無能と追放された大賢者様は少女と共に悠々自適な旅をする。

Coco@

文字の大きさ
22 / 22

22.VSブラックレオン〈オズ視点〉

しおりを挟む
おかしい。
アリス達の帰りが遅い。
こんなに遅くなるほどここらのモンスターは多くないはずだ。
俺達の準備の方が時間がかかるかもと思っていた程だしな。

「オズ様、遅すぎませんか?
心配です。」

「そうだな。
様子を見に行ってみるか。」

「かしこまりました。こう見えて私もクラスタルを持っておりますので、お力になれるかと。」

ロロナがそう言って微笑む。
俺達はアリス達の向かった森へと足を踏み入れる。
森を少し歩くと明らかに何者かが争った後があった。

「この窪み・・・お嬢様の斧の攻撃でしょう。
恐らく、お嬢様達はここで戦闘を行ったのかと。」

「だとしたら・・・更に奥に行ったのかも知れないな。」

俺達はその場の痕跡からアリス達が進んだであろう方向へと進んでいく。
この方向だけ地面の草花が踏まれているのだ。

「シャルロッテ!」

と、少し遠くからアリスの声がした。

「今のはっ!」

ロロナも頷いて駆け出す。
メイド服でこうも森の中を走り回れるのは凄いと思う。

俺達が声の元へたどり着くとそこには近くの木に叩きつけられぐったりとするシャルロッテと避けるのが難しそうな座った体勢でブラックレオンの突進を受けるアリスがいた。
俺が声を出すよりも早くロロナが飛び出す。
シャルロッテではなくアリスの前にだ。

鉄壁ノ城壁キャッスルオブアイアンウォール!」

ロロナがそう言ってロロナの身の丈程の盾をストレージから取り出して構える。
その盾はロロナの体をすっぽりと隠すほど大きな黒い菱形の盾だ。
菱形の先端を地面に突き刺し両手で盾を構えた。
そのロロナにブラックレオンが突撃するがロロナはびくともせずブラックレオンを防ぎきる。
あれは『龍機兵ドラグーン』のクラスタルだ。
味方を守るタンクだがそれと同等レベルのアタッカー能力も兼ね備えた攻守に優れたクラスだ。

「《カウンターキャノン》!」

ロロナがそう言って盾に格納されていた黒いライフルでブラックレオンの左目を撃ち抜いた。

「ロロナ助かった!」

俺がそう言いながらシャルロッテに駆け寄る。
意識は無い物の傷は回復魔法で癒した形跡がある。
アリスには白魔道士のクラスタルわ渡していたしそれだろう。

「アリス、立てるかい?」

「うん。」

アリスは立ち上がり体に付いた土を払う。

「ロロナ、引き続きタンクを頼む。俺がヒーラーとサポーターをしよう。
アリスはアタッカーだ。
まだ戦えるね?」

俺が言うとアリスは静かに頷いてロロナの隣で短剣を構えた。

「セカンドクラスチェンジ【精霊導師スピリチュアル】」

俺がそう言って黄緑色のクラスタルを握りしめて魔力を流す。
導師は精霊を使った援護と回復が得意なクラスだ。

「奴の弱点は光属性だ。《エレメントスピリットギフト:シャイン》」

俺がそう唱えると2人の武器に光の精霊が纏わりつく。
精霊による属性付与だ。

「《ヒールスピリット》」

俺が唱えると今度は黄緑色の精霊が俺達全員の周りをふわふわと浮遊する。
これは攻撃を受けると白魔法の『ヒール』と同等の効果の回復をしてくれる精霊だ。
精霊導師は即時回復は出来ないが状況に応じ、それに呼応して行動してくれる精霊を味方に付与できる。

「《シールドスピリット》」

そう言うと水色の精霊が俺達の周りをふわふわと浮遊する。
シールドスピリットは攻撃を受けるとそのダメージを20%軽減してくれる。
100%になるまで・・・つまり5回まで軽減してくれる。

俺が一通り精霊を付与する。

「アリス、ロロナが攻撃を引き付けるからそれに合わせて攻撃するんだ。
ロロナはブラックレオンの攻撃を一手に引き受けてくれ。
ロロナの防御力に精霊の力でダメージはほぼゼロまで抑えられるはずだから。」

俺が言うとロロナが頷く。

「それでは、参ります。《挑発》!」

ロロナがそう言って盾の中心に埋め込まれている赤い菱形の宝石をライフルの銃口で殴る。
するとキンと音がなりブラックレオンがロロナを見つめる。

「《カウンターレイジ》!」

ロロナがそう言うと盾の宝石が赤く輝く。
カウンターの威力を高めるスキルだ。
ブラックレオンはロロナに突進してくると左前足を大きく振り上げた。
ロロナはそれを完全に防ぎきる。

「学習しませんね。《カウンターショット》!」

先程のカウンターキャノンよりも威力が低い弾が放たれる。
放たれた弾は散弾でブラックレオンの顔全体に当たる。

「続きます!《チェインブラスト》!」

ロロナがそう言ってでかい一撃を放つ。
カウンター技に続けて撃つ事で倍の威力を出せる砲撃だ。

「私も!《チェインキラー》!」

そう言って短剣で両前足を切り裂く。
チェインキラーは誰かの攻撃スキルに続いて発動すると数倍の威力になるキラー系スキルだ。

ブラックレオンはかなり弱っており虫の息だ。
ここまで弱れば良いだろう。

「アリス!トドメを頼む!」

「《魔法剣:光》《ラストキラー》!!」

アリスがそう言いながら短剣を顔に突き刺す。
ラストキラーは弱った相手に数倍のダメージを与えるスキルだ。
切り裂かれたブラックレオンはその場に倒れた。
これで討伐は完了だ。
俺は倒れているシャルロッテを抱き抱えるとキャンプへと戻った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~

いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。 地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。 「――もう、草とだけ暮らせればいい」 絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。 やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる―― 「あなたの薬に、国を救ってほしい」 導かれるように再び王都へと向かうレイナ。 医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。 薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える―― これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

悪役令嬢の身代わりで追放された侍女、北の地で才能を開花させ「氷の公爵」を溶かす

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の罪は、万死に値する!」 公爵令嬢アリアンヌの罪をすべて被せられ、侍女リリアは婚約破棄の茶番劇のスケープゴートにされた。 忠誠を尽くした主人に裏切られ、誰にも信じてもらえず王都を追放される彼女に手を差し伸べたのは、彼女を最も蔑んでいたはずの「氷の公爵」クロードだった。 「君が犯人でないことは、最初から分かっていた」 冷徹な仮面の裏に隠された真実と、予想外の庇護。 彼の領地で、リリアは内に秘めた驚くべき才能を開花させていく。 一方、有能な「影」を失った王太子と悪役令嬢は、自滅の道を転がり落ちていく。 これは、地味な侍女が全てを覆し、世界一の愛を手に入れる、痛快な逆転シンデレラストーリー。

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

処理中です...