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束の間の休息
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マリーの手から落ちたカーベラはポトリと床に落ちた。
「痛いよ、お母様…」
赤くなった手を見ているマリーを見て、ハッとしてすぐに近寄っていき抱き締めた。
「ごめん…マリー…嫌いにならないで…」
前回の光景が頭に浮かび何度も何度も謝っていた。
それに抱きしめる体からは軽く震えているのがマリーにも伝わっているようだった…。
「大丈夫だよ、お母様。ちょっとびっくりしたけど」
「そうだよね、ごめんね…」
膝をついて抱きしめている私をマリーはゆっくりと頭を撫でてくれた。
嫌われてない、そう思うと私は途端に涙ぐんでしまい、啜り泣きはじめてしまった…。
「リーネ、どうしたの?」
泣く私に気づき、レイ事務長とお茶の準備をしていたユーリがすぐにこちら側にやってくる。
泣く私とそれを優しく撫で続けているマリーを見るなりユーリはゆっくりと私の方へと歩んできて話し出す。
「まだ落ち着いてないよね。
無理もない、まだ1日も経ってないんだから…」
「ち、違う…これは…」
「いいの、違っても今のあなたには休息が必要だから。
まずは美味しいケーキでも食べて落ち着きましょう」
再びキッチンに向かうとレイ事務長と共に戻ってくる。
その手にはポット。
レイ事務長はお盆に人数分のケーキを持っている。
「さぁ、食べましょう。マリーはどちらが好きかしら?」
テーブルに並べられたケーキはチーズケーキとショートケーキだ。
「私はこっち!」
迷う事なくショートケーキを選択し、みんなを待つことなくすぐに食べ始めていく。
本当は注意するべきなのだが、私は何も言わず見てしまっていた。
注意するのに躊躇してしまったからだ…。
そして目の前に出されたチーズケーキ。
何も言わずに目の前に置かれたのを見た私は顔をあげた。
そこにはユーリの笑顔が飛び込んでくる。
昔から好きと分かっているからだろう、聞かずともコレだ、と。
「リーネ、食べよう」
横に置かれたカップに注がれるコーヒーの香りが少し私の気持ちを和らいでいく。
「ありがとう…ユーリ。それにレイ事務長も」
「いいのよ、さぁ、食べて。話はその後でしましょう」
私達が食べ始める時にはマリーはすでに終えており、同じショートケーキを食べているレイ事務長を見ていた。
「これが欲しいの?」
フォークでイチゴを指しているレイ事務長に対し、何度も頷くマリーに私はつい声を出してしまった。
「マリー!失礼でしょ」
「いいのよ、リーネ。…どうぞ」
「ありがとう!」
レイ事務長のフォークに刺されたイチゴを頬張ると口を動かし食べていく。
そして食べ終えると一人、席を離れて家の中を探検し始めて行った。
「すみません…なんと言ったら…」
「あれくらいでいいのよ、まだ子供なんだから。
…それよりあなた、ブライス様と婚姻していたのね。
でもここにいるということは…」
「レイさん!?」
ユーリが話を止めてくれたのは嬉しかった。
でも私はもう前の生活に戻るつもりもない…。
騙してまで他…アリスとあんな事になってる人をまた愛する事は出来そうもないから。
「ユーリ、大丈夫だから…。
はい、私はブライスと離縁しました。
これからはユーリとマリー、三人で生きていきます」
「そう…。ごめんなさいね、出しゃばってしまって。
これからはここで寝泊まりしていいから」
「えっ…?」
すぐにユーリの方を見て確認してしまった。
すると、首を縦に振っているユーリがいた。
「屋敷にいる時にやり取りしていて、もし何かあればそうしてもいいと言われてるの。
黙っててごめんね。
それにまだあなたに言ってないこともある…」
「な、なに?教えて!」
ユーリは私の方よりレイ事務長の方を見て何か確認を取っているようだった…。
「痛いよ、お母様…」
赤くなった手を見ているマリーを見て、ハッとしてすぐに近寄っていき抱き締めた。
「ごめん…マリー…嫌いにならないで…」
前回の光景が頭に浮かび何度も何度も謝っていた。
それに抱きしめる体からは軽く震えているのがマリーにも伝わっているようだった…。
「大丈夫だよ、お母様。ちょっとびっくりしたけど」
「そうだよね、ごめんね…」
膝をついて抱きしめている私をマリーはゆっくりと頭を撫でてくれた。
嫌われてない、そう思うと私は途端に涙ぐんでしまい、啜り泣きはじめてしまった…。
「リーネ、どうしたの?」
泣く私に気づき、レイ事務長とお茶の準備をしていたユーリがすぐにこちら側にやってくる。
泣く私とそれを優しく撫で続けているマリーを見るなりユーリはゆっくりと私の方へと歩んできて話し出す。
「まだ落ち着いてないよね。
無理もない、まだ1日も経ってないんだから…」
「ち、違う…これは…」
「いいの、違っても今のあなたには休息が必要だから。
まずは美味しいケーキでも食べて落ち着きましょう」
再びキッチンに向かうとレイ事務長と共に戻ってくる。
その手にはポット。
レイ事務長はお盆に人数分のケーキを持っている。
「さぁ、食べましょう。マリーはどちらが好きかしら?」
テーブルに並べられたケーキはチーズケーキとショートケーキだ。
「私はこっち!」
迷う事なくショートケーキを選択し、みんなを待つことなくすぐに食べ始めていく。
本当は注意するべきなのだが、私は何も言わず見てしまっていた。
注意するのに躊躇してしまったからだ…。
そして目の前に出されたチーズケーキ。
何も言わずに目の前に置かれたのを見た私は顔をあげた。
そこにはユーリの笑顔が飛び込んでくる。
昔から好きと分かっているからだろう、聞かずともコレだ、と。
「リーネ、食べよう」
横に置かれたカップに注がれるコーヒーの香りが少し私の気持ちを和らいでいく。
「ありがとう…ユーリ。それにレイ事務長も」
「いいのよ、さぁ、食べて。話はその後でしましょう」
私達が食べ始める時にはマリーはすでに終えており、同じショートケーキを食べているレイ事務長を見ていた。
「これが欲しいの?」
フォークでイチゴを指しているレイ事務長に対し、何度も頷くマリーに私はつい声を出してしまった。
「マリー!失礼でしょ」
「いいのよ、リーネ。…どうぞ」
「ありがとう!」
レイ事務長のフォークに刺されたイチゴを頬張ると口を動かし食べていく。
そして食べ終えると一人、席を離れて家の中を探検し始めて行った。
「すみません…なんと言ったら…」
「あれくらいでいいのよ、まだ子供なんだから。
…それよりあなた、ブライス様と婚姻していたのね。
でもここにいるということは…」
「レイさん!?」
ユーリが話を止めてくれたのは嬉しかった。
でも私はもう前の生活に戻るつもりもない…。
騙してまで他…アリスとあんな事になってる人をまた愛する事は出来そうもないから。
「ユーリ、大丈夫だから…。
はい、私はブライスと離縁しました。
これからはユーリとマリー、三人で生きていきます」
「そう…。ごめんなさいね、出しゃばってしまって。
これからはここで寝泊まりしていいから」
「えっ…?」
すぐにユーリの方を見て確認してしまった。
すると、首を縦に振っているユーリがいた。
「屋敷にいる時にやり取りしていて、もし何かあればそうしてもいいと言われてるの。
黙っててごめんね。
それにまだあなたに言ってないこともある…」
「な、なに?教えて!」
ユーリは私の方よりレイ事務長の方を見て何か確認を取っているようだった…。
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