貴方に出会った幸せ〜人生初の恋〜

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由佳さんのカットが始まる。
鏡に映る自分を見ながら今まで伸ばしていた髪が少しずつ短くなっていく。
「衣里ちゃん、髪綺麗ね。何かしてる?」
「いえ、特別な事は特に…」
「羨ましいな、やっぱり若さに勝てないなぁ」
「そんな事ないです!由佳さん、とても綺麗です!」
「ありがとう」
何気ない話をしつつ、少しずつ聞いてみたい事を話していった。
近くでは男性店員がこちらの様子を気にしてるようで…

「由佳さんは何で兄とお付き合いを?」
「隆とは合コンよ。最初私は行く気無かったけど人数合わせに呼ばれて、そこで会ったのよ。
話す内に意気投合しちゃって、それで付き合ってる。今ではココに髪を切りにくるよ」
「兄が合コン…イメージに無いです。いつも無愛想な感じしか見ないので…」
家では無愛想で、人を見下してる感じがあるから尚更、合コンに行く兄が不思議に思えた。
でも行ってくれたから由佳さんとも出会えたし、今、こうして切って貰えるから『縁』なんだろうなぁと。

「衣里ちゃんは今は付き合ってる人いないの?」
「いないです…それにまだ誰とも…」
「そっかぁ、良いなぁって人も今までいなかった?」
「いましたけど、男性が少し苦手で…それに人見知りもあるからなかなか恋愛は無理かなって思ってます」

由佳さんの手が止まり、私の肩に手を置く。
そして、少し短くなった髪を触り、話してくれた。
「もったいないな…」
「もったいない…ってどういう意味ですか?」
「魅力があるのに、気付いてないなぁって…
衣里ちゃん、お世辞抜きで可愛いよ。私が男性ならほっとかないよ?今、気になる人がいたら、真剣に付き合うとか考えてみたらどうかな?
嫌われたくないとか、怖いとか、抜きでさ。
進む勇気もいつかは必要になるし、時間は待ってくれないよ?」

綾にも男性だったらほっとかないって言われた事を思い出した。
それに、最近将来に関して話す事があり、いつまでも立ち止まる訳には…。
「ありがとうございます…しっかり考えてみようと思います」
「焦らないで自分なりの答えだしてね」
また由佳さんはカットをし始めた。
気付くとあれだけあった髪が肩くらいまでになり、イメージがガラリと変わった。
「よし、カットは終わり。後はシャンプーしてブローして、少し巻いてみる?」
「はい、お願いします」
男性店員がシャンプーなら自分ですよね?みたいな顔して由佳さんを見ている。
「仕方ないなぁ…、シャンプーだけよ…」
「やった!俺、原口健太。あなたは?」
「中村衣里です」
「えりちゃんかぁ、よろしくね。いや~ホント可愛いなぁ~、これからはココで髪切ってね!俺、待ってるから!」
本当に誰かさんに似てる…。
話し方といい、接し方とか私の様な人見知りとは真逆で、人と関わるのが好き!というのが伝わってくる。
「ちょっと、なに口説いてるの?早く洗ってあげて。
後、もし連絡先とか聞いたらクビにするから」
「え、や、ヤダなぁ、聞くとか思ってました?
さすがに初対面ではしないっすよ、…多分。」
由佳さんの早くやりなさいという無言の圧が凄い。
終始由佳さんに監視され、落ち込みながら作業する原口さん。
「終わりました…」
「ご苦労様、裏で仕事しておいて」
「うす…」明らかに項垂れている感じがはっきりと分かる。
「いいんですか…なんだかかわいそうな感じが」
「いいの、いいの。すぐ可愛い子に飛びつくからあれくらいで。じゃあ乾かして巻いてみようか」
手慣れた感じでブローをし、毛先を揉み込みながら巻いていく。
「よし、完成!…どう?」

「私じゃないみたいです…」
今までの私には無い雰囲気に仕上がってる。鏡を見てつい笑顔になった。
「うん、凄い似合ってる。帰りは気をつけてね、変な男に捕まっちゃダメよ」
以前にも聞いた言葉が…。帰りが怖いなぁと思ってしまう。
「お姉さん、ありがとうございます。あ…」
初めて由佳さんをお姉さんと呼んだ。まだ正式にはそうじゃないから訂正しなくては、と思ったが
「ありがとう、これからそうやって呼んで。
私も可愛い妹が出来たから、自慢出来るなぁ。
気をつけて帰ってね、今日は本当にありがとう」

店を後にし、家に向かう電車の中、鏡に映る自分を明日どう思ってくれるか、不安と期待が込み上げてきた。
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