転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第2章 奮闘する王子様

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 眠りながら思う。目が覚めたら、いつもの天井が見えるんじゃないかって。華美でも豪華でもない、ただの質素な部屋。また始まる労働の日々。減らない仕事、帰れない家。
『佐藤! お前はまたっ!』
 止まらない叱責。いつも決まって犯人にされる。理由は簡単だ。俺に振られた業務の話だから。データが消えた、書類が消えた。心当たりが無くても、始末書を書くのは決まって俺の仕事。
『佐藤くん、ちゃんと訴えなきゃ、ダメだよ?』 
 心の支えは、お守り代わりにボイスレコーダーをくれた初恋の女の子、それと、
『飲みに行くぞ。』
 いつも気にかけてくれる、大学時代の同級生だけだった。
 暗闇の中で、誰かが呼ぶ声がする。
『……ウ……ん』
『……り……ろ……』
 段々と、意識が現実に戻っていく感覚。
「タロウさん!」
 水底から、身体が引き上げられるように。
「しっかりしろ!」
 必死な呼び声が、確かに聞こえる。
「エドガー……クロード……?」
 視界の中で、二人の親友の顔がぼやけている。
「……よかった……」
 安堵のため息を漏らすエドガーと、黙って腕を組んだままのクロードは、顔を逸らす。
「黙ってどこかに行っちゃうんじゃないかって……」
 エドガーは、涙声で言う。クロードの肩は、少しだけ震えている。
「でもさ、それってフィリップが帰ってくるってことなんじゃ……」
 エドガーは目を見開いて、そのまま沈黙する。そうなのだ、これは元々フィリップの体。きっと、いつかは還さないといけないものなのた。
「……そうだな。」
 クロードは、背を向けたまま頷く。その声は、少しだけ震えていた。
 医師の見立てでは、過労だそうだ。その辺りは、元の世界とあまり違いがない。仕事ができるとは言ってみたものの、医師と二人の親友は、頑なに仕事に戻ることを許さなかったのだ。
「フィリップ、大丈夫……?」
もちろん、セイラも見舞いに来るが、
「どうも調子が悪いんだ。一時放っておいてくれないか。」
取り敢えず、突き放しておく。キンキンした声を聞きたくないし、何より、
「……何であの娘を拒絶しようとすると、こんなに頭が痛いんだろう。」
謎の頭痛に襲われるからだ。
 数日後、経過観察はもういいだろうと、ベッドを出る。エカチェリーナに関する心無い噂が耳に入ったからだ。呪いだの、何だの。下らないとは思いつつ、少しでも彼女の精神的な負担を軽減してやりたいと思った。そして、思い立つ。
「……エカチェリーナ嬢に、会いに行ってみるよ。」
「……正気ですか?」
決断を隣で聞いていたエドガーは、思わず目を見開く。無理もない。拒絶されるに決まっているから。
「うん。」
それでも、本人に聞かなきゃいけない。本当に、その事実があるったのかを。
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