君から届く声を、僕は守りたい

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手慣れた感じでフロントの受付をする様子を見ており、少し恥ずかしさが沸いた。
本来ならこういう事は男がやるべきではないか、と。
しかし予約したのは私だからと買って出た。


キーを翳して入った部屋は液晶テレビとダブルサイズのベッド、一脚のテーブルと二つの椅子が置かれた簡易的な部屋であり、すでに暖房が効いて冷えた体を一気に暖めてくれた。

一つ屋根の下で男女がいる空間は落ち着かず、窓近くに置かれた椅子に僕はちょこんと座った。

「犬みたいだね」
「君は肝が据わっているみたいだね」
「……そんな事ないよ」

彼女の顔はどこか紅潮しており、それは緊張からか、それとも急に暖かい部屋に入ったからかは分からなかった。

「良かったら先に」

僕が出せた「男」の言葉はこれだけだった。

「ありがとう」

シャワー室から聞こえてくる音に僕は落ち着かず、窓の外ばかりを見ていた。外は色鮮やかなイルミネーションが光り輝き、その一つ一つが今日という特別な日を演出している様だった。

「お待たせ」

出てきた彼女は白いガウン姿であり、その下からは白い足を覗かせていたので、すぐに目を逸らした。

「君もちゃんと男の子なんだね」
「は、恥じらいをもってよ……」
「気をつけます」

僕は逃げるようにシャワー室へと行った。
そして戻ってくると彼女は先ほど僕がしていたように椅子に座り、外を眺めていた。

「綺麗だね。皆、楽しそう」

同じ感想だった。

「うん、今日はクリスマスだから」

くるっと窓から振り返り僕と向かい合ったかと思うと、ベッドに移動し腰掛けていく。

「君も座って」

言われた通りに座るが、1人分の距離は空けた。

「……話したいことって、なに?」
「せっかちだなぁ、もう少し君もクリスマスを楽しんだら」

すると、急に部屋の明かりが消え、真っ暗になった。

「なにを!」
「……もう、私の気持ちも気付いて。明るいと話しにくいんだから」

しばしの沈黙が流れた後、ゆっくりと口を開いてくる。

「私の初舞台、散々だった。もう心が折れるくらいケチョンケチョンに言われて。
団長や先輩達の声はステージにいる私にハッキリと届いた。
凄いね。
私も声が届いていないって事はすぐに分かった。
皆、首を傾げつつ私のことを見てくるから。こんなんで私は役者を目指して……」

また弱音を吐きそうな彼女だったから、僕は怒ろうと声を出しかけた時、さらに続けてくる。

「でも、私は辞めないよ」
「えっ」
「色々言われたけど、演じた中で1番伸びしろがあるとも言ってくれた。
もっとプロの力を借りて伸びろ、って」
「それってどういう……?」
「劇団でもトレーニングはあるよ。でも、もっと上手く出すならその道の専門家を頼るのが1番近道だって。
だからボイストレーニングも始めた。
もっと君に届けるよ、私の声を」

暗くなった部屋にも段々と目が慣れてきて、目の前にいる彼女の顔が暗闇の中でも分かる様になってきた。
その顔は決意に満ち、そして優しく微笑んでいた。
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