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追跡者
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「アオイ?さっきから同じ所を走っている気がするんだけど?」
「つけられてる。二台後ろの車が帝都海浜公園からずっと付いてきてる。」
「えっ?・・・。」
レオンは然程驚いた様子もない。
葵はレオンをチラッと見た。
「・・・。このまま、ホテルに帰る訳にもいかないか・・。ちょっと飛ばすからしっかり掴まってて!」
葵はアクセルを踏み込んで車と車の間をすり抜けていく。
後続の車も付いてこようとするが、混雑しているのでなかなか追い付けずにいた。
数分後、ルームミラーで後方を確認すると後を付けてきていた車はもういなかった。
「とりあえず、まけたみたい。レオン大丈夫?」
助手席のレオンは至って冷静だった。
「ああ、大丈夫だよアオイ。」
「そう。・・・念の為もう暫くホテルに帰るのはやめておこうか?」
葵は近くの立体駐車場に車を停めた。
運転席から降りると、グーっと伸びをして自動販売機で缶コーヒーを買って戻ってきた。
「お口に合うか解らないけど。」
「ありがとう。」
レオンは葵が差し出した缶コーヒーを受け取った。
「・・・。想定内って感じ?」
「えっ?」
「こうなる事。ただのボディーガードって訳じゃないみたいね?」
「・・・。」
黙り込んでしまうレオンを見てクスッと笑う。
「まぁ、いいわ。最初からそんな気はしてたから。レオンにも色々あるんだろうし。話せるようになったら話して?」
「ごめん。でも、アオイを信用していないって事じゃないんだ。」
「いいのよ、わかってるから。必ず貴方の事は守るから。」
葵がレオンの顔を覗き込むと一瞬金色の瞳が揺らいだ。
********
午前8時、帝都ホテル。
司と樹はレオンの部屋を訪ねていた。
「どういう事ですか!?居ないって!」
樹が従者の一人に詰め寄っていた。
「レオン王子は外出しています。」
「こんな朝早くからですか?」
「ええ。」
「何処に行ったんですかっ?」
「朝日を見に行くと仰ってましたが、何処に行ったかはわかりませんね。」
黙って樹と従者のやり取りを見ていた司が割って入った。
「あなた方がここに居るという事は一人で外出したって事ですか?」
「いいえ。我々の手配したボディーガードの方がご一緒ですので心配はありませんよ。」
「ボディーガードっていっても、所詮は民間の人間でしょう!?安心なんて出来ませんよっ!!何かあったらどうするんです?」
樹が声を荒げた。
しかし、従者達は冷静だ。
「そんな事はありません。大丈夫です。」
「我々よりも信用しているって事ですか?」
「・・・・。」
「とにかく、レオン王子が戻るまで私達も待たせて頂きます!」
「お好きになさってください。」
話が終わると、従者達は各自の仕事をしはじめた。
樹は納得がいかない様子で苛立っていたが司は冷静だった。
「少し落ち着いてください。紅茶でもいかがですか?」
一人の従者がテーブルにティーカップを置いた。
「ありがとうございます。貴方も日本語が堪能なんですね?」
司がソファーに座りながら聞くと、従者はクスクスと笑った。
「ええ、私は日本人ですからね。瀬名瑞希といいます。レオンに日本語を教えたのも私なんですよ。」
「レオン?」
「私とレオンは友人なんです。友人兼日本語教育係として使えてるんですよ。」
「だったら、何故レオン王子が我々の介入を拒むのかも知っているんですよね?何故なんですか?」
「その件に関しては私からお話は出来ませんね。申し訳ありませんが。」
その時、部屋のドアが開きレオンが入ってきた。
「レオンお帰り。遅かったから心配したよ?」
「ミズキ。ごめん、ちょっとしたアクシデントがあってね。」
レオンに続いて女性が入ってきた。
司はその女性を見ると息をのんだ。
公園で見掛けた女性がまさに今目の前に居たからだ。
「貴女は・・・。」
「やっぱり、貴方達は警察関係者だったんですね・・・。」
葵は司を見て言った。
「つけられてる。二台後ろの車が帝都海浜公園からずっと付いてきてる。」
「えっ?・・・。」
レオンは然程驚いた様子もない。
葵はレオンをチラッと見た。
「・・・。このまま、ホテルに帰る訳にもいかないか・・。ちょっと飛ばすからしっかり掴まってて!」
葵はアクセルを踏み込んで車と車の間をすり抜けていく。
後続の車も付いてこようとするが、混雑しているのでなかなか追い付けずにいた。
数分後、ルームミラーで後方を確認すると後を付けてきていた車はもういなかった。
「とりあえず、まけたみたい。レオン大丈夫?」
助手席のレオンは至って冷静だった。
「ああ、大丈夫だよアオイ。」
「そう。・・・念の為もう暫くホテルに帰るのはやめておこうか?」
葵は近くの立体駐車場に車を停めた。
運転席から降りると、グーっと伸びをして自動販売機で缶コーヒーを買って戻ってきた。
「お口に合うか解らないけど。」
「ありがとう。」
レオンは葵が差し出した缶コーヒーを受け取った。
「・・・。想定内って感じ?」
「えっ?」
「こうなる事。ただのボディーガードって訳じゃないみたいね?」
「・・・。」
黙り込んでしまうレオンを見てクスッと笑う。
「まぁ、いいわ。最初からそんな気はしてたから。レオンにも色々あるんだろうし。話せるようになったら話して?」
「ごめん。でも、アオイを信用していないって事じゃないんだ。」
「いいのよ、わかってるから。必ず貴方の事は守るから。」
葵がレオンの顔を覗き込むと一瞬金色の瞳が揺らいだ。
********
午前8時、帝都ホテル。
司と樹はレオンの部屋を訪ねていた。
「どういう事ですか!?居ないって!」
樹が従者の一人に詰め寄っていた。
「レオン王子は外出しています。」
「こんな朝早くからですか?」
「ええ。」
「何処に行ったんですかっ?」
「朝日を見に行くと仰ってましたが、何処に行ったかはわかりませんね。」
黙って樹と従者のやり取りを見ていた司が割って入った。
「あなた方がここに居るという事は一人で外出したって事ですか?」
「いいえ。我々の手配したボディーガードの方がご一緒ですので心配はありませんよ。」
「ボディーガードっていっても、所詮は民間の人間でしょう!?安心なんて出来ませんよっ!!何かあったらどうするんです?」
樹が声を荒げた。
しかし、従者達は冷静だ。
「そんな事はありません。大丈夫です。」
「我々よりも信用しているって事ですか?」
「・・・・。」
「とにかく、レオン王子が戻るまで私達も待たせて頂きます!」
「お好きになさってください。」
話が終わると、従者達は各自の仕事をしはじめた。
樹は納得がいかない様子で苛立っていたが司は冷静だった。
「少し落ち着いてください。紅茶でもいかがですか?」
一人の従者がテーブルにティーカップを置いた。
「ありがとうございます。貴方も日本語が堪能なんですね?」
司がソファーに座りながら聞くと、従者はクスクスと笑った。
「ええ、私は日本人ですからね。瀬名瑞希といいます。レオンに日本語を教えたのも私なんですよ。」
「レオン?」
「私とレオンは友人なんです。友人兼日本語教育係として使えてるんですよ。」
「だったら、何故レオン王子が我々の介入を拒むのかも知っているんですよね?何故なんですか?」
「その件に関しては私からお話は出来ませんね。申し訳ありませんが。」
その時、部屋のドアが開きレオンが入ってきた。
「レオンお帰り。遅かったから心配したよ?」
「ミズキ。ごめん、ちょっとしたアクシデントがあってね。」
レオンに続いて女性が入ってきた。
司はその女性を見ると息をのんだ。
公園で見掛けた女性がまさに今目の前に居たからだ。
「貴女は・・・。」
「やっぱり、貴方達は警察関係者だったんですね・・・。」
葵は司を見て言った。
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