君から届く声を、僕は守りたい

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彼女の告白に、僕は思わず立ち上がり近づいていった。

「……嘘、でしょ?」

彼女は首を振ったあと申し訳なさそうな表情を見せ、両手をギュッと固く結び、口は真一文字に閉じていく。
そんな状況をみて、とてもじゃないが次の瞬間『ビックリした??』と笑いながら貶める姿など想像出来なかった。

「いつから?」

問いかけに、一拍置いてから話してきた。
ボイストレーニングを開始して少し経ってからだ、と。

最初は小さな違和感からだったそうだ。
学んだ方法を試していると、チクッと痛みが走ったが、それはまだトレーニングを始めたばかりで慣れていないと思い込んだ。
実際、先生に相談すると同じ意見を貰った事でそれ以上深く考えないようにした。
だけど、月日が経ってもその痛みは襲ってくるので不安になり病院に行ったそうだ。
病院も今住む場所付近で行ってしまうと親戚の子のみならず、劇団の誰かに見られ報告されたら選考を除外されてしまうのでは、と考えこっちに戻って受診したと告げる。
それを僕の母は見たんだ。

「……君は、どうして欲しい?」

重苦しい空気のなか発せられた言葉に、僕は黙り考えた。

こんな話を聞いてしまったら辞めて欲しいと願う。
しかし、それでは今までやってきた努力は全て水の泡になってしまい、彼女の生きる力を奪いかねない。
夢を叶える手前でこのような躓きを与える神様を今までで一番憎んだ。

「辞めて欲しくない……」

考えた事とは違う言葉を僕は口にしていた。
続ければそれこそ言葉を発せられなくなる危険もあるのに…。
でもそれ以上にステージに立つ彼女の姿を望んだ。
あの日、あの時見た女性演者のような姿を。

僕の言葉にビックリしたのだろう。
彼女の両目からは涙が流れ、街路灯に照らされたその涙はオレンジ色に光ってとても綺麗だった。

「……本当にいいの?」

人気のない静かな公園だったからこそ聞こえたが、その声はとても小さく、時には少し荒い呼吸をみせ、何かを我慢しているようだった。

「僕の考えている事なんて君にはバレバレなんでしょ?でも今回は違う。
辞めてとか諦めようなんて言わない。
君の夢の扉はもう目の前にある、あとは開けるだけ。
それに僕は聞きたいんだ。
この公園でも、山でも、海でもない。
ステージに立つ君からの声を」

「……が、………翔吾くん」

「ははっ。君が僕をそう呼ぶのは2回目かな?」

次の瞬間、彼女は僕に抱きついてきた。
あのクリスマスの時のように。
でも強引じゃない。
抱きしめられた僕も彼女の背に手を回すと、我慢が限界を超えたのだろう。
胸の中で泣く彼女を優しくポンポンと叩いた。


「ありがとう」
「うん、一緒に頑張ろう。でも、無理だけはしないで」
「うん……」

今日の練習はそれ以降せず、2人で駅へと歩いて行った。



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