今さらやり直しは出来ません

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機械音は次第に鳴り止むと、今度は静けさが部屋を包んでいく。
だが、それを私自身で破った。

「ああぁあぁーー!!」

失意の悲しみと裏切られた気持ち、両方が入り混じり止めとなく涙を流し、泣き続けた。
時には手元にあった枕をテレビに投げつけると、ベッドに顔を埋めうず泣いた。
自分の悪い部分を的確に告げてくる翔平の言葉と、若くて魅力的な彼女の違いが重く私にのしかかり、あろう事か自分を産んでくれた両親に対して憎しむ気持ちさえ生んでしまった。

「なんで私を可愛く産んでくれない!体だってもっと魅力的にしてくれたらこんな事に!!」

そんな風に大声を上げ、泣き喚くことをしばらく続けた。
でも、それはずっと続く事はなくひとしきり胸に溜まったつっかえを口にしていくと徐々に冷静さを取り戻していく。
そして、ある一つの思いが浮かんだ。


「……二人を許せない」


私の心は裏切った翔平と、香澄と告げられた女性への復讐心へと変わっていった。




翌日、起きた私がまずしたのは翔平とのやり取りをしたメールを全て消した。
もちろん、3年分溜まった思い出の写真なんかも一つ残さず消し、誕生日に貰ったネックレスやお揃いのペアリングなんかもゴミ箱に投げ入れた。
残しておくのも嫌だし、目に入れるだけでも吐き気がしてしまうからだ。

それを済ませると会社へと行き、普段通りに業務をし始めた。


「彩先輩!」

軽快な口調で語りかけてくるのは5つ後輩の溝口凉香みぞぐちすずかだった。

ショートボブで色白な凉香は年齢の割りに落ち着いており、今まで怒ったり嫌な顔を見せずいつも笑顔を絶やさない心優しい性格の持ち主で、そんな彼女を私は好きになり仲良くなるのに時間はそんなに掛からなかった。

「すず」

私はそんな彼女をそう呼ぶ。
でもこうやって呼ぶのは同じ課にいる中では私くらいだ。

「あれ?先輩、目、赤いですよ?」
「そ、そう?……昨日遅くまでドラマ見てたから」
「あっ!もしかしてあれですか?私も見てるんですよ!」

すずは嬉しそうに話してくるが、今は業務時間中だ。
窓際に座る課長の鋭い目が私とすずへと向けられているのをすぐに察し、続く言葉を遮るように私は彼女の口を右手で塞いだ。

「……っ」

「すず、課長が見てるから。休憩の時ね」

塞がれたまま、すずは課長へと目を移した後、こくりと頷くと自席へと戻っていった。

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