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夏休みの図書館は人が少なく閑散としており職員以外、見渡す限りでは一人か二人くらいのようだった。
「静かだね」
「図書館は静かな場所だよ。それにこの方が捗るから」
僕の物言いのどこが気にいらないのか、片頬を膨らませながら軽く睨んでくる。
「とりあえず始めよう。ほとんど終わってないんでしょ?」
「もっちろん!!」
「……」
さっきまでの顔はどこに忘れてきたんだろう…。
満面の笑みを見せ、自信たっぷりに胸を張るので嘆息をつき、奥へと足を進めた。
窓際の長机に向かい合うと、鞄からドサドサと課題が山積みにされていく。
思った通り全部あるみたいだ。
「……毎年ご両親は大変だ」
「まぁまぁ、それはいいから。ガリ勉くんはコレをお願い」
スッと目の前に数学の冊子を送ってくると、うんうんと笑みを浮かべ頷いてくる。
手に取りパラパラと中を確かめると、最初の数ぺージ以外は見事なほどに真っ白だった。
課題を終えている僕にとって全く同じ問題を解くのは容易な事で、すぐに終わった。
本来代理でするのはご法度なのだが今回は目を瞑った。
一方で彼女は難しい顔をしつつ課題に向き合い四苦八苦している様子だ。
「……もう終わったの?」
「まぁね」
「さすがガリ勉くん!……じゃあこっちも」
彼女は新たに歴史のドリルを差し出してくると目を輝かしてくる。
「……こうやって毎年乗り切ってきたんだね」
「バレちゃったか!」
図書館で笑いをあげる声は館内に響き悪目立ちしてしまうので、人差し指を口元に当て『しー』と示して黙らせた。
その後、お互い終始無言で課題に取り掛かっていると『ぐー……』とお腹の虫が鳴いた。
顔を上げると少し顔を赤らめ俯いている彼女がいるのでどうやら本人らしい。
「お腹空いたね」
時計はもう12時近くを指していた。
「もうお昼なんだ」
食欲も忘れ勉強に取り組むのを苦に思わない僕だが、彼女の体はそうではないみたいだ。
「今度は僕が奢るよ」
席を立つと彼女が『あっ』と声を出した後、カバンの中へと手を伸ばす。
「じゃーん!!」
机に二つの巾着袋を取り出してくる。
「まさか、君が??」
「へへっ、初めて作ってみたから味の保証は出来ないけどね。
ここじゃダメだから外に行こう」
図書館の隣にある公園に行き、彼女お手製の弁当を頂く事にした。
巾着袋の中から二つの弁当箱を取り出してくる。
水色とピンクの二段弁当箱、彼女曰く、どちらも中身は同じとのことで水色を僕へ渡してきた。
蓋を開けると初めてという割にはとても美味しそうに見えた。
上段には小さなハンバーグとタコさんウィンナー、それに玉子焼き、下段はご飯だった。
ぱっと見、男子が好きそうなチョイスで食欲をそそる弁当になっている。
「そんなまじまじと見ないでよ、恥ずかしいから!」
照れる彼女は割り箸を手渡すと自分の分を食べ始めていった。
「いただきます」
正直な感想は……微妙だった。
ハンバーグの中心部分は少し生っぽく、玉子焼きに関してはちょっと、いや、かなりしょっぱい。
飲み込むたびに持ってきた水筒に手が伸びそうになる。
「……美味しいよ」
恋愛経験のない僕でもこういう時はこの言葉が正解だと思う。それは分かる。
だけど…。
「顔に出過ぎ!!」
笑顔でお礼を言う僕の顔はどうやら引き攣っているようで、不気味な笑顔を見て盛大に笑ってきた。
よほどツボにハマったのだろうか、目に涙をため、蓋を何度もバンバンと叩きつけている。
「静かだね」
「図書館は静かな場所だよ。それにこの方が捗るから」
僕の物言いのどこが気にいらないのか、片頬を膨らませながら軽く睨んでくる。
「とりあえず始めよう。ほとんど終わってないんでしょ?」
「もっちろん!!」
「……」
さっきまでの顔はどこに忘れてきたんだろう…。
満面の笑みを見せ、自信たっぷりに胸を張るので嘆息をつき、奥へと足を進めた。
窓際の長机に向かい合うと、鞄からドサドサと課題が山積みにされていく。
思った通り全部あるみたいだ。
「……毎年ご両親は大変だ」
「まぁまぁ、それはいいから。ガリ勉くんはコレをお願い」
スッと目の前に数学の冊子を送ってくると、うんうんと笑みを浮かべ頷いてくる。
手に取りパラパラと中を確かめると、最初の数ぺージ以外は見事なほどに真っ白だった。
課題を終えている僕にとって全く同じ問題を解くのは容易な事で、すぐに終わった。
本来代理でするのはご法度なのだが今回は目を瞑った。
一方で彼女は難しい顔をしつつ課題に向き合い四苦八苦している様子だ。
「……もう終わったの?」
「まぁね」
「さすがガリ勉くん!……じゃあこっちも」
彼女は新たに歴史のドリルを差し出してくると目を輝かしてくる。
「……こうやって毎年乗り切ってきたんだね」
「バレちゃったか!」
図書館で笑いをあげる声は館内に響き悪目立ちしてしまうので、人差し指を口元に当て『しー』と示して黙らせた。
その後、お互い終始無言で課題に取り掛かっていると『ぐー……』とお腹の虫が鳴いた。
顔を上げると少し顔を赤らめ俯いている彼女がいるのでどうやら本人らしい。
「お腹空いたね」
時計はもう12時近くを指していた。
「もうお昼なんだ」
食欲も忘れ勉強に取り組むのを苦に思わない僕だが、彼女の体はそうではないみたいだ。
「今度は僕が奢るよ」
席を立つと彼女が『あっ』と声を出した後、カバンの中へと手を伸ばす。
「じゃーん!!」
机に二つの巾着袋を取り出してくる。
「まさか、君が??」
「へへっ、初めて作ってみたから味の保証は出来ないけどね。
ここじゃダメだから外に行こう」
図書館の隣にある公園に行き、彼女お手製の弁当を頂く事にした。
巾着袋の中から二つの弁当箱を取り出してくる。
水色とピンクの二段弁当箱、彼女曰く、どちらも中身は同じとのことで水色を僕へ渡してきた。
蓋を開けると初めてという割にはとても美味しそうに見えた。
上段には小さなハンバーグとタコさんウィンナー、それに玉子焼き、下段はご飯だった。
ぱっと見、男子が好きそうなチョイスで食欲をそそる弁当になっている。
「そんなまじまじと見ないでよ、恥ずかしいから!」
照れる彼女は割り箸を手渡すと自分の分を食べ始めていった。
「いただきます」
正直な感想は……微妙だった。
ハンバーグの中心部分は少し生っぽく、玉子焼きに関してはちょっと、いや、かなりしょっぱい。
飲み込むたびに持ってきた水筒に手が伸びそうになる。
「……美味しいよ」
恋愛経験のない僕でもこういう時はこの言葉が正解だと思う。それは分かる。
だけど…。
「顔に出過ぎ!!」
笑顔でお礼を言う僕の顔はどうやら引き攣っているようで、不気味な笑顔を見て盛大に笑ってきた。
よほどツボにハマったのだろうか、目に涙をため、蓋を何度もバンバンと叩きつけている。
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