落とし主は私の未来の旦那様

mock

文字の大きさ
2 / 2

2

しおりを挟む
「な、……何してるの!!」

私の大声に二人は慌てふためきソファから落ちた衣服を取り身支度を整えようとしていた。

「透っ!」

彼である透は白いTシャツを着るなり、テーブルに置かれた黒縁メガネを掛け、私の方へと目を向けてくる。

「……」

だが、私の顔は鬼のような形相でいるため、何も言えず、隣でいそいそと着替える女性へと寄っていった。
一方、女性は白シャツのボタンの掛け違いなど気にせず、出口である玄関へと向かおうとするが、行くためにはこのリビングを通らなければならず、その前には私が仁王立ちで行手を阻んだ。

「……何も言わずに去る気?」
「あっ。……いや、その」

女性は顔を赤めつつ、目は一向に合わせようとしない。
当たり前か。
こんな状況で清々しい顔を見せ『お邪魔しました』なんて言えるはずも無い。

だから私は女性が着るシャツの後ろ襟を掴み、再びソファへとズルズルと引いていった。

「お、おい。由紀……」

透が小さな声で私を静止させようとするが、私はお構いなしに引き、ブンッと振り払うと女性はソファへと座らされた。

「……あなた、名前は??」
「……」

掛け違えたシャツの前部分を掴みつつ、ブルブルと震えながら黙る仕草に、私はもう一度問いた。

「名前、分からないはずないでしょ?自分のなんだから」

冷たく言い放つ私の声に、女性は先程よりも震えだし、啜り泣きを始めていく。

「泣きたいのは私の方よっ!!!」

私は女性が座る側にあったベージュのクッションを思いっきり叩き出し、ズイッと顔を近づけていった。

「もう止めろよっ、由紀!」

両脇の下に腕を入れ強引に引き剥がすように、後ろへと引かれていく。

「今すぐこの手を離して!!」
「ダメだ。……ちゃんと話すから」




二人はソファの下にちょこんと座り、私は行儀が悪いと思いつつもテーブルに座り、足を組んで見下ろしていく。

「……で、透。話すんでしょ?早くしてくれない?」
「そ、その。こいつは……」

吃りつつ隣の女性に目をチラチラと移しつつ、こめかめ辺りにはツーッと汗が垂れていた。

「ごめんなさいっ!」

吃る透より先に女性が口を開き、目の前で土下座をして謝る姿勢を見せてきた。
何度も何度も頭をこつこつとぶつけ平謝りする姿に、透は口を半分開きつつも何も言わずそれを見ていた。

「……謝るより、私が知りたい事言ってくれない??」
「あのっ、私……」
「いや、お、俺が言う」
「じゃあ早くして」

「……こいつは、えっと、俺の後輩で、その」

顔を真っ赤にして見上げつつ私に答え始める透は先程よりも汗が吹き出し、口なんてもうカサカサだ。
喉も乾いているのか、上手く声も発せない状況に私は大きく息を吐いた。

「何年?」
「えっ?」
「だから何年浮気してるのかって事。……いまさら惚けようとしても無駄」
「……さ、三年」
「はぁ!!!」

私は透の告白を聞くや否や、その頭に足を振り下ろしていた。


しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

【完結】リゼットスティアの王妃様

通木遼平
恋愛
 リゼットスティアという美しく豊かな国があった。その国を治める国王も美しいと評判で、隣国の王女フィロメナは一度でいいから彼に会ってみたいと思い、兄である王子についてリゼットスティアに赴く。  フィロメナはなんとか国王にアピールしようとするが国王にはすでに強引に婚姻に至ったと噂の王妃がいた。国王はフィロメナに王妃との出会いを話して聞かせる。 ※他のサイトにも掲載しています

拝啓、婚約者さま

松本雀
恋愛
――静かな藤棚の令嬢ウィステリア。 婚約破棄を告げられた令嬢は、静かに「そう」と答えるだけだった。その冷静な一言が、後に彼の心を深く抉ることになるとも知らずに。

侯爵様の懺悔

宇野 肇
恋愛
 女好きの侯爵様は一年ごとにうら若き貴族の女性を妻に迎えている。  そのどれもが困窮した家へ援助する条件で迫るという手法で、実際に縁づいてから領地経営も上手く回っていくため誰も苦言を呈せない。  侯爵様は一年ごとにとっかえひっかえするだけで、侯爵様は決して貴族法に違反する行為はしていないからだ。  その上、離縁をする際にも夫人となった女性の希望を可能な限り聞いたうえで、新たな縁を取り持ったり、寄付金とともに修道院へ出家させたりするそうなのだ。  おかげで不気味がっているのは娘を差し出さねばならない困窮した貴族の家々ばかりで、平民たちは呑気にも次に来る奥さんは何を希望して次の場所へ行くのか賭けるほどだった。  ――では、侯爵様の次の奥様は一体誰になるのだろうか。

ウインタータイム ~恋い焦がれて、その後~

さとう涼
恋愛
カレに愛されている間だけ、 自分が特別な存在だと錯覚できる…… ◇◇◇ 『恋い焦がれて』の4年後のお話(短編)です。 主人公は大学生→社会人となりました! ※先に『恋い焦がれて』をお読みください。 ※1話目から『恋い焦がれて』のネタバレになっておりますのでご注意ください! ※女性視点・男性視点の交互に話が進みます

incurably

優未
恋愛
幼い頃のちょっとした事故が原因で婚約を結んだマークとエリナ。ほとんど目立たない傷で責任を取ってもらうのは申し訳ない。何とか穏便に婚約解消を目指すエリナに対してマークは……。

おにょれ王子め!

こもろう
恋愛
レティジアは公爵令嬢で、王子フリードの婚約者。しかし現在、フリードとの関係はこじれまくっている。 見た目は気が強そうだが実は泣き虫なレティジアは人知れず毎日涙を流し、フリードはなんだかイライラしている。 そんな二人の前に現れるのは……!

本物の夫は愛人に夢中なので、影武者とだけ愛し合います

こじまき
恋愛
幼い頃から許嫁だった王太子ヴァレリアンと結婚した公爵令嬢ディアーヌ。しかしヴァレリアンは身分の低い男爵令嬢に夢中で、初夜をすっぽかしてしまう。代わりに寝室にいたのは、彼そっくりの影武者…生まれたときに存在を消された双子の弟ルイだった。 ※「小説家になろう」にも投稿しています

今さら遅いと言われる側になったのは、あなたです

有賀冬馬
恋愛
夜会で婚約破棄された私は、すべてを失った――はずだった。 けれど、人生は思いもよらない方向へ転がる。 助けた騎士は、王の右腕。 見下されてきた私の中にある価値を、彼だけが見抜いた。 王城で評価され、居場所を得ていく私。 その頃、私を捨てた元婚約者は、転落の一途をたどる。 「間違いだった」と言われても、もう心は揺れない。 選ばれるのを待つ時代は、終わった。

処理中です...