転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第2章 奮闘する王子様

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 三人で、大まかな基本方針を決めた。一つ、太郎は普段のフィリップ通りに振る舞うこと。二つ、常にエドガーかクロードと共に行動すること。三つ、絶対にこの事を口外しないこと。本当は、静養中だとでも言って公務を辞退したかったのだが、
「いや、エカチェリーナ嬢は今、良からぬ噂を立てられているんだ。辞めたほうがいい。」
クロードの指摘で、それは叶わない。
 確かにその通りだ。あの日以来、やれ、エカチェリーナは魔女だの、婚約者に毒を盛った悪女だの、散々な言われようだ。これ以上、分が悪くなるのは、彼女にとっても本望ではない筈だ。
「俺、頑張ってみるよ。」
フィリップの記憶の中で、エカチェリーナはいつも気丈に振る舞っていた。フィリップが公務のために約束をすっぽかしたときも、デートの途中で席を立ったときも、知らない女を、急に紹介してきた時も。少なくとも、彼女のことをこれ以上傷つけてはいけない。そう思った。
 王子の仕事は多岐に渡るが、そのどれもが、会社で言う決裁や会議、接待等だった。ある程度経験もある上、フィリップの臣下達はどの人も優秀らしく、何事もなく日々は過ぎ去る。それに、元々の身分は王子、上には王もいる。結局、重要施策の最終的な決定は、貴族会との議決の上、王が決定する流れだった。
「政治家ってすげえなあ……」
王の見習いとして、会議への参加、時に、王に意見を求められることもある。いかに、自分が小さな世界で生きているのか、身に沁みる。
 本人の記憶や、優秀な二人の共犯者の手助けを得て、何とかやり過ごす中、一つだけ忘れてはならないことがある。エカチェリーナの事だ。
「なあ、一つ聞いていいか?」
太郎は、エドガーとクロードの方を見る。
「何で……」
必要なことを聞こう。そう思った時、
「フィリップ、ひどいよお!」
ノックも無しに入ってきたのは、またあの女ーーセイラだ。
「もう一週間も私の部屋に来てくれないだなんて……変だよう……」
ぷっくりと頬を膨らませるセイラ。
「すまない。忙しかったんだ。後にしてくれ……」
『ごめん、お前のことすっかり忘れてたわ……』と言いかけた言葉をぐっと呑み込み、至って冷静に、フィリップらしくクールに振る舞う。
「疲れてるんだよね?」
不安げに聞いてくるセイラ。ああそうか、コイツは確か、彼女には笑顔を見せるんだっけ。
「……そうだよ。」
引き攣る笑顔を、セイラに向ける。
「……ごめんね、また来るね!」
何故か青褪めながらその場を去っていくセイラに一安心していると、親友二人は真っ赤になって、あからさまに爆笑している。
 取り敢えず、表情筋が、痛い。
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