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問い詰めるためには…

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「な、なんでユーリが泣いてるの?」

いきなり叩いたかと思ったら私の側で涙を流し、力無く私に寄り添ってきた。
そんな行動に驚かずにはいられなかった。

「あなたがかわいそう…。
二人を近くで見てきたからこんな風になるなんて思わなかった。
確かにマリーが生まれてからはあまり接してなかったけど、いきなりこれは酷過ぎる…」

「ユーリ…」

「…行こう、リーネ」

「ど、何処に?まさか、ブライスの居場所知ってるの?
それだったら私にすぐ教えて!?」

知らない。と言いながら首を振るユーリは流した涙を手で押さえ、冷静さを取り戻そうとしていた。
ただ、ユーリが向かおうとしてる場所が分からずにいる私はモヤモヤとしてしまっていた。

しばし、お互いにベットに座っていたが、スクッと立ち上がるユーリは私を見て、早く!と促してくる。

「待って、行くって…何処に?」 

「…ロータスさんのとこよ」

「なんで?どうせ言わないよ…私が聞いたって。
さっきユーリも見たでしょ?あんな感じじゃ問い詰めても無駄なだけだよ」

「大丈夫、私には『武器』があるから」

「武器…って、なに?」

フフッ…と片方の口角を上げて笑うユーリの事が不気味に見えた。
長年一緒にいる私でも知らない『武器』と言う言葉の真相。
戦うにしては華奢なユーリに勝ち目なんてないのに何故か自信満々な様子で私と対峙している。

「さぁ、早くいってブライス様を追いかけよう」

差し出す右手を私は不安と恐怖が入り混じった感情のまま掴んだ。



ロータスさんの部屋はブライスの部屋から程近く、何かあってもすぐに駆けつけれるような位置にある。
ノックをせずロータスさんの部屋を勢いよく開けていくユーリ。
中では椅子に腰掛けて寛ぐロータスさんがいた。

「なっ…急に入ってくるなんて何を考えている!」

入ってきたユーリを見るなり声を荒げ椅子から立ち上がるとこちらにやってきた。

「あなたに話があります、今回はしっかり答えて。
逃げるのは無しです」

「ふん。馬鹿馬鹿しい、またさっきと同じ話ですか。
何度問われても私は知りませんので。
早く出て行ってもらえますか?明日も早いので」

「ロータスさん」

ユーリとロータスさんのやり取りを後ろから見ていたがやはりこの話の主は私だと思う。
だから私はユーリを押し除けてロータスさんの前に立った。

「リーネ様、ブライス様と過ごす予定では?
まさかもう終わったのですか?あまりに早過ぎるとブライス様も満足…」

「ブライスは浮気してますよね?しかも…複数と。
私はそう思ってます。
さっき出かけると言ったので馬車を用意したのでは?
だったら行き先くらいわかりますよね?
何処ですか?教えて下さい」

私の問いにロータスさんはやはり先程と同じ様に顔を合わせようとせず違う場所を見てはやり過ごそうとしていた。
しかし、そんな時、ユーリが私の隣を通ってロータスさんに近づくと話し始めた。

それは私に言っていた『武器』を使いながら…。
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