君から届く声を、僕は守りたい

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僕は君が嘘なんかついていないと信じたい。
でもあの日の出来事を思い出してしまうと心の奥深くがざわめき、頭の中の天使と悪魔が激しく口論している。

信じてあげて。
いや、あれは嘘を言ってるんだ、と。

答えが出ず、悶々とした気持ちを抱えたまま月日が流れていき、また夏を迎えた。



「今日は早いんだね」

いつもの公園、そして街路灯が灯る夜に僕らは待ち合わせ、軽く一言二言交わすとさっそく練習のため線を引く。

もう彼女は25mの距離はクリアし、今では声を届かせるだけではなく、右へ左へと動きをつけている。
自分が今ステージの上にいるんだとイメージをしながら。

「ふぅ……」
「お疲れ様」

隣に座る彼女にペットボトルと、のど飴を差し出す。

「ありがとう」

にっこりと笑顔を向け、水を一口飲んだ後、のど飴を口に放り込みコロコロと転がしている。
時折、さぁ……っと夜風が吹き抜けると、その心地良さを感じようと彼女は目を閉じた。

「月日が経つのって早いね」
「そうだね。……ところで選考はいつ?」

閉じていた目をゆっくりと開くと、僕の方を見てくる。

「来週」
「そっかぁ、……とうとう、だね」
「うん」

自身をアピールし、夢を叶えるために最も良い役はヒロインだ。
他と違いセリフも出番も多く大変ではあるが、それでも声を届ける機会という面では一番だからだ。

でも、もし落ちたら……と口に出してしまいそうになるがグッと堪えた。
そんな僕の気持ちを感じ取ったのか、彼女はスッと立ち上がった。

「どうしたの?」

問いかける声には答えず、ゆっくりと街路灯の真下へと歩いていった。
ベンチから街路灯までは5mとない。
オレンジ色に照らされた下で彼女は立ち止まると、背を向けたまま話しかけてくる。

「君はいま、二つの事を言おうとしてる。
一つは、『もし、落ちたら……』」

そこで一旦口を閉じ、街路灯に向け顔を上げていく。

「も、もう一つは?」

少し上擦った声で堪らず僕は問いかけた。
言いたい事はズバリその通りだ。

すると、くるっと反転し『私を病気だと疑っている』と告げてきた。


思わず息を呑んだ。
確かに母の言葉を受けてからその感情は生まれたが、僕は頭の中の天使を選んだ。
信じよう、と。

「そんな事ない」

冷静な口調で対応し首を振ったが、彼女はそれを否定してくる。

「君を何年見てきたと思ってるの?バレバレだよ」

少し目を逸らした僕の元に歩み寄ってくるなり、頭を下げてきた。

「………………ごめんなさい」

「えっ」

頭のつむじが見えるくらい深く謝罪を示すその姿に、僕は言葉を失い、下げた頭が戻ってくるのを待った。

時間にしたらほんの数秒だと思う。
でも下げた頭を戻す姿はとても遅く、まるでコマ送りされた映像をみているかのようだった。

「わたし………君に嘘をついた」
「それ、……って」
「君が思っている通りだよ」

彼女は喉元を軽く擦り、ここだと告げてくる。
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