主になった際、統括管理責任者が挨拶しに来た。派手な赤髪と白いスーツが似合ったハンサムだという記憶があるものの、セルカの直感が自分以外の人間を駒としか思っていないロクデナシと答えを出したのを思い出した。
黙り込んだセルカへギルド長が早口に言った。
「で、ですが、彼はあのような見た目なもののとても勤勉な魔人です。その勤勉さから現在ギルドでは、管理局に監視なしでも――不意の悪意に対して力を使わないかなど――社会に適合していけるか試験を提案している最中なのです」
「じゃあ、試験現場を私の農場でやればいいじゃないか。私の大農園は広いし、彼を雇ったらそれ以外雇う予定ないから被害も最小限にとどめられる。管理局も不満はないだろう」
すうっと萌黄色の瞳を細めて微笑みかける。ギルド長は冷や汗をハンカチで拭いながら「管理局に提案してみます」と答えた。満足の答えを出したギルド長にセルカは鷹揚に頷くと立ち上がった。
それから二日。管理局からの返信はすぐにきた。セルカの提案は受け入れられ、ギルドの受付嬢であるアルシェを通して依頼するとのこと。ザクベルは時間をきっちり守るためザクベルが依頼完了を報告する日を教えてもらいこっそり観察しようと思った。
ワクワクしながらザクベルがくるのを待っていたら、すでにザクベルは来ていたようだ。アルシェと言葉を交わしていた。盗み聞きしようとしたが、ポンポンと肩を叩かれた。
振り返れば、東西南の当主達だ。タイミングが悪いと思いつつも、むげにするわけにもいかず彼らの会話を右から左に流しながら適当に愛想良く笑っておく。セルカの美貌なら許されるのだ。早く会話を切り上げてくれと思っていれば、かすかに視線を感じた。
視線を感じた方へ振り向けば、バチッとザクベルと目が合う。ザクベルはすぐに視線をそらすと慌てて出て行ったようだ。まさかの反応にセルカは後頭部を思いっきり殴られたような衝撃を受けた。
「セルカ、真顔になってどうした?」
「あ、いや。やり残した書類を思い出してね。私は先に帰るよ」
ニコッと愛想良く笑って三人に告げると早足でギルドを出た。
家に帰ったセルカは広いベッドにうつ伏せて倒れるなり、ため息をついた。
「はじめて目が合ったのに……」
まっすぐで誠実な色を宿した銀の瞳までセルカ好みだ。ゴロゴロとベッドを転がっていると、天井を呆然と見上げた。
「依頼、受けてほしいなあ」
でないと接点ができない。貴族でありドリアードの血を持つセルカは管理している大農園と繋がっているため領地から滅多に出られないのだ。だが、翌日そんな不安は嘘のように吹き飛んだ。
ザクベルが依頼を引き受けたと聞くなり、セルカは自分でも信じられないほど行動が早かった。
まずは警戒されないように優しく声をかけつつ、素直に思っていることを告げた。セルカからしてみれば、ザクベルも見た目が変わった青年の一人でしかない。だが、ザクベルからしたらその言葉は特別だったようだ。
農場に連れてきて物理的距離も埋められた。少しずつザクベルとの距離が近づいているのを感じながら、一定の距離以上埋められない。どう崩すか考えていれば、天はセルカの味方をしたようだ。
試験とはいえ、自室に入ろうとしたらあやうく半身飛ばされそうになった。やりすぎだと内心憤りながらも、ザクベルが助けてくれなかったらと思うと血の気が引く。そんなセルカにザクベルから一緒に寝起きを提案されたのだ。
当然断る理由はない。内心でガッツポーズしながら、せっかくだからとザクベルの逞しい胸板に密着し、上目遣いでお願いした。
荷物を取りに戻ったザクベルを確認した後、書斎である自室に戻るなり、にやけてしまう。
「扉はやり過ぎだろうけど、ザクベルと寝起きできるなら悪くないな」
このままなし崩しに肉体関係まで持ち込んで、あとから心を掴むのも悪くない。だが、真面目なザクベルのことだ。恋愛よりも責任感がでて、セルカをそういう対象としてみてくれなくなるだろう。
「まあいい。時間はまだある。一緒に寝起きしてれば、ザクベルだってセックスしたくなるはず」
ザクベルが自分へ向ける恋慕に気づかないほどセルカは鈍くない。しかし安易に好意を告げたらザクベルを困らせる可能性がある。からかったりするのはいいが、本気で困らせたくないのだ。
焦がれていた相手と自分のベッドで一緒に寝るという思いがけない状況はセルカの魔物の血を暴走させた。
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