転生先が悪役令嬢モノの王子様だった件。

釜借 イサキ

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第2章 奮闘する王子様

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 応接セットはとても豪華で、取引先の会社でも見たことがない。当たり前だ。自分の相手は精々一つの会社の重役。この人たちは違う。一国を担う貴族。地位も責任も、その全てが、違うのだ。
 暑くもないのに、汗が出る。紅茶を飲んでも、口が渇く。商談ならば、間違いなく失敗だろう。でも、
「大事なお嬢さんを預かっていたのに、他の女に現を抜かしてしまい」
 何に対するモノなのか、きちんと明示する。謝罪の基本だ。
『多分、家の娘はモノじゃないって怒られると思います。』
 エドガーの助言を受け、手土産は敢えて用意しなかった。
「本当に、申し訳ありませんでした。」
 腰を90度に折り曲げる。最敬礼は、この世界でも有効な謝罪の手段らしい。隣に座ったエドガーは、その様子を静観している。
 この身体の主がどう思っていようが知ったことじゃない。悪いものは悪いのだ。政略結婚が、どれだけ大変なものなのか、それこそ一般市民の自分には想像もつかない。けれど、事実、その女性を裏切った上、あまつさえ、証拠不十分の罪状により、大衆の前で晒し上げるーー同じ男としても許せない。罪状については確定していないので、最低限の事実だけ明示する。
「それで王子、いらっしゃったのは、それだけの為ですかな?」
 やはり、公爵は食えない人だ。謝罪を受け取るでも、拒絶するでもない。その先の思惑を計っているのだろう。
「いいえ、実は。」
 こういう時、取り繕うのは最悪手だ。
「もう一度、エカチェリーナ嬢にお会いできないかと。」
 再度、怒れる父親の目を見据える。こういう時、目を合わせられなければ、きっと同じテーブルにすら上がれない。
「……」
 公爵は、それに沈黙を返す。良いか悪いか、その表情からは一切読み取ることができない。
「……お父様」
 ノックの後、公爵の背後にあるドアから顔を覗かせたのは、他でもない、フィリップの婚約者。
「私、そのお方とお話したいです。」
 以前よりも少しだけ丸みを帯びた、エカチェリーナその人だった。
 結局、完全な信頼は得られなかったらしく、公爵、エカチェリーナ、エドガー、そしてフィリップこと太郎の四名でテーブルを囲む。
「まずは、他の女に……」
立ち上がろうとする太郎を、
「謝罪は結構です。」
エカチェリーナは軽く制する。
「……ああ……」
気まずくなって座り直す。
「そして、本題に入りましょう?」
静かに言うエカチェリーナの方を改めて見る。そこには勝ち気に微笑む、気丈な女性が座っている。ガラス玉のように美しい2つの目が、妖艶にこちらを見ていた。
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