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両思い…
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俺はもう一度グラスの水を飲んだ。
一方、小野さんは両手をテーブルに置いては指を絡ませていく。
「……俺、免許取ったんだ」
「えっ」
ゴソっとズボンから財布を取り出し、交付されまだ日が浅い免許証を小野さんの前に提示した。
「凄い……」
「そんな凄かねぇよ。あんただって取ろうと思えばすぐ取れる」
「でも、働きながら、ですよね?」
「まぁ……そこはそうだが」
小野さんは差し出された免許証を両手で摘み、ジッと見ていた。
「あまり写真見るなよ。恥ずいから」
「そんな事……」
「それで、……俺、あんたが良いならどこか連れてってやりてぇ。車は持ってないからレンタカーになっちまうが」
「……嬉しいです」
「行きたい場所なんかねぇか?何処でもいいぞ、俺が連れてってやる」
俺の問いに小野さんは絡めていた指を少しキュッと握り答えてきた。
「テーマパーク、行きたいです」
「テーマパーク」
「はい……一度も無くて」
「そうなのか?」
無言で頷く。
「両親とも忙しいから、そんな時間なくて。それに私、友達いないので……」
「そうか、なら決まりだな。俺が連れてってやるよ」
「本当ですか?」
「あぁ」
すると小野さんは絡めていた指を解き、右手の小指を俺に差し出してきた。
「……指切り、してください」
細く白い小指に俺は自身の小指を絡めた。
「約束な」
「はい、約束です」
指切りをした後、スルッと指を離した小野さんが口を開いた。
「私も話が……」
何を言ってくるんだろうか…。
俺がした告白の返事か?それとも他の何かか?
俺の頭の中は色んな感情が渦巻き、小野さんが次に発する言葉を待った。
すると、バックから一枚の紙を出す。
(まさか……)
「なんとなく、分かりますよね…」
「……あぁ、模試、だっけ?」
「はい」
スッと俺の前に差し出してくる。
「いいのか?」
コクっと頷くので、俺はそれを開いた。
そこには受ける大学の判定結果が記されており、やはり受ける大学は一つだけのようだ。
「B?……って前はCだったよな?」
「はい」
「やったじゃねぇか、上がってる」
俺は受けてもないのに喜びはしゃいだ。
でも、受けた当人は何故か浮かない顔をしていた。
「どうした?上がってるんだぞ?なんでそんな暗い顔してるんだよ。これ、見せたのか?」
「……はい」
「でも、前より上がってるなら怒られることなんて無いはずだろ。普通はそうだ」
「……そうですよね、普通は喜ぶべき所だと思います」
「お、おぁ、そうだ。でもなんで?」
小野さんは俺が持つ紙へと手を伸ばし、俺から奪い取っていく。
「今の時期に『B』って危ないんです。……『A』じゃないと」
「なに言ってるんだよ。Bでもスゲェじゃねぇか」
首を横に何度も振り、否定してくる。
「試験まであと2ヶ月なんです」
「……そうなのか?」
「はい……受からなかったら……」
「俺は試験とかの辛さは分からねぇが、落ち込みすぎだ。あんたなら大丈夫だ!」
俺は励ますつもりで何度も『大丈夫だ』と伝えた。
すると、紙をクシャっと力強く両手で握り込みつつ俺に話してくる。
「不安なんですよ!受からなかったら絶対に勘当される!
でも気になって仕方ないから!
勉強してても浮かんできてしまう、あなたの事が!?」
真っ赤になった目には涙を浮かべ、真っ直ぐ俺を見てくる。
「私は……あなたが好きです……」
ようやく貰えた返事。
でも、今この状況では嬉しさよりも……。
「何度も連絡したい、会いたい、って思った。
でもそれは出来ない。……苦しいんです」
胸の内を打ち明けた小野さんの両目からは涙が頬を伝い、テーブルへと落ちる。
店内には俺らしかいない。
流れる小さなBGMよりも大きな声で告げる想いは店中に響いていた。
一方、小野さんは両手をテーブルに置いては指を絡ませていく。
「……俺、免許取ったんだ」
「えっ」
ゴソっとズボンから財布を取り出し、交付されまだ日が浅い免許証を小野さんの前に提示した。
「凄い……」
「そんな凄かねぇよ。あんただって取ろうと思えばすぐ取れる」
「でも、働きながら、ですよね?」
「まぁ……そこはそうだが」
小野さんは差し出された免許証を両手で摘み、ジッと見ていた。
「あまり写真見るなよ。恥ずいから」
「そんな事……」
「それで、……俺、あんたが良いならどこか連れてってやりてぇ。車は持ってないからレンタカーになっちまうが」
「……嬉しいです」
「行きたい場所なんかねぇか?何処でもいいぞ、俺が連れてってやる」
俺の問いに小野さんは絡めていた指を少しキュッと握り答えてきた。
「テーマパーク、行きたいです」
「テーマパーク」
「はい……一度も無くて」
「そうなのか?」
無言で頷く。
「両親とも忙しいから、そんな時間なくて。それに私、友達いないので……」
「そうか、なら決まりだな。俺が連れてってやるよ」
「本当ですか?」
「あぁ」
すると小野さんは絡めていた指を解き、右手の小指を俺に差し出してきた。
「……指切り、してください」
細く白い小指に俺は自身の小指を絡めた。
「約束な」
「はい、約束です」
指切りをした後、スルッと指を離した小野さんが口を開いた。
「私も話が……」
何を言ってくるんだろうか…。
俺がした告白の返事か?それとも他の何かか?
俺の頭の中は色んな感情が渦巻き、小野さんが次に発する言葉を待った。
すると、バックから一枚の紙を出す。
(まさか……)
「なんとなく、分かりますよね…」
「……あぁ、模試、だっけ?」
「はい」
スッと俺の前に差し出してくる。
「いいのか?」
コクっと頷くので、俺はそれを開いた。
そこには受ける大学の判定結果が記されており、やはり受ける大学は一つだけのようだ。
「B?……って前はCだったよな?」
「はい」
「やったじゃねぇか、上がってる」
俺は受けてもないのに喜びはしゃいだ。
でも、受けた当人は何故か浮かない顔をしていた。
「どうした?上がってるんだぞ?なんでそんな暗い顔してるんだよ。これ、見せたのか?」
「……はい」
「でも、前より上がってるなら怒られることなんて無いはずだろ。普通はそうだ」
「……そうですよね、普通は喜ぶべき所だと思います」
「お、おぁ、そうだ。でもなんで?」
小野さんは俺が持つ紙へと手を伸ばし、俺から奪い取っていく。
「今の時期に『B』って危ないんです。……『A』じゃないと」
「なに言ってるんだよ。Bでもスゲェじゃねぇか」
首を横に何度も振り、否定してくる。
「試験まであと2ヶ月なんです」
「……そうなのか?」
「はい……受からなかったら……」
「俺は試験とかの辛さは分からねぇが、落ち込みすぎだ。あんたなら大丈夫だ!」
俺は励ますつもりで何度も『大丈夫だ』と伝えた。
すると、紙をクシャっと力強く両手で握り込みつつ俺に話してくる。
「不安なんですよ!受からなかったら絶対に勘当される!
でも気になって仕方ないから!
勉強してても浮かんできてしまう、あなたの事が!?」
真っ赤になった目には涙を浮かべ、真っ直ぐ俺を見てくる。
「私は……あなたが好きです……」
ようやく貰えた返事。
でも、今この状況では嬉しさよりも……。
「何度も連絡したい、会いたい、って思った。
でもそれは出来ない。……苦しいんです」
胸の内を打ち明けた小野さんの両目からは涙が頬を伝い、テーブルへと落ちる。
店内には俺らしかいない。
流れる小さなBGMよりも大きな声で告げる想いは店中に響いていた。
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