陛下!私、好きな人が出来ちゃいました、だから私を諦めて下さい?!

mock

文字の大きさ
7 / 37

もう一度会いたい…

しおりを挟む
私は乱れた着衣を直し、窓の外から王宮を出ていく陛下の姿を見ていた。
後一年後に私は陛下と結婚する。
そうしたら、たぶん周りが早く子を…と急かしてくるに違いない。
一番そうやって言ってきそうなのが、跡取りを望む父だろうと考える。
今までは陛下との結婚を当たり前な事と思っていたが、外の人を知り、気持ちが揺らいでいる。
こんな気持ちは初めてだ…。

「お嬢様、教養のお時間です」と給仕が呼びに来て、
重い足取りで竜の間に向かった。

「今日は人体の急所についてになります」と講師がいう。何故こんなことを学ばなければならないのか、いささか不思議に思った。
私の周りには近衛兵達が取り囲むのだから、こんな講義は無意味だと生意気にも講師に突っかかってしまった。
しかし、「これは皇帝様のご意向です、ソマリア様が以前、襲われた事実がある以上知らなければなりません」と説いてきた。
良く言えば私を思っての事であるが、悪く捉えれば、もう外に行くのは許さん!と言ってるようなものでもある。

一通りの講義を受け、部屋に戻った。

はぁ…とため息をつき、こんな毎日が窮屈に感じられてきた。窓の外から見える街では楽しそうに遊びまわる子供や笑顔で談笑している街の人が至るところにおり、外に行きたい。
いや…ニックさんに会いたいと募るばかりだった。

街の奥の方では催し物が開かれているのだろうか、煌びやかな雰囲気が溢れている。

そうだ!あの催し物が見たいという口実で外に行き、ニックさんに会おうと考え、父に許可を貰いに部屋を出た。

「ダメだ」
「どうしてですか?たまには気分を変えたいです」
「一人で行くのは許さん、どうしても、というなら兵を何人か付ける」

やはり、簡単には許してもらうのは出来なかった。
一人で行こうと考えている事は父じゃなくてもすぐわかる。
周りに兵がいたら、ニックさんには会えない…。
でも、この窮屈な空気を脱したくて、兵を連れてとの条件を飲んだ。

「いいですか、ソマリア様。夕刻までには帰る。これは必ずお守り下され。守らなければ近衛兵が連れ戻しに向かいます」と執事に念を押され、私は兵と一緒に催事場に向かった。

私に付いた兵は3人、両横と後ろに少し距離を置き歩いている。
周りを見渡しながら…と言うよりニックさんを探しながらゆっくり歩く。
前から走ってくる子供がいれば両横の兵が私の前に立ち、子供を威嚇して追い払う。
こんなの状態では、もし、居たとしても何も話せない。

催事場では様々な露店が並び、多くの人が行き交っている。兵達はこういう場所では何があるか分からないといった雰囲気から私の周りをより強く警戒している。
露店が並ぶ中で鎧や武器を並べ、煌びやかな雰囲気とはかけ離れた異質な露店があった。

「あっ」

そこにはニックさんがいた。鎧など部屋にあったのは覚えていたが、意外な場所での再会となった。
向こうもこちらに気づいたが、周りに兵がいる事に気付くと知り合いという雰囲気を出すべきじゃないと察していた。

私は鎧を扱っているなら兵をダシにつかい、話すのは不自然じゃないと考え、「あなた方の鎧はこちらのを使ってるのですか?」と兵に尋ねた。
「いえ、私達は王宮へ行商にくる鎧を使います」
「そうなのですね、行商は決められた所があるのですか?」
「行商については、私達には分かりかねます。皇帝様の一存があると聞いたことはありますが…」

私はふと、思った。
行商を決めているのは父との事、だったら掛け合ってニックさんの所を行商にすれば、街に行かなくても王宮内で会える、と。
今回、ふとした事で大きな収穫を手に入れた気分になった。

「危ない、ソマリア様!」
酒に酔った男性が手には酒瓶?を持ちながらフラフラとこちらに近づいていた。
「どけ!酒が無いぞ、酒が!…お、見ねぇ姉ちゃんだな、俺に釈しろよ、ひっく…」と私に突っかかってくるのを兵が男を取り囲う。
「男なんか邪魔だ、どけ!」と酒瓶を振り回すので兵が男を取り押さえようとするが、武術の心得があるのか、逆に倒されている。

見た事がある、酔拳だ…。
あっという間に三人の兵を倒し、再び私に近づいてきた。
「逃げてください、ソマリア様、早く」と倒されながらも促す兵の言葉で逃げようとしたが、腕を掴まれ、グイッと男の方に引き寄せられると「ほぉ、可愛いじゃねぇか、俺が優しくしてやるよ」と迫ってくる。
「やめてください!」と腕を引き払おうにも強く握られ、逃げれない…。

バキッ

打撃音とともに酔った男性の顔に拳が当たっている。
ニックさんだ。
倒れた男性を素早く後ろ手にして動けないようにしている。ほんの一瞬の出来事だった。
「大丈夫ですか?」
「はい…ありがとうございます、二…」危うく名前を言ってしてしまいそうだったが、口に手を当て抑えた。
周りからは良くやったと称賛の言葉を贈っていた。
「当然な事をしただけです」と謙遜していたが、そんなニックさんの事を私は釘付けになってしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月 瑠々奈
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

【完結】地味な私と公爵様

ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。 端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。 そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。 ...正直私も信じていません。 ラエル様が、私を溺愛しているなんて。 きっと、きっと、夢に違いありません。 お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...