君から届く声を、僕は守りたい

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「失礼します」

断りを入れたかと思うと、暗闇のなか彼女の体がこちらへ寄ってきて、背中に手の感触を覚える。

「……」
「こういう時は君も背中に手を回して欲しいんだけどなぁ。でも、興味ないって言っていたから仕方ないか」

彼女の声が耳をくすぐるので思わず軽く顔を下に向けた。
しかし、目の前に胸元が飛び込んでくるので今度は右に逸らした。

「心臓、凄い早いよ。私に緊張しているんだね」
「……き、君こそ」
「バレたか」

クスッと笑うと体も動くから止めて欲しかった。

「ねぇ、こんな状態で君はよく我慢できるね、男の子でしょ?……いま私達ベッドにいるんだよ」
「……」
「あっ、また早くなった!」
「揶揄わないで」
「ごめん。でも今日は帰れないんだから横で寝て欲しい」
「だったら、早く離れてくれない?」
「もったいない、せっかくのチャンスを」

彼女はゆっくり背中に回した手を外すと、ベッドに寝転び始め壁際へと移動していった。

「ガリ勉くんも横になってよ」

ここは素直に従おう。
僕もベッドに寝転ぶと、せっかくだし見合おうよと言ってくる。

「さっきもそうしたでしょ?」
「もう!乙女心を知れぇ!……それより一度でいいから手、繋いでいい??」
「えっ!!!」

テーマパークに入った時と同じように手を差し出し掴むのを待っている。
こういう時は無理に繋ぐのは逆に不親切だと知っているからか僕の返事を待っていた。
シーツの上をゆっくりと滑らせていき、彼女の手に軽く触れると待ってましたと言わんばかりにギュッと繋いできた。

「手、冷たいんだね」

彼女の手はとても暖かく、それがかえって僕の手が冷たすぎる事を強調していく。

「さっきシャワー浴びたからでしょ?」

僕は客観的な事実を述べると笑い飛ばし、今の発言に異議を唱えてくる。

「私よりも後にシャワー浴びたのに?」
「……」
「私の勝ちだね」

繋いだ手を自分の方へと引き寄せると同時に、残った手を首元の後ろへと回してくる。

「ここも冷たい」
「……もういいでしょ」
「何もしないよ。これは誓える。でも今日はわがままを聞いて」


そのまま僕らは少しの空間を残し眠る事にした。
だけど、横で寝息を立て寝ている彼女からは爽やかなシャンプーの匂いが鼻を刺激して来るので、とてもじゃないが寝られそうになかった。
こんな経験、初めてだ。

首に回した手はいつの間にか離れていたけど、繋いだ手だけは未だにギュッと繋がれ、動くと起きてしまうと思い僕はその日一睡も出来ずに朝を迎えることにした。
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