君から届く声を、僕は守りたい

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彼女の初舞台、観客は劇団関係者ばかり。
それでも人の前に立ち、演技をする事の難しさや緊張は僕には計り知れない。
今、どの場面を演じているのだろうか…。
勉強する手を止めては時計を見る行動を繰り返してしまう。

「上手くいっていれば……」

初めて声が届いた後の練習でも、正直全部を届かせることは出来ず、その度に項垂れる彼女を『大丈夫』『きっと上手くいく』と僕なりに精一杯の励ましを送った。
笑顔を向けてくれるけどやはりその目や口は不恰好な笑いであり、心から笑っていなかった。

そんな時、携帯が鳴り1通のメッセージが届いた事を知らせてくる。

【勉強中、だよね?いま終わりました】

彼女が僕に敬語を使ってメッセージを送ってくるなんて一度も無かった。
だから良い知らせではないと直感し、表示された通知の中身を見るのが怖かったが、見ない訳にもいかない。

恐る恐る通知の内容を見ると、結果は声も届かず、動きも硬いとダメ出しをくらい意気消沈中だと送ってきた。
それを見て僕はすぐに通話ボタンを押したが、なかなか出てくれない…。
今は話したくないと思う。
でもどうしても今じゃなきゃだめだと思い、諦める事なくずっと呼び出しているとようやく通話が開始された。

「もしもし、大丈夫?」
「……」
「聞こえる?」
「……うん」

電話口の向こう側はとても静かで、時折聞こえるサイレンの音や車のクラクションの音はやけに響くが、彼女の声だけは音量を最大にしても聞き取りにくい程に小さかった。

「見たよ」
「うん」

実際に聞く声を耳の当たりにすると、通話してみたもののどう話せば良いか分からず言葉につまった。
考えれば考えるほど、いや、そうじゃない。と葛藤してしまい口は重くなるばかりで無言になり、外の生活音とお互いの呼吸音だけの時間が続いた。

「ガリ勉くん」

その静けさを破ったのは彼女だった。

「なに?」
「……会いたい」
「いま?」
「ううん……今は、無理。また連絡する。……じゃあね」

返答する前に通話は切られ、ツーツー…っと機械音だけが虚しく残った。



しかし、彼女からの連絡はしばらく待っても来なかった。
僕から送る事も可能だったが、思い悩む心をより追い込む形になってしまい、それこそストーカーの様な行動だと思われてもおかしくない。
だから待った。

そして、ようやく連絡が来たのは空に雪が舞うクリスマスイブだった。

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