君から届く声を、僕は守りたい

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神様に無礼を働いたからか、選考の日は大型台風が上陸し、荒れた天気となった。
まるでこれから行われる大事な日を邪魔してやろうと怒っているかのようだった。
本当は行われる場所まで行こうと思っていたが、電車が止まってしまい行く手段がなくなってしまったので、仕方なく自室で終わるのを待つ事にした。
どれだけ遅くても昼過ぎにはと言っていたので、時計の秒針が1周するのを何度も繰り返し見てしまう。

あれだけ練習したんだ。
大丈夫、上手くいく。
努力は報われる。

何度も頭の中で呟き、連絡が来るのを今か今かと待ちわびた。
しかし、昼過ぎになっても連絡は来ず、不安が次第に強くなっていった。

そんななか、時計の針が13時に迫った頃、遅めの昼食が出来た事を告げる母の声があった。

「どうしたの?携帯なんて持ってきて」

普段家では持ち歩くことのない行動をしている僕にピンときたのか、母はうんうんとうなずいてくる。

「梢ちゃんかぁ、青春だねぇ」
「……うるさい」

テーブルに置いた携帯を裏返しにして画面が母の目に映らないようにした。

「そんなに怒らないでよ。それより……聞いたの?」
「なにを?」
「なにって、病気の事よ。あんな怖い顔して急に部屋に行ったんだから。」
「……違ったよ。母さんは人違いをしたみたいだ」

僕は嘘をついた。
ここで真実を話せば、また何か聞いてきそうだし、なにより今は彼女の連絡に集中したかった。
そんな時、メッセージが届いた事を知らせる音が鳴り、すぐに裏返していた画面を確認すると彼女からのメッセージだった。
そこには一文だけ【話したいな】と書かれていた。

それを見てすぐにリビングを後にしようとすると母が声を掛けてくる。

「翔吾」
「なに?」
「……そろそろ自分の気持ち、告げたらどう?」

僕はそれには何も答えず自室へと急ぎ、通話ボタンを押した。

「もしもし?」
「もしもし、終わったの?時間になっても来ないから何かあったのかと……」
「心配してくれたんだね、ありがとう」
「そ、それで、結果は??」

受かっていて欲しい。
ただそれだけを望み、彼女からの返答を待った。
すると、刹那の沈黙が流れた後、笑い声が聞こえてきた。

「あははっ!君らしからぬ言葉だね。今日の今日に結果なんて出ないよ。後日だよ、後日」
「あっ……」

焦りすぎた事と笑い声に僕の顔は赤くなった。
でも幸いな事に、目の前にいるわけではないからそれに気付くことはないはず。

「顔、真っ赤だよ」

ドキッとした。
なぜ分かるんだ?

「言ったでしょ?バレバレだよ、君のことは。結果は一週間以内に出るって」
「一週間……長いな」
「うん、長いよね。ずっとドキドキしながら待つんだから。君もこんな感じだったのかな?」
「なんの事?」
「私は高校受験してないから、合否発表を待つのはこれが初めてかも」
「……それは間違いだ。君は劇団に入る時に経験したはず」
「あっ!……じゃあ2回目か」
「数で言ったら、君が先輩だ」
「ふふーん、じゃあ結果が出たら教えてあげよう。
その時を今しばらく待たれよ!」
「なんでそんな口調なのさ」

他愛のない会話はその後も続き、気付いたら一時間も経っていた。
でもそれによってお互い救われているようで…。
もしなければ『結果』を悶々と考えてしまい、気持ちが沈んでしまいそうになるから。
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