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第4章 このアイテムがすごい!そしてロゼも凄い!

#32 鉄<鋼<魔鉄(越えられない壁)セラミック

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 マーダーグリズリーを倒した事で狼獣人達は熊殺しの英雄だと称賛した。そして俺達を集落にら留めおこうとしていたが、あくまで今現在の俺達の目的地は自由都市エスペラントだ。ここに留まる理由も無い。

「マーダーグリズリーを仕留めた見返りなら一晩だけここに泊まる、そういう事で良いな」

 そう言って寝泊りするだけの時間の滞在となったのである。

 また、仕留めたマーダーグリズリーもこちらの物となった。狩った者が獲物を手にする、当然と言えば当然だが揉めずにすんだのは良かった。

 そう言えば家に入る前に里長と少しだけ話をした。聞けば獣人達はこの集落で自給自足生活をしている。そしてここでは塩など入手出来ない物を手に入れる為に時折エスペラントに行くと言う。狩った獲物の毛皮や牙などを売り、その金で必要な物を買ってくるという。

「人族の…、商人が品物を買い叩くのでな…。印象が良くなかったのじゃ、ましてや商人と聞いてはな…」

 すっかりしおらしくなった里長がそんな事を言っている。しかし、そうだといってこちらが歩み寄ってやる必要は無い。

「そうか。こちらとしては最初から言っている通り集落の中で夜明かしさせてくれりゃそれで良い。あんたらの暮らしの邪魔をするつもりは無いよ」

 そう言って集落の中の空き地にストレージからドームハウスを出して設置した。その光景を見ていた獣人達からどよめきが起こった。

「それじゃ日も暮れたしあれだけの出来事の後だ、休ませてもらう。明日は朝早く出ていくから…、それじゃあな」

 そう言って俺は扉を閉め鍵をかけた。そして戦いの大殊勲、ミニャを一番風呂と決めた。ミニャが出たら次は俺、そして風呂から上がったミニャにロゼの体を拭いてもらうように頼む事も忘れない。さすがに男の俺がロゼの体を拭く訳にはいかないからな、そこでミニャに頼んだという訳だ。

 風呂から上がり俺は二人に尋ねた。

「魚と肉、晩メシはどっちを食べたい?」

「おさかニャッ!!」
「肉」

「ははは、見事にバラバラだな。それなら両方やっちまおう」

 そう言って俺はすでにミニャが解体し切り身にしていた猪肉は生姜焼きのタレで炒め、ストレージに収納してあるサモンはMPマテリアルポイントを1000ポイントを消費したら切り身にする事ができた。どうやらMPマテリアルポイントは加工するのにも使えるようだ。

「美味しいのニャ!」

 ミニャは焼き鮭ならぬ焼きサモンを食べて感動したように叫んだ。

「うーん、箸と米が欲しくなるな。まさに日本食と寸分の違いもない、さすがにシルクハットンのヤツが鮭を真似て創造しただけはあるな」

「…カヨダ、シルクハットンを知っているような口ぶり…」

「ん、ああ…。えーと…」

「安心して良い。私はグランペクトゥから追放された身、それに創造神シルクハットン教はあの国だけのローカル宗教と言って良い。あの国の外に出れば気にもかけない人ばかり」

「確かにニャ~。ボクもグランペクトゥで初めてその名前を聞いたのニャ。生まれ育ったエスペラントでもいろんな宗教の神殿とか教会があるニャんけどシルクハットン教ってのは聞いた事もないニャよ。多分、自由都市広しと言えどもほこらすらないと思うのニャ」

「良くは知らないが創造神シルクハットンっていうのは主神には程遠い下級神のようだ。いわゆる物作りの神みたいな感じか…、だけど世界には魔法があるだろ?他の神々もそうだが、魔法の使い手は魔法の力があれば色々と解決できるんだからそりゃあ道具作りの神様なんて信者は少なくなるだろうな」

「なるほどニャ~、同じ事をするのに道具を持ち運びしてするのと魔力があれば手ぶらでも出来る事…。それなら魔法に頼るかも知れないニャんね」

「私はカヨダの道具の力を身をもって知っているから…」

「ボクもなのニャ!マーダーグリズリーに足をやられて身動きしにくくなった時は正直やられたと覚悟したのニャ」

「ちなみにこの家もその創造神シルクハットンの力を受け継いで創造つくったモンだ。二人が使っている武器もな」

「ニャー!!あの凄い爪の武器はカヨダが作ったものだったんニャね。凄い切れ味だったのニャ、軽かったしあれはなんていう物で出来た武器なのニャ?あ、いや、それよりもマーダーグリズリーの血糊ちのりが付いたからちゃんと手入れしなきゃなのニャ」

「手入れか、大事にしてくれる気持ちは嬉しいがステンレスとセラミックを使ってるからそんなに神経質にならなくて良いぞ」

「すてんれす?せらみっく?」

 聞いた事のない単語にミニャがコテンと首を傾げる。

「ああ。まず手の甲から肘までを守る籠手の部分に使われてるのがステンレスだ。ステンレスはさび無しって意味でな、文字通り錆びない鋼なんだ」

「そ、そ、それって魔鉄なのニャ!」

「まてつ?なんだそれ?」

 今度は俺が首を傾げる番だった。

「ま、魔鉄は鋼のように強靭でオマケに錆びない凄い金属なのニャ!魔法とかと相性も良く高級な武具とかに使われるニャんよ!ダンジョンで見つかったりする以外には高名な錬金術士が偶然生み出したり、熟練のドワーフ鍛治が一生に一回とか二回作り出せるかどうかと言われてるニャんよ!魔鉄の武具を持つ…、剣士の生涯の夢と言う人もいるくらいニャんよ」

「へ、へえ…。そんなに凄いのか…」

 うわ、ヤベえモン作っちまったか…。でも、日本じゃ普通にステンレス包丁って売ってるもんな、しかも安価で…。

「うん、とんでもニャい高値がつくニャ。だからお金に余裕のある貴族でもなきゃ手に入らないニャんよ。でも、そんな貴重な魔鉄を爪の部分にしないのはなんでニャの?」

「ああ、それはなそのセラミック…爪の部分の白い素材だな。それがステンレス…じゃなかった魔鉄か?それより硬く鋭い刃になるからなんだ。確か…ええと…」

 俺は自宅兼店舗、加代田商店に陳列していたセラミック包丁の事を思い出す。確か商品説明には…。

「魔鉄よりはるかに…、何倍もよく切れると聞いたかな」

「とんでもないのニャ。魔鉄よりはるかに切れる切れ味ニャんて物語でもなきゃ出てこないのニャ…」

「ちなみに錆びないからお手入れも簡単、水洗いして柔らかい布で拭くだけでいいんだ」

「もう何も言えないのニャ」

 ミニャが呆れたように言った。

「そう言えばカヨダ、私も武器について相談したい事がある」

「ほうほう、なんだねロゼ君?」

 その夜、俺達の装備についての話は遅くまで続いたのだった。


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