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ライオネス家

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「お母様」

「なぁに、マリー」

「たまには外でお花でも見に行こう、部屋にいても退屈だし、それに…」

外へ行こうと声を掛けてくるこの子はマリー。
このライオネス家の跡取り、ブライスと私の間に生まれた唯一の子。

特徴のある栗色の髪は私に似ており、長くキューティクルな髪をアレンジするのが楽しくよく私に色んなアレンジを教えて欲しいとねだって来る。

早く早く…と手を引き引っ張る力は昔より少し強くなったなぁと感心し月日が経つのも早いものだと実感した。

今7歳のマリーは街の中央にある貴族の子が通うアカデミーの一年だ。
貴族が通う…というからにはやはりそれなりの財力や権力を持っている人達の子、と容易に想像でき何か問題があれば親がすぐに出てくる。

しかしそんな問題もこの家では…。

「あぁ、リーネ様。良かった、ブライス様が…」

すこし息を切らしながら部屋へとやってくるこの人は屋敷の執事、ロータスさん。
私がこの家に嫁いだ時からお世話になっている人で、ライオネス家当主や私の夫の執事だ。
昔からいると聞いており、年は召しているが足腰はしっかりしており、ビシッと背を丸める事なく立ち、今でも多くのメイドに指示を的確にだす様はさすがといった感じだ。

「ブライスがどうかしましたか?」

「退け、ロータス、リーネに話がある」

「申し訳ありません」

扉付近を塞ぎ私に話しかけていたロータスさんはすぐに退き、夫であるブライスが私の前に現れた。

私よりも背が高く、
部屋のライトが当たるとよりそのエメラルドの両目が美しく見え、その瞳は娘のマリーにも受け継がれている。
それにスラッとした体型は女性の私から見ても羨ましい程で婚姻を結んでから10年近く経ったというのに全く変わらない。

「なんでしょうか、ブライス」

私の言葉にブライスはマリーをチラリと見ると、何故か一つため息をつき右手で顔を覆った。

「どうしたのですか?マリーが何か…」

「アカデミーで喧嘩をしたそうだな。それで相手が家にやってきた。どういう教育をさせているんだ、お前は?」

「えっ…」

喧嘩…という言葉を聞いてすぐにマリーを問い詰めようと視線を送ると先程まで引っ張っていた手をすぐに離し、部屋の中へと逃げていった。

「待ちなさい、マリー。しっかり説明して、喧嘩ってどういう事?」

部屋のカーテンに隠れ姿を見せないようにしているが足元だけは隠れておらず場所だけはすぐに分かった。
すぐに近寄りカーテンを開けると半ベソをかきながら私の瞳を見ては大粒の涙が目に溜まっていた。

「だってぇ~…」

今にも泣き出しそうな言葉で私に話しかけるマリーをここで怒鳴りつけたらもっと言わなくなる…と思い、膝をつき同じ目線にして優しく語りかけようとした。

でも…

「いい、リーネ!俺が問い詰める」

扉付近にいたブライスが膝をつき、今まさに問いかけようとしていた私を退かし、マリーの手を掴んでは部屋から連れ出して行こうとしていた。

「ブライス、何を!?」

「お前には任せておけん、それにもう相手が家に来ている。
この街のトップにいるこのライオネス家に恥をかかす気か!」

痛い!といってるマリーの言葉などまるで無視しロータスさんの静止をも聞かずブライスはそのままマリーを引っ張り部屋を飛び出していった…。
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