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「なに…?ユーリ」
「…あの」
何か言いたげであるが、その次に続く言葉がなかなか出てこない。
ただ口元は震え、上下の歯が当たり、カチカチ…と音を鳴らしている。
「何も無いなら私は行く、マリーが待っているから」
何も言えずにいるユーリから体を扉のほうへ戻すと私はすぐに部屋を出てユーリの部屋へと急ぐ事にした。
私が部屋を後にすると、追いかける様にユーリも出てくるが、それ以上は来なかった。
また、ここまで追ってきていた警備員達も祝宴から帰り出す出席者達を見て何か起こったのだろう…と感じたからか、私をそのまま素通りさせていた。
バンっとユーリの部屋の扉を開くとそこにはマリー、レイ事務長、そして…。
「また会ったね、リーネさん」
「ラーク…さん、何故ここに?」
「もう忘れたのかい?僕はブライスの『弟』だって事を。
だからこの屋敷にいてもおかしく無いだろう?
でも、僕がブライスの弟って事は数少ない人しか知らないから祝宴になんて顔を出せないからね」
「お、お母様…」
マリーはレイ事務長がしっかりと手を掴みこちらに来れないようにガードしていた。
もちろんその側にはラークさんもいる。
「レイ事務長…あなたも私を裏切っていたんですね…」
私はユーリから聞いた事をレイ事務長に話し始めるとギュッとマリーの手を強く握り締め出した。
「痛い…」
マリーの痛がる声など無視して私と向き合い、そして話し出す。
「えぇ、私はあなたを裏切っていた。
でもそれは仕方ない事。だって、あなたはアカデミーには相応しくない。なのに、ずっといた…」
「相応しく無いかも知れなかった。でもそれは私が悪い訳ではない。選んだのはブライスなんだから。
…レイ事務長、早くマリーから手を離して」
「出来ない…。だってこの子はもうユーリが育てる。
そしてこれから生まれてくる子と共に」
「ふざけないで!?」
私の大声にマリーがビックリしてしまい少しだけ後退りをしていた。
(しまった…)
これでは昔のように私から離れようとしてしまう…。
そう思い、すぐに首を振り膝をついてマリーと同じ目線になり顔を見た。
「あーあ、そんな怒る母親なんてこの子は好きにならないよ。
やっぱりユーリさんに任せた方がいいんじゃない?」
ラークさんはそう言いながらマリーに近づいていく。
「近づかないで…その子は私の子…誰にも渡さない…」
静かに、そしてゆったりとした口調で私はラークさんを問き伏せていく。
「早く…離して、レイ事務長…」
「ダメ。あなたには渡さないようにブライス様から言われている」
二人は知らなかった。
ブライスとユーリの婚姻は破綻していることを…。
会場にいなかった二人にはまだその事実が届いてない。
だから…
「ブライスとユーリは終わりです。あの二人の婚姻は誰にも認められていません」
私の発した言葉を受けた二人はお互いを見合いあっていた。
そして、少し間、見合った後ラークさんが口を開いていく。
「何を言ってるんだ?婚姻が認められない?
そんな馬鹿なことがあるかい。
だって今、祝宴の最中だろう?」
「…そう思うなら会場に行けばいい」
私の毅然とした態度に不安を覚えたのか、ラークさんは部屋を出ていき会場へと向かっている様だった。
「レイ事務長、あなたは行かなくて良いのですか?」
「…リーネ。何言ってるの?嘘を付くならもっとマシな事を」
「嘘じゃない!私は全部ぶちまけてきた。ブライスの事、ユーリの事、全部!」
「そんな…」
マリーを握っていた手から力が抜け、自由になったマリーは私の方へと駆けてくる。
「あっ…」
「お母様!?」
駆けてくるマリーを私は優しく抱きしめ、レイ事務長と対峙した。
「…あの」
何か言いたげであるが、その次に続く言葉がなかなか出てこない。
ただ口元は震え、上下の歯が当たり、カチカチ…と音を鳴らしている。
「何も無いなら私は行く、マリーが待っているから」
何も言えずにいるユーリから体を扉のほうへ戻すと私はすぐに部屋を出てユーリの部屋へと急ぐ事にした。
私が部屋を後にすると、追いかける様にユーリも出てくるが、それ以上は来なかった。
また、ここまで追ってきていた警備員達も祝宴から帰り出す出席者達を見て何か起こったのだろう…と感じたからか、私をそのまま素通りさせていた。
バンっとユーリの部屋の扉を開くとそこにはマリー、レイ事務長、そして…。
「また会ったね、リーネさん」
「ラーク…さん、何故ここに?」
「もう忘れたのかい?僕はブライスの『弟』だって事を。
だからこの屋敷にいてもおかしく無いだろう?
でも、僕がブライスの弟って事は数少ない人しか知らないから祝宴になんて顔を出せないからね」
「お、お母様…」
マリーはレイ事務長がしっかりと手を掴みこちらに来れないようにガードしていた。
もちろんその側にはラークさんもいる。
「レイ事務長…あなたも私を裏切っていたんですね…」
私はユーリから聞いた事をレイ事務長に話し始めるとギュッとマリーの手を強く握り締め出した。
「痛い…」
マリーの痛がる声など無視して私と向き合い、そして話し出す。
「えぇ、私はあなたを裏切っていた。
でもそれは仕方ない事。だって、あなたはアカデミーには相応しくない。なのに、ずっといた…」
「相応しく無いかも知れなかった。でもそれは私が悪い訳ではない。選んだのはブライスなんだから。
…レイ事務長、早くマリーから手を離して」
「出来ない…。だってこの子はもうユーリが育てる。
そしてこれから生まれてくる子と共に」
「ふざけないで!?」
私の大声にマリーがビックリしてしまい少しだけ後退りをしていた。
(しまった…)
これでは昔のように私から離れようとしてしまう…。
そう思い、すぐに首を振り膝をついてマリーと同じ目線になり顔を見た。
「あーあ、そんな怒る母親なんてこの子は好きにならないよ。
やっぱりユーリさんに任せた方がいいんじゃない?」
ラークさんはそう言いながらマリーに近づいていく。
「近づかないで…その子は私の子…誰にも渡さない…」
静かに、そしてゆったりとした口調で私はラークさんを問き伏せていく。
「早く…離して、レイ事務長…」
「ダメ。あなたには渡さないようにブライス様から言われている」
二人は知らなかった。
ブライスとユーリの婚姻は破綻していることを…。
会場にいなかった二人にはまだその事実が届いてない。
だから…
「ブライスとユーリは終わりです。あの二人の婚姻は誰にも認められていません」
私の発した言葉を受けた二人はお互いを見合いあっていた。
そして、少し間、見合った後ラークさんが口を開いていく。
「何を言ってるんだ?婚姻が認められない?
そんな馬鹿なことがあるかい。
だって今、祝宴の最中だろう?」
「…そう思うなら会場に行けばいい」
私の毅然とした態度に不安を覚えたのか、ラークさんは部屋を出ていき会場へと向かっている様だった。
「レイ事務長、あなたは行かなくて良いのですか?」
「…リーネ。何言ってるの?嘘を付くならもっとマシな事を」
「嘘じゃない!私は全部ぶちまけてきた。ブライスの事、ユーリの事、全部!」
「そんな…」
マリーを握っていた手から力が抜け、自由になったマリーは私の方へと駆けてくる。
「あっ…」
「お母様!?」
駆けてくるマリーを私は優しく抱きしめ、レイ事務長と対峙した。
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