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1冊目 とある林檎の話
第4話 特別な林檎
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「階段、階段……って、コレか?」
それなりに華やかだった廊下を突き進んだ先に、ばあ、と視界が広くなる。
壁には大小様々な絵画や、芸術性とは何かと問われているような何やらよく分からないモチーフに、剣先に宝飾がされていて実戦では使えない剣、それに天井から明かりを四方八方に散らす豪華なシャンデリア。
以前にも同じように仕事で本の中の城に入ったことがあるが、この城の飾り付けは妙にゴテゴテとしている。
「まあ人の好みはそれぞれだしな」
大広間の様子にぼおっと立ち尽くしそうになったところで、名前が分からないので、先輩Aと呼ぶことにした先輩Aの助言通りに大広間の階段を探せば、それは直ぐに見つかった。
大広間の壁に沿って、長く、ぐるりと緩やかな階段が続いている。
ご丁寧に、階段には赤い絨毯のようなものが敷かれていて、階段自体も存在を主張しているようだった。
「階段下には兵は置かないんだな」
本当に、護衛という意味の近衛兵では無いのだなあ、と少しでも強い奴がいるのでは、と期待していた俺は階段を見上げながらほんの少し肩を落とす。
『そんなに戦いたいなら帰ってきたら湊に稽古つけてもらえばいいじゃない』
そう耳元で聞こえるのは半ば呆れたように言うニルスの声だ。
「でも湊はなかなか相手してくれない」
一歩の幅が少し広い階段をゆるゆると昇りながらボヤけば、『ふふ』とニルスとは違う柔らかな小さな笑い声が聞こえる。
『ケビン君は十分に強いですから。それは湊君が一番分かっていますよ』
「先生ぇ……!」
『……店長、甘やかしすぎです。それと少し休んでくださいってさっき私がっ』
「……ニルス、静かに」
『……!』
無線機越しに聞こえるニルスの店長へのお小言の最中、妙な視線を感じた気がして、小さな声で停止を告げれば、ニルスの息をのむ音が聞こえる。
階段の上部に差し掛かった瞬間、妙な視線が身体に突き刺さった。
何処だ、と辺りを見回すも、誰か、と言うわけでは無い。
「……湊とニルスが言ってたのは、コレか」
【お后様が持っている魔法の鏡は、多分だけど、空間干渉系統の魔法を利用している可能性が非常に高いと思う】
魔法のことは、正直、俺には未だよく分からない。
ニルスと俺は魔法使いの素質はほぼ皆無だけど、小さい頃から不思議なものが見える体質だ。ニルスはもともと魔法自体に興味を持っていたらしく、リコルヌで働くと決めた時から、仕事を技術面から支えると決め、魔法についても相当研究したらしい。
まぁ、それは今も、で、たまに「前の担当は何でこんな風にこの魔法で……」とかブツブツ言いながら店の中を弄っていたりするから、努力家なのは十分に伺える。
店長のユーグはもう説明不要なくらいにかなり凄い魔法使いなのだ、と湊がよく言っている。
湊は一人前の魔法使いだけど、まだまだ発展途上らしい。
違う次元に人を運べることが凄い事で、湊もいつかは自分も、と空き時間があれば魔法の本を読んで勉強している。
そんな湊とニルスが言っていた言葉だ。
俺にとっては、誰よりも信用できる。
「あとでまた繋ぐ」
『ケビッ』
プチ、と無線機の電源を切る。
その瞬間、身体中に感じていた視線が、すぱっ、と離れたのが分かる。
「……ちょっと面倒なタイプかあ」
ボソリ、と呟いた時、「おい、お前」と階段の上のほうから低い声とともにフワ、と甘い香りが鼻先を掠めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『湊!』
「ん?ニルス、何かあった?」
慌てた様子のニルスの声が耳に響く。
『今、ケビンが大広間の階段上に向かったんだけど、ケビン、無線切っちゃって』
「無線を……? 鏡に無線を気づかれたのかな」
『そうかも知れませんね』
「師匠」
コソ、と話した僕の声は、前を歩く人間には聞こえていないらしい。
僕の前を歩くのは、近衛兵ではなく執事服を着た人間で、地下にある調理場付近の食材置き場でオリヴァさんが「この人がいつもの人です」と耳打ちしてから数分後、林檎を持ってついてくるように、と指示があり、コツコツ、と地下から上階にあがるための階段を、オリヴァの大切に育てた林檎を抱えて登っていく。
「極力、魔力を抑えたものに改良したつもりだったんですが……まだダメでしたね……」
『そんなことは無いですよ』
「けど……」
『現にギリギリまで近づかないと気づかれなかったのですから、十分に凄いですよ』
「……ありがとうございます」
師匠に褒められた、と喜ぶのも束の間『ですが……』と続い師匠の言葉に、直ぐに気持ちを切り替える。
『私たちからの通信は一旦、止めておいたほうが良さそうですね』
「……そうかも知れません」
『大丈夫ですよ、湊君とケビン君ですから』
ふふ、と柔らかな師匠の笑い声は、いつもと変わらない。
なんて事のない、師匠の「大丈夫だ」という言葉に後押しされ、「はい」と短く、けれど、はっきりとした声で師匠の信頼に答える。
『……湊……無茶はしないでね……』
不安そうなニルスの声に、「大丈夫」とほんの少し笑顔を浮かべながら答えれば、『分かった』とニルスもまた気持ちを切り替えたようだ。
「では、一旦切ります」
『気をつけて』
「はい」
プツン、と回線が途切れた音が、妙に耳に響いたように聞こえるが、前を歩く男は、一向に気づくことはなく、僕は何だか少し可笑しくて、ふふ、と小さく笑った。
暫く、ぐるぐると階段を昇り、長い廊下を歩き、幾つかのドアを抜け、いつの間にか、大広間の上の階にまであがってきていたらしい。
何やらより一層キラびやかな装飾の廊下をキョロ、と眺めていれば、前方に見知った者の気配を感じる。
距離が近づくにつれ、相手も僕に気がついたらしい。
ひら、と振られた手に、クス、と笑えば、「おい」とドスを効かせた声に意識を引き戻された。
「お前はもういい。此処に置いてゆけ」
そう言って足止めをされた場所は、この城の中で一番なのではないか、と思うほど豪華な扉の手前にある小さな待ち合いのスペースで、小さいながらも、華やかなテーブルと椅子が置かれている。
女王との謁見記録でも取るのか?などと考えながら観察していれば、「聞いてるのか?!」と男が少し声を荒げた。
「あ、失礼しました。あまりにも此処が豪華で驚いてしまいまして」
一応、嘘は言っていない、と思いながら男の声に答えれば、「そうだろう!」と何故だか男が自信たっぷりに答える。
「だがな!この装飾など目じゃないくらいお后様はお綺麗なんだ!」
「へえ、一度、お見かけしたいものですねぇ」
「お前みたいな平民が簡単に会えるお方じゃない!わかったらさっさと林檎を置いて帰れ!」
ダスダス、と足音を響かせながら僕に近づき林檎へと手を伸ばしてくる男をひょい、と避けながら、「ですが」と言葉を返す。
「今回の林檎は、特段に美味しく、美しく出来上がったもの。そんな林檎が、貴方がそんなにも心酔するほど、お綺麗なお后様の手のひらに収まる……いち林檎農家の者としては、是非、その光景を目に焼き付けたいと思うのですが」
「お后様にはオレからお渡しする!お前はいつものように林檎を持ってさえくればいいんだ!」
飄々と言葉を返した僕に、男が顔を真っ赤に染めながら、声を荒げる。
「いつものように、ですか。では、貴方様がいつも、確実に、お后様へ届けてくださっている、ということでしょうか?」
「だから、そう言って!!」
「おや、おや? おかしな話ですね」
んー?と首を傾げながら言う僕を見た男が、「は?」と気の抜けた声を出し、固まる。
「いえ、おかしな話だな、と思いまして。私の先生のところには、執事長のかたから、何度となく林檎の催促が送られてきているのです」
「……なっ」
「けれど、先生がお城へ林檎をお持ちしているのを、何度も見ておりますし、お后様のための特別な林檎も、もちろん、お持ちしています。貴方も今、いつものように、林檎を持ってくればいいと仰った。けれど、執事長は林檎が届かない、と言う」
「……へ、へえ」
つつ、と男の頬に、汗が流れた。
「お后様のための林檎が届かないから、その分の代金は支払えない。けれど、私の先生は林檎は届けている。と、なると、林檎は何処に消えているのでしょうねえ」
トン、トン、と林檎箱の蓋を軽く叩きながら言えば、男の額からの汗が、ひとつ、また、ひとつ、と増えてくる。
カタカタ、と震える男の手に、ふむ、とひとつの可能性が脳裏に浮かぶ。
「あの」
「どうなさったのです?」
男に声をかけようとした時、落ち着いた声色と、少し足早な靴音が聞こえ、振り返ると、慌てた様子の執事長と、一人の近衛兵の姿が目に映る。
「ナイスタイミング」
口元でだけ、小さく呟けば、執事長のすぐ後ろを走る近衛兵が、にっこりと笑顔を浮かべた。
それなりに華やかだった廊下を突き進んだ先に、ばあ、と視界が広くなる。
壁には大小様々な絵画や、芸術性とは何かと問われているような何やらよく分からないモチーフに、剣先に宝飾がされていて実戦では使えない剣、それに天井から明かりを四方八方に散らす豪華なシャンデリア。
以前にも同じように仕事で本の中の城に入ったことがあるが、この城の飾り付けは妙にゴテゴテとしている。
「まあ人の好みはそれぞれだしな」
大広間の様子にぼおっと立ち尽くしそうになったところで、名前が分からないので、先輩Aと呼ぶことにした先輩Aの助言通りに大広間の階段を探せば、それは直ぐに見つかった。
大広間の壁に沿って、長く、ぐるりと緩やかな階段が続いている。
ご丁寧に、階段には赤い絨毯のようなものが敷かれていて、階段自体も存在を主張しているようだった。
「階段下には兵は置かないんだな」
本当に、護衛という意味の近衛兵では無いのだなあ、と少しでも強い奴がいるのでは、と期待していた俺は階段を見上げながらほんの少し肩を落とす。
『そんなに戦いたいなら帰ってきたら湊に稽古つけてもらえばいいじゃない』
そう耳元で聞こえるのは半ば呆れたように言うニルスの声だ。
「でも湊はなかなか相手してくれない」
一歩の幅が少し広い階段をゆるゆると昇りながらボヤけば、『ふふ』とニルスとは違う柔らかな小さな笑い声が聞こえる。
『ケビン君は十分に強いですから。それは湊君が一番分かっていますよ』
「先生ぇ……!」
『……店長、甘やかしすぎです。それと少し休んでくださいってさっき私がっ』
「……ニルス、静かに」
『……!』
無線機越しに聞こえるニルスの店長へのお小言の最中、妙な視線を感じた気がして、小さな声で停止を告げれば、ニルスの息をのむ音が聞こえる。
階段の上部に差し掛かった瞬間、妙な視線が身体に突き刺さった。
何処だ、と辺りを見回すも、誰か、と言うわけでは無い。
「……湊とニルスが言ってたのは、コレか」
【お后様が持っている魔法の鏡は、多分だけど、空間干渉系統の魔法を利用している可能性が非常に高いと思う】
魔法のことは、正直、俺には未だよく分からない。
ニルスと俺は魔法使いの素質はほぼ皆無だけど、小さい頃から不思議なものが見える体質だ。ニルスはもともと魔法自体に興味を持っていたらしく、リコルヌで働くと決めた時から、仕事を技術面から支えると決め、魔法についても相当研究したらしい。
まぁ、それは今も、で、たまに「前の担当は何でこんな風にこの魔法で……」とかブツブツ言いながら店の中を弄っていたりするから、努力家なのは十分に伺える。
店長のユーグはもう説明不要なくらいにかなり凄い魔法使いなのだ、と湊がよく言っている。
湊は一人前の魔法使いだけど、まだまだ発展途上らしい。
違う次元に人を運べることが凄い事で、湊もいつかは自分も、と空き時間があれば魔法の本を読んで勉強している。
そんな湊とニルスが言っていた言葉だ。
俺にとっては、誰よりも信用できる。
「あとでまた繋ぐ」
『ケビッ』
プチ、と無線機の電源を切る。
その瞬間、身体中に感じていた視線が、すぱっ、と離れたのが分かる。
「……ちょっと面倒なタイプかあ」
ボソリ、と呟いた時、「おい、お前」と階段の上のほうから低い声とともにフワ、と甘い香りが鼻先を掠めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
『湊!』
「ん?ニルス、何かあった?」
慌てた様子のニルスの声が耳に響く。
『今、ケビンが大広間の階段上に向かったんだけど、ケビン、無線切っちゃって』
「無線を……? 鏡に無線を気づかれたのかな」
『そうかも知れませんね』
「師匠」
コソ、と話した僕の声は、前を歩く人間には聞こえていないらしい。
僕の前を歩くのは、近衛兵ではなく執事服を着た人間で、地下にある調理場付近の食材置き場でオリヴァさんが「この人がいつもの人です」と耳打ちしてから数分後、林檎を持ってついてくるように、と指示があり、コツコツ、と地下から上階にあがるための階段を、オリヴァの大切に育てた林檎を抱えて登っていく。
「極力、魔力を抑えたものに改良したつもりだったんですが……まだダメでしたね……」
『そんなことは無いですよ』
「けど……」
『現にギリギリまで近づかないと気づかれなかったのですから、十分に凄いですよ』
「……ありがとうございます」
師匠に褒められた、と喜ぶのも束の間『ですが……』と続い師匠の言葉に、直ぐに気持ちを切り替える。
『私たちからの通信は一旦、止めておいたほうが良さそうですね』
「……そうかも知れません」
『大丈夫ですよ、湊君とケビン君ですから』
ふふ、と柔らかな師匠の笑い声は、いつもと変わらない。
なんて事のない、師匠の「大丈夫だ」という言葉に後押しされ、「はい」と短く、けれど、はっきりとした声で師匠の信頼に答える。
『……湊……無茶はしないでね……』
不安そうなニルスの声に、「大丈夫」とほんの少し笑顔を浮かべながら答えれば、『分かった』とニルスもまた気持ちを切り替えたようだ。
「では、一旦切ります」
『気をつけて』
「はい」
プツン、と回線が途切れた音が、妙に耳に響いたように聞こえるが、前を歩く男は、一向に気づくことはなく、僕は何だか少し可笑しくて、ふふ、と小さく笑った。
暫く、ぐるぐると階段を昇り、長い廊下を歩き、幾つかのドアを抜け、いつの間にか、大広間の上の階にまであがってきていたらしい。
何やらより一層キラびやかな装飾の廊下をキョロ、と眺めていれば、前方に見知った者の気配を感じる。
距離が近づくにつれ、相手も僕に気がついたらしい。
ひら、と振られた手に、クス、と笑えば、「おい」とドスを効かせた声に意識を引き戻された。
「お前はもういい。此処に置いてゆけ」
そう言って足止めをされた場所は、この城の中で一番なのではないか、と思うほど豪華な扉の手前にある小さな待ち合いのスペースで、小さいながらも、華やかなテーブルと椅子が置かれている。
女王との謁見記録でも取るのか?などと考えながら観察していれば、「聞いてるのか?!」と男が少し声を荒げた。
「あ、失礼しました。あまりにも此処が豪華で驚いてしまいまして」
一応、嘘は言っていない、と思いながら男の声に答えれば、「そうだろう!」と何故だか男が自信たっぷりに答える。
「だがな!この装飾など目じゃないくらいお后様はお綺麗なんだ!」
「へえ、一度、お見かけしたいものですねぇ」
「お前みたいな平民が簡単に会えるお方じゃない!わかったらさっさと林檎を置いて帰れ!」
ダスダス、と足音を響かせながら僕に近づき林檎へと手を伸ばしてくる男をひょい、と避けながら、「ですが」と言葉を返す。
「今回の林檎は、特段に美味しく、美しく出来上がったもの。そんな林檎が、貴方がそんなにも心酔するほど、お綺麗なお后様の手のひらに収まる……いち林檎農家の者としては、是非、その光景を目に焼き付けたいと思うのですが」
「お后様にはオレからお渡しする!お前はいつものように林檎を持ってさえくればいいんだ!」
飄々と言葉を返した僕に、男が顔を真っ赤に染めながら、声を荒げる。
「いつものように、ですか。では、貴方様がいつも、確実に、お后様へ届けてくださっている、ということでしょうか?」
「だから、そう言って!!」
「おや、おや? おかしな話ですね」
んー?と首を傾げながら言う僕を見た男が、「は?」と気の抜けた声を出し、固まる。
「いえ、おかしな話だな、と思いまして。私の先生のところには、執事長のかたから、何度となく林檎の催促が送られてきているのです」
「……なっ」
「けれど、先生がお城へ林檎をお持ちしているのを、何度も見ておりますし、お后様のための特別な林檎も、もちろん、お持ちしています。貴方も今、いつものように、林檎を持ってくればいいと仰った。けれど、執事長は林檎が届かない、と言う」
「……へ、へえ」
つつ、と男の頬に、汗が流れた。
「お后様のための林檎が届かないから、その分の代金は支払えない。けれど、私の先生は林檎は届けている。と、なると、林檎は何処に消えているのでしょうねえ」
トン、トン、と林檎箱の蓋を軽く叩きながら言えば、男の額からの汗が、ひとつ、また、ひとつ、と増えてくる。
カタカタ、と震える男の手に、ふむ、とひとつの可能性が脳裏に浮かぶ。
「あの」
「どうなさったのです?」
男に声をかけようとした時、落ち着いた声色と、少し足早な靴音が聞こえ、振り返ると、慌てた様子の執事長と、一人の近衛兵の姿が目に映る。
「ナイスタイミング」
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