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日常

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葵が完全に回復する頃、皆は日常を取り戻していた。


樹は、毎日の執務に追われていた。
机の上の古い新聞を手に取る

「乗員乗客78名全員死亡・・か。」

18年前の飛行機事故の記事を見ていた。
搭乗者名簿には『倉橋紗羅』『桐生光明』の名前がある。

「この時葵と光明の人生は大きく変わったんだな・・・。」

新聞を机の上に置くと、ため息をついた。



神野は、自身のアトリエで絵を描いていた。
キャンバスに向かい、絵筆を走らせている。
しかし、途中で辞めてしまった。

葵の過去を司から聞いていた。
勿論、葵の了承を得てだ。

「敵わないな、葵には・・・。ますます好きになったよ。」



光明は、引き続き楓月会ふうげつかいの総帥の座に就いていた。

マリアについては、刃桜会の会長に話をつけていた。
今後一切、楓月会ふうげつかいや光明に関わらない事を約束させ不問にしたのだ。
本当であれば、何らかの報復を考えたが葵がそれを止めたのだ。
葵に言われてしまっては、光明も頷くしかなかった。

後一つ、葵が言ったのは光明の里親に会いに行く事。
里親と言っても、養子縁組をしているわけではないので身元保証人といったところだ。
葵と光明が冴木夫妻の家を訪ねると、夫妻は涙を流して喜んでいた。
本当に心配していたのがよくわかった。
最初、光明は戸惑っていたが最後には笑顔を浮かべていた。




葵と司は、葵の完治を待ってまた二人で仕事を始めていた。

司は、樹からの誘いを丁重に断り葵のパートナーで居ることを選んだ。
樹は半分呆れていたが最後は

「仕方ない。でも戻ってきたくなったらいつでも言えよ?」

と言っていた。

それぞれの、日常が始まっていた。



依頼人と会いに行っていた葵がマンションに戻ってきた。

「ただいまぁ~。」

いつも、出迎えてくれる司の姿はない。

「・・・・。」

玄関を上がり、リビングのドアを開ける。

「司?居ないの?」

リビングを見た葵は目を瞬かせた。

「どうしたの?皆揃って?」

そこには、司、樹、神野、光明が居た。

「おかえりーーー!」

テーブルの上には沢山の料理が並んでいる。

「どうしたの?何事!?」

葵が司に聞く。

「まぁまぁ、とりあえず座って?」

葵を椅子に座らせると、樹が言った。

「葵の快気祝いだ!!今日は良い酒飲んで司の旨い料理食うぞ?」

「えぇぇー?」

皆がそれぞれテーブルにつく。

「ていうか、このメンツ・・・良いわけ?樹?」

「今は俺の大事なプライベートだ!何処に誰と居ようととやかく言われる筋合いはないな。」

警察庁の刑事局長とマフィアの総帥が同じテーブルを囲んでいる。

「まぁ、いいなら良いけど、、、。」

「今日は無礼講だ!立場も肩書きも関係ない。ここに居るのは葵の回復を喜んでる人間だけだ!」

樹の音頭で宴会がはじまる。

夜も更け、皆がそれぞれ楽しんでいるなか、葵はベランダに居た。

「何を見てるんだ?」

司が葵に近付いた。

「ん?何となく。」

「そうか・・。」

「皆は?」

「ああ、勝手に盛り上がってる。」

「ふふっ。そっか。」

葵は司の身体にもたれ掛かった。

「私は幸せ者だな。こんな風に皆が集まってくれて。」

「そうだな。」

司はクスリと笑った。

「俺はこの先ずっと葵の側に居る。あいつ等だってそうだ。皆葵の事が大切なんだ。」

「うん。ありがとう。私、日本に来て良かった。司に皆に出会えて幸せだよ?」

葵は司を見上げた。
司は葵の髪に触れ、頬に手を伸ばす。

「ずっと一緒に居よう。葵・・愛してる。」

二人は口づけをかわした。



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