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ドンパチ終わって日が暮れて
死者四名、重傷者八名、軽傷者十二名を出した銃撃戦が終わり、ユンたちは後始末に入った。
鑑識係と共に家中を見回って、少しでも証拠になりそうなものを片っ端から押収していくことになった。
ユンはまず、例の地下室をキンと共にチェックしていた。
「ん?おい。」
ベッドの下に引き出しがあった。開けてみると、大量のアルバムが収まっていた。
アルバムを一冊手に取った。表紙には1967年とある。
開いて中身を見てみると…。
「ひでぇ…。」
裸の子供の写真ばかり貼られていた。年齢はみんな五、六歳ぐらいに見えた。
彼らの背中にはいずれも縦長のあざが見られた。
「ん?」
ユンはある写真が目に留まった。女の子が映っていた。唇がやや厚めな顔だった。
髪は長めで、やはり服を着ておらず、背中にはかなりの痣があった。
「…?いや、気のせいか。」
「こっちのアルバムは…1963年だな。」
今度はキンが別のアルバムの一冊を手に取った。
「どれどれ…。」
ユンが受け取る。
1ページずつ開いてさっと見ていく。この年は男の子ばかり集められたようだ。
中でも酷い目に遭わされている子供がいた。彼は体中を真っ赤なロープで縛られていた。
別の写真では背中から血を流していた。この男の子は痣が特に酷かった。
「見てられないな…。」
「ああ…。」
「レオンによると、韓彥英は23年前がどうだとか言っていたんだよな?するとこの子が…。」
「まだ分からん。」
「こっちは…。」
ティンの方は何かのファイルを手にしていた。開くと、書類がびっしり綴られていた。
「えーと…1979年6月1日…フィリピンから真珠300kg。取引相手は…ガルシア商店。」
人身売買の隠語だとすぐに分かった。フィリピンルートから三人買ったということだろう。
「こっちのファイルは…。」
同じように書類を綴ったファイルだったが、こちらは何かを売ったという記録内容だった。
「台湾産サンゴのネックレスお買い上げ…30万ドルか。」
台湾から連れてこられた子を売ったという事だろう。
「ん??この時の顧客は…羅東衛?」
「羅東衛?」
「ほら、二か月前に襲われて、撃ち殺された時計店の店主だよ…。」
後始末を終え、灣仔署に戻ってきた時はもう夕方だった。
現場にいた記者たちを振り切って帰ってきたと思ったら、今度は駐車場で記者団に囲まれた。
「周Sir、強盗事件の被害者宅でなぜ銃撃戦が?」
「死んだ貴金属店の経営者というのは黒社会の人間なんですか?だから武装した連中が雇われていたんですか?」
「今回の事件は単なる強盗ではなく、黒社会内の抗争という可能性もあるのですか?」
質問攻めは絶え間なく続いた。
「公式発表を待ってくれよ…。」
「周Sir!」
記者たちはしつこかった。
署内に入っても二階に上がっても付いてきた。
「ちょっと、答えてくださいよ。飛虎隊まで出動する事態になったんでしょう?」
「周Sir、おたくらがあの屋敷で何かこそこそ嗅ぎまわっていて、そこから銃撃戦に発展したという情報も入っているんですが?」
「だから…。」
「あ、張Sir.」
張警司がズカズカと歩いてくるのが見えた。
ユンは身構えた。
「張Sir、どうなんですか?今回の銃撃戦は周刑事の…。」
記者たちが駆け寄ろうとした…が。
「搞錯呀!!!」
記者たちも近くにいた署員たちも凍り付いた。
「この大馬鹿脳筋ドンパチキチガイが!来い!」
張はユンの襟を握り、事務室に引きずり込んだ。
「また勝手に行動しただろ!」
警司は椅子にドカッと座った。
「Yes,Sir.」
「何のためにSDUを呼んだと思っているんだ!?オマケに廃車同然とはいえ覆面車までオシャカにしおって…。」
「Sorry,Sir.」
「っ…いいか、ユン。」
警司は落ち着きを取り戻した。
「今度こそお前をクビにしようかと思っていたところでだな、李やレオンが説得してきたよ。
お前のおかげで手こずっていた突入作戦がうまくいった面もあるので、勘弁してやってくれと。
まぁ今日のところは大目に見る。だが、これ以上やらかしたら承知せんぞ、このバカタレ!!!」
「ハッ!Thank you ,Sir!」
「…今日はもういい。報告書を書いたらもう家に帰れ!!」
「え…いや、でも取り調べが…。」
「参加しなくてもいいから今日はさっさと帰れ!!いいな?」
「…Yes,Sir…」
ユンはすぐに部屋から出てきた。
「え?もう終わり?」
「…李やレオンが口添えしたから、今日は勘弁してやるから家に帰れとさ。はぁ…。」
「それで終わり?」
信じられない、もっと絞られると思ったのに…。
「はぁ…報告書さっさと書かねぇと・・・。」
ユンはとぼとぼ去っていった。
記者たちはなおも追おうとしたが…。
「あー記者の諸君!」
張が部屋から出てきた。
「公式会見は今から10分後に行う。それまで他の署員を追い回さないように。過剰な取材を行った場合、警察を代表して社の方に抗議する。いいな?」
「…はい…。」
記者たちはすごすご引き下がっていった。
「はぁ…いつまで突っ立っている。取調べに行け。」
「Yes,Sir…。」
「…あ、キン、君は話がある。」
「は?…はい。先行ってて。」
「ああ…。」
キンは事務室に入った。
「話というと…例の件ですか?」
「ああ…悪いが、見送りだ。」
「え?」
「君はもう少し残ってくれ。」
「え?どうしてですか?自分は…。」
「言いたいことは分かっている。」
張の顔は先ほどとは大違いで穏やかだった。
「先月の一件。先にガソリンスタンドに突入したのはユンではなく君だった。そして君は僅か一分間とはいえ人質にされ、ユンがそれを救出した。その代償としてガソリンスタンド一軒を丸焼きにしたが。」
「…。」
「君はこのところポカが多い。聴取の不手際、拳銃の暴発…だが、それは本当にミスか?」
「!」
キンは嫌な予感に包まれた。
「キン…君がなぜあんな…わざとらしいミスを繰り返して評判を下げるような真似をしてきたのか、その理由もちゃんとわかっている。まだあれを気にしているんだろう?」
「…。」
「辛い気持ちは分かるが、あれは事故だった。お前が悩む必要はない。
それにこのところうちは人手不足だ。お前に抜けられたら困る。」
「他の部署から誰か呼べばいいじゃないですか。」
納得いかず、という感情をさらけ出した。
「そう言うな。ユン、ティン、それにお前はこの署の桃園兄弟と呼ばれているんだぞ。
それだけみんな期待しているんだ。早まるんじゃない。」
「それは買い被りです。」
「買い被りじゃない。お前があの生き残った客の女性に付き添おうとした事情も知っている。
お前さんは自分のやり方でやってもいいんだ。だから辞めるな。」
「何言うんです。ユンには厳しいくせに。」
「あいつは放っておけば町を破壊しかねない。それにストップをかける為にもお前さんやティンが必要なんだ。」
「…。」
「この話はもう終わりだ。さ、取り調べに行け。」
「…。」
中環にあるジャズバー・「ジョンズ・クラブ」。
バンドが陽気でゆっくりとした曲を奏でるのを横目に、ユンは一人を酒を呷っていた。
「でぇ…もう一杯。」
「はいよ。」
マスターのジョンがグラス半分にテキーラを注いだ。続いて炭酸水を注ぐ。
「どうも。」
ユンはグラスにハンカチをかけて握り、カウンターに叩きつけた。
シュワシュワという音がして、グラスは泡であふれかえった。
ユンはそれをまた一気飲みした。
「元気出せよ、ユン。」
ジョンがユンの肩を叩いた。
「警司だって、ああ見えてお前に目をかけているんだ。そうクサクサするな。
お前は確かにちょっとやり方が乱暴だが、1セントも賄賂を貰ったことがない。そこが昔の俺達と違う。」
ジョンもかつては刑事だった。
礼儀正しく、後輩の面倒見もよく、ユンたちも慕っていた。
しかし、所属していた部署の上司が三合会と癒着していたのを廉政公署(※1)に密告した。
それ以来同じ部署の同僚から白い目で見られるようになり、警察を辞めた。
退職後は元警官や更生を目指す前科者などを雇ったりしつつ、この店を切り盛りしている。
「明日になんてすぐに来る。今夜はゆっくり休めばいい。だから…その辺にしろ。
ここの酒全部飲み乾されて店潰されちゃかなわん。」
「對唔住…。」
ユンはレジに向かった。財布からドル札を数枚取り出し、レジ係に渡した。
小銭を貰い、ポケットに突っ込みながら店を出た。
「ホンによろしくな!」
「ああ…。」
灣仔署・取調室の一つ
「いつまで障害者の真似している気だ?」
部屋の真ん中に机が置かれ、その前に逮捕された用心棒の一人が座っている。
阿繼と呼ばれていた男だ。
突入作戦の際、必死に抵抗しようとしたものの、フラッシュバン攻撃でなすすべなく捕らえられていた。
彼を四人の刑事が囲んでいた。一人がキン。残りはパッキーたちOCTBの刑事だ。
「ほら、さっさと言ってくれよ。なぜ韓彥英は、レオンたちを殺し屋と勘違いしたんだ?
韓彪は誰に狙われていたんだ?答えろよ。」
阿繼と向かい合っていたパッキーが、灰皿をペンでコンコン叩いた。
阿繼は無表情・無口のままだった。
「…チッ。」
パッキーはキンの方を向いた。
「ウェイキン。電話帳持ってこい。」
「電話帳?」
嫌な予感が頭をよぎった。
「電話帳ぐらい持って来れるだろ?」
「何に使うつもりだ?」
「…何でもいいだろ。持ってこい。」
「…。」
渋々取調室を出た。
出ざまにパッキーの言葉が続いた。
「エリック、お前は装備係からアレ持ってこい。」
電話帳を取って戻ると、取調室が何やら騒がしくなっていた。
ドアを開けると…
「オラオラオラオラ…。」
阿繼にパッキーが往復ビンタを食らわしていた。
「パッキー哥、よせよ。」
「そうだな…。」
ビンタをやめた。
「お楽しみは取っておかないとな。」
「…お楽しみ?それって…。」
「お待たせ。」
エリックと呼ばれていた、筋肉質の若い刑事が入ってきた。柄の長いハンマーを抱えて。
「!?…まだその手を使っているのか?」
キンは戦慄するというよりは呆れていた。
「取調室でハンマーを見るのは、4年前が最後だったんだけど?」
「キン。用心棒ってのは強情な人種なんだぜ。これぐらいしないと素直に吐いちゃくれまい。さぁ…。」
パッキーが電話帳をひったくり、阿繼の頭に押さえつけた。
流石の阿繼も顔がひきつるのが分かった。彼は電話帳を払いのけようとした…が。
「おい、キングマン。」
残る一人が阿繼の両足に手錠をかけ、椅子につないだ。
更に手を後へねじり、押さえつけた。
阿繼はもがいたが、ダメ押しにパッキーが足を踏みつけた。
「エリック、外すなよ。絶対外すなよ。」
「任しといてくださいって。」
「お、おい…。」
キンは止めようかどうか迷った。
香港警察では昔から拷問めいた取調べが横行していた。
裸にひん剥いたり、電話帳をクッションにして殴ったり蹴ったり、ウィスキーで濡らしたタオルで顔を塞いであやうく窒息死させかけた事もあった。
最近では廉政公署の監視の目が厳しくなり、こうしたことは行われなくなってきた。
大抵の容疑者は減刑や釈放を餌にすれば言うことを聞いてくれる。
ただし、阿繼のように何で釣ろうとしても頑として聞かない者もいる。
「キン、止めないよな?」
「…。」
キンは黙って取調室から出た。
「唔…唔好啊!(よ、よせ!)」
背後で阿繼の声が聞こえた。
「唔…唔好啊ーーー!(や、やめろーー!)」
ボン!!!!!
その後、ドアの向こうで、ドサッと言う音が聞こえた。
九龍半島側・ 紅磡
香港島から海底トンネルを抜けてきた二階建てバス群は料金所前に集結し、そこからまたそれぞれの目的地へ向かうことになる。
ユンが乗ったバスは最初のインターチェンジから左へと進む。
しばらくすると西九龍高架道路が見えてきたがそちらではなく、加士居道の方へ進んだ。バスはやがて左にそれ、佐敦道へ。
ユンは彌敦道に入る直前のバス停で降りた。
酔いは醒めていた。バスに乗る前、酔っぱらって皇后像広場に迷い込んで噴水に落ちたせいだ。
その足で彌敦道へ出る。ここは香港の中でも店舗、レストランが特に密集する一大繁華街で「ゴールデン・マイル」とも呼ばれている。
雑踏を何度か搔き分けつつ、その足で5分ほど歩き、目当ての場所に着いた。
一軒のビル。他と同じようにネオンと看板でけばけばしく飾られている。
その多数の看板の中に「クラブ・梅」の名があった。
ビルの入口を見ると、そこにも「クラブ・梅」の看板。このビルの一階(※2)で営業していることが記されている。
階段を上り、一階へ上がると、すぐそこに「梅」があった。
用心棒と思われるごついドアマンが二人、ガラス戸の両脇に立っていた。
一人は178cmくらいの長身で、角顔にアーモンド形の目、小さい鼻に中くらいの口。
もう一人は190cmくらいと更に長身で、顔中に筋が入った厳つい面構えだった。
「やぁ、ボルト、アンペル。」
「当店をご利用ですか?」
ドスの効いた厳つい声でボルト-190cmくらいの方-が答えた。
「いや…今夜はもう充分飲んできた。実は海華にちょっと聞きたいことがあってね…。」
「そうですか…しかしそろそろ例の時間です。」
「待つさ。時間はかかるまい。」
「じゃどうぞ。」
「ごゆっくり、周Sir。」
ガラス戸が開けられ、ユンは通された。
店内はかなり盛り上がっている。あるテーブルからは中年らしい男が馬鹿みたいな笑い声を上げ、またあるテーブルでは男女が手拍子を叩いては酒を飲み干す仲間を囃していた。
ユンは彼らを横目に、奥にあるステージの方を見た。
アフロヘアのバンドが赤いカーテンを背にし、サックスやドラムを奏でていた…と。
「御越しの皆さん、お楽しみいただけているでしょうか?」
ステージ中央に、マイクを持った野暮ったい見た目の小男が現れた。
「少しでも皆様を盛り上げるため、今夜もこの時間がやってまいりました。当店のマダム、梅海華による歌唱、ゆっくりと聴いてくださいませ。曲は『問我』です。」
小男が立ち去ると同時に方々からパチパチという音が聞こえ、バンドが別の曲を演奏し始めた。
そのタイミングでカーテンの陰から女が現れた。
半開きの目に小さな鼻、厚めの唇…やぼったく見えてどこか色気の感じられる顔立ちだった。
桃色の花柄のチャイナドレスに身を包んだ彼女は、堂々とした態度でステージ中央に立ち、マイクをこちらに向けて語り始めた。
問我歡呼聲有幾多 問我悲哭聲有幾多
(どれだけ喜びの声があり、どれだけ悲しみの声があり)
我如何 能夠 一一 去數清楚
(どうやったらそれを一つ一つ数えられるか自分に問うの)
問我點解會高興 究竟點解要苦楚
(なぜ幸せなのか、なぜ惨めなのか?と自分に問い、)
我笑住 回答 講一聲 我係我
(ただ笑って答えるだけ。私は私だからと)
無論我有百般對 或者千般錯 全心去承受結果
(自分がどれだけ正しくても、どれだけ間違っていようと、心を込めて結果を受け止めよう)
面對世界一切 那怕會如何 全心保存真的我
(世の中のあらゆることに直面しても、どんなことがあっても、本当の自分を貫いていこう)
問我得失有幾多 其實得失不必清楚
(どれだけのものを得て、どれだけのものを失ったか、知る必要はないけど、)
我但求 能夠 一一 去數清楚
(それでも一つ一つ数えられるようになりたい)
願我一生去到終結 無論歷盡幾許風波
(幾つもの荒れ狂う波を乗り越えて、人生の終わりまで行きたいと願う)
我仍然 能夠 講一聲 我係我
(これだけはまだ言える。私は私なんだと。)
無論我有百般對 或者千般錯 全心去承受結果
(自分がどれだけ正しくても、どれだけ間違っていようと、心を込めて結果を受け止めよう)
面對世界一切 那怕會如何 全心保存真的我
(世の中のあらゆることに直面しても、どんなことがあっても、本当の自分を貫いていこう)
問我歡呼聲有幾多 問我悲哭聲有幾多
(どれだけ喜びの声があり、どれだけ悲しみの声があり)
我如何 能夠 一一 去數清楚
(どうやったらそれを一つ一つ数えられるか自分に問うの)
問我點解會高興 究竟點解要苦楚
(なぜ幸せなのか、なぜ惨めなのか?と自分に問い、)
我笑住 回答 講一聲 我係我
(ただ笑って答えるだけ。私は私だからと)
笑住回答 講一聲 我係我…
(笑って答えるの。私は私だと…)
彼女が歌い終わる瞬間、再びパチパチという音が店内中に鳴り響いた。
「多謝…。」
彼女は照れ臭そうな笑顔を見せると、カーテンの向こうへ消えていった。
ユンはその後を追った。
「やぁ、海華。」
「ユン…また来たの。」
彼女は驚きもしていなかった。
「今日は何の情報が欲しいの?」
彼女は椅子に座って足を組み、テーブルに置いてあった煙草を一本取り、火を付けた。
「…深水灣道に住んでいた韓彪って知っているか?」
「韓彪…?」
海華は一瞬、動きを止めた。表情が固まっているように見えた。
「ああ、銅鑼湾で武装強盗に殺された貴金属商ね。」
「今日、そいつの家で派手にやってね…。」
「銃撃戦ね?」
「ああ…奴の女房と用心棒が何を勘違いしたか、いきなり俺たちに撃ってきた。その原因を調べているんだ。韓彪は…約23年間、子供の売買と監禁と虐待を繰り返していた。」
海華の顔にしわが寄った。
「それでな…。」
ユンは胸ポケットから写真2枚を取り出した。
例の1963年と67年に監禁されていた子供の写真。押収したアルバムから剥がしてきたのだ。
それを海華に渡した。
「あの屋敷のアルバムから見つけてきたんだ。こっちの男の子は23年前」
海華は黙って写真を見つめていたが…。
「帰って。」
写真を突き返した。
彼女の顔は青ざめ、目はカッと見開き、頬がぴくぴくしていた。
「海華…。」
「帰ってちょうだい。」
「…分かった。」
ユンは写真をポケットに収め、すごすごとメインフロアへ戻っていった。
「もうお帰りで?」
店から出る時、アンペルが声をかけてきた。
「今日はえらく不機嫌でね。」
「そうですか…実は海華様、このところ、いろいろ悩んでまして…。」
「原因は?」
「それは私共の口からは…。」
アンペルは人差し指をクイクイと動かした。
「ただ、問題はすぐに解決しやすよ。きっと。」
「そうか…それじゃ。」
ユンは、階段を降りて…行こうとしたが、
「そういえば、ボルト。」
「ん?」
「お前、最近おふくろさんと会っているか?」
「…。」
ボルトはうつむいて上目にユンを見た。
「…会ってないようだな?たまには帰って顔見せてやれよ。」
「私もボルト…兄貴も仕事が忙くて…。」
アンペルが口を挟んできた。
「海華に頼めば休暇ぐらい幾らでも貰えるだろ。」
「でも…。」
「とにかく。」
ボルトの肩を軽く叩いた。
「おふくろさんに元気な所見せてやるんだぞ。いいな?」
「…はい。」
「よし。じゃあな。」
「クラブ・梅」を出た後、ユンは啟德方面へ向かうミニバスに乗った。
バスは佐敦道、加士居道、漆咸道を経て、馬頭涌道を進む。
ユンはバスの運転手に頼み、木廠街へ曲がらせた。しばらくするとバスは馬頭角に差し掛かる。
ここには十三街と呼ばれる市街地がある。その名の通り、13本の通りから成るエリアで、北側に木廠街、南側に馬頭角道、そしてその2つの間に11本の通りが垂直に走っている。
ユンは燕安街への入り口で止めてもらい、代金を払って降りた。
この十三街にはもう一つ大きな特徴がある。それは、自動車の修理工場や部品販売店などが至る所に存在することだ。
その中の一つに金輪車房があった。
十三街の整備工場のガレージはどれも小さくて狭く、どう頑張ってもせいぜい3台程度の自動車しか入れることができない。
そんな狭いガレージ内で、金輪車房の経営者・曾雄は、ヤマハのオートバイXV700ビラーゴを前に手を動かしていた。
「ホンさん。」
「おお、ユンか。どこかに逃げ出したと思ったぞ…冗談だが。」
「ホンさん…そいつ、どんな具合だ。」
「そうだな…あと1日必要ってとこかな…。」
「そうか…。」
ホンは作業をやめ、ガレージの外に出て、シャッターを閉める。
「食事作ろうか?」
「外で食ってきた。今日はもうクタクタだ。」
「そうかい。」
ホンはビルの入り口の鉄門の鍵を開けた。
十三街では、ガレージで働く若者が住人を襲撃する事件が70年代から相次いでいた。そのため、ビルの入り口にこうした鉄門を設置することで、ならず者の侵入を防いでいた。
扉を開け、内側から鍵をかけてから、階段を上がる。
ホンの部屋はガレージの真上。ユンもそこに居候して、たまにガレージで仕事を手伝っている。
香港のアパートのドアは二重構造になっているものが多い。
ホンが外側の鉄製ドアの鍵を解除して開け、次に普通のドアを同じ要領で開け、中へ入る。
ホンの部屋は寝室2つとリビング兼ダイニング、キッチン、シャワールーム、トイレなどで構成されている。
前は二人とも同じ寝室を使っていたが、ホモ疑惑をかけられそうになったので、今は別々の部屋にベッドを置いている。
ユンは自分の寝室のドアを開ける。狭い部屋には小さなデスクとキャビネット、ベッド、それに5,6個の段ボールが置かれていた。タンスはなく、着替えの服は無造作に物干しの上に置かれ、下着は麻編みの籠に放り込んであった。デスクの上にはモデルガンやプラモデルの箱、雑誌やその他もろもろが山積みになっていた。
ユンはシャツとズボンを脱ぎ、まるめて籠の一つに放り投げた。明日洗濯に出すつもりだった。
ベルトは物干しにひっかけておいた。
後は靴を脱いでベッドに飛び込み、ゴロンと仰向けになった。
「早唞(おやすみ)、ユン。」
「早唞、ホンさん…。」
睡魔に襲われる刹那、海華の事を思い出していた…。
海華と出会ったのは4年前だ。
彼女は孤児だった。どこで生まれたのかは本人もよく分からないという。
5歳の時、梅家の夫婦に拾われ、育てられた。
養父は「クラブ・梅」の創設者だったが、ヤクザの抗争に巻き込まれ殺された。
彼女の叔父が三合会系の組長で、とばっちりの報復を受けたのだ。
店は他人に権利が渡るかと思われたが、意外にも海華が継いだ。
その時の彼女はわずか十九歳だった。叔父が後見人として後押ししたのだ。
ドアマン兼用心棒のアンペルとボルトも、元は彼女の叔父の組織の若衆だった。二人とも離島の出身で、実家に母と兄弟を残して九龍にやって来ていたところ、組織に入った。
海華の叔父は、兄弟の報復のため、アンペルたち手下を使って、犯人を探し出して見せしめに殺そうと目論んだ。
しかし、あと一歩のところでユンが捕まえ、犯人は裁判所送りになった。
逮捕した直後、叔父はユンに、犯人を連れ出して引き渡せ、そうすれば金はたんまりやると言ってきた。一回だけではなく何度もだ。だが、ユンは無視した。
叔父は終いには腹を立て、連れ出さなければユンを殺すとまで言ってきた。
だがユンは一歩も譲らなかった。「俺は自分の仕事を果たす。」と言い返しただけだった。
犯人の有罪が確定したその日、海華がユンを訪ねてきた。
彼女は叔父たちの非礼を謝り、お詫びと犯人を逮捕したお礼を兼ね、ユンに情報を持ってきた。
香港から日本へ麻薬を密輸している組織の情報だった。
ユンは最初拒んだが、後にその組織が絡んだ殺人事件の捜査に参加することになった。
捜査は難航し、やむをえず海華の情報に頼ることになった。
結果は大当たりで、麻薬組織を一つ潰すことに成功した。
それ以来、ユンはたびたび海華の情報を頼りにしている。
ユンの他にも彼女を情報源にしている刑事がいると聞いていたが、それが誰なのかは知らなかった。
彼女には、情報屋のようなことはもうやめるようにと何度か言っているのだが、結局持ちつ持たれつで現在に至っている。
いつまでこの関係が続くのか不安だった。というのも、海華が叔父の組織を継ぐ可能性が囁かれているからである。
彼女は若いながらカリスマ性があり、人を束ねるのに長けている。
そして彼女の叔父の組は、香港島への勢力拡大を狙っているという噂もあった。
もし彼女が組を継ぎ、香港島で抗争が起きたら…。
ユンはそこで考えるのをやめることにした。今は頭も体も休めて、明日を待とう。
一方。香港島北東部に位置する太古城。
香港島の中でも特に人口が集中する住宅街にして商業地区で、高層団地が連立している。
団地は形状によって、翠湖臺、高山臺、金殿臺、安盛臺、海景花園など複数のグループに分けられている。
その中の一つのエレベーター内にキンはいた。
あれから結局、仮病を使って早退した。我ながら陳腐な手だとは思っているが、相手がどんな悪党であっても拷問に加担したくなかった。今頃灣仔署は阿鼻叫喚だろう。
ぼんやりしているうちにエレベーターが動きを止める。「チン」という音が鳴り、扉が開く。
キンは少しふらつきながらエレベーターを降り、自分の部屋の前に行き、鍵を開ける。
部屋に入り、さっさと明かりをつける。
キンの住んでいる部屋は、十三街のアパートより少し広い。
寝室二つにリビングとダイニング、それにトイレ付きのバスルームとキッチンという構成だ。
ダイニングのテーブルの上に紙切れが置いてある。
手に取って読むと…
「哥哥(お兄さんへ)
李Sir受命工作,今晚不能回家(李Sirから仕事を任され、今夜は帰れません)
冰箱里有晚餐,請加熱食(冷蔵庫に夕飯があるので温めてください)
筠」
冷蔵庫の中を見ると、発砲スチロールの箱二つとカップが置かれていた。
箱を開けると、一つはご飯、もう一つは野菜炒め。カップの中身はスープのようだ。
まとめて電子レンジに入れ、2分ほど温める。
2分経ったらまとめて取り出し、むさぼり食った。
簡素な食事を終えたら、ベッドルームへ。ユンの部屋と違い、片付いていてすっきりしている。
ベッドに寝転がり、電灯を見つめる。これからどうしようかと思った。本当は昨年度中の人事異動を望んでいた。それが叶わなかったので、張警司の言うように小細工を重ねていた。だが、それも徒労に終わった。
いっそ捜査で手抜きを…思い切ってサボってやろうか…と思った時、包珠玲…チュの顔がふと脳裏をよぎった。
彼女の家族の無念を無視して、自分のことばかり考えている。
それでいいのか?キンは少し情けない気持ちになった。
いつから自分はこんな奴になったのか…キンは考えるのを一旦そこでやめた。
今日はもう寝よう。布団を被り、枕に頭をぐりぐり押し当てつつ目を瞑った。
だが、チュの顔はしばらく目に映ったまま消えなかった。
(※1)ICAC。警察などの公務員の腐敗を取り締まる目的で1974年に作られた外部組織。70年代は警察官に対する取り締まりが厳しかった。
(※2)英領時代の香港では、日本でいう「一階」部分は「地下」(グラウンドフロア)扱い。
よって、香港の「一階」は「二階」になる。
鑑識係と共に家中を見回って、少しでも証拠になりそうなものを片っ端から押収していくことになった。
ユンはまず、例の地下室をキンと共にチェックしていた。
「ん?おい。」
ベッドの下に引き出しがあった。開けてみると、大量のアルバムが収まっていた。
アルバムを一冊手に取った。表紙には1967年とある。
開いて中身を見てみると…。
「ひでぇ…。」
裸の子供の写真ばかり貼られていた。年齢はみんな五、六歳ぐらいに見えた。
彼らの背中にはいずれも縦長のあざが見られた。
「ん?」
ユンはある写真が目に留まった。女の子が映っていた。唇がやや厚めな顔だった。
髪は長めで、やはり服を着ておらず、背中にはかなりの痣があった。
「…?いや、気のせいか。」
「こっちのアルバムは…1963年だな。」
今度はキンが別のアルバムの一冊を手に取った。
「どれどれ…。」
ユンが受け取る。
1ページずつ開いてさっと見ていく。この年は男の子ばかり集められたようだ。
中でも酷い目に遭わされている子供がいた。彼は体中を真っ赤なロープで縛られていた。
別の写真では背中から血を流していた。この男の子は痣が特に酷かった。
「見てられないな…。」
「ああ…。」
「レオンによると、韓彥英は23年前がどうだとか言っていたんだよな?するとこの子が…。」
「まだ分からん。」
「こっちは…。」
ティンの方は何かのファイルを手にしていた。開くと、書類がびっしり綴られていた。
「えーと…1979年6月1日…フィリピンから真珠300kg。取引相手は…ガルシア商店。」
人身売買の隠語だとすぐに分かった。フィリピンルートから三人買ったということだろう。
「こっちのファイルは…。」
同じように書類を綴ったファイルだったが、こちらは何かを売ったという記録内容だった。
「台湾産サンゴのネックレスお買い上げ…30万ドルか。」
台湾から連れてこられた子を売ったという事だろう。
「ん??この時の顧客は…羅東衛?」
「羅東衛?」
「ほら、二か月前に襲われて、撃ち殺された時計店の店主だよ…。」
後始末を終え、灣仔署に戻ってきた時はもう夕方だった。
現場にいた記者たちを振り切って帰ってきたと思ったら、今度は駐車場で記者団に囲まれた。
「周Sir、強盗事件の被害者宅でなぜ銃撃戦が?」
「死んだ貴金属店の経営者というのは黒社会の人間なんですか?だから武装した連中が雇われていたんですか?」
「今回の事件は単なる強盗ではなく、黒社会内の抗争という可能性もあるのですか?」
質問攻めは絶え間なく続いた。
「公式発表を待ってくれよ…。」
「周Sir!」
記者たちはしつこかった。
署内に入っても二階に上がっても付いてきた。
「ちょっと、答えてくださいよ。飛虎隊まで出動する事態になったんでしょう?」
「周Sir、おたくらがあの屋敷で何かこそこそ嗅ぎまわっていて、そこから銃撃戦に発展したという情報も入っているんですが?」
「だから…。」
「あ、張Sir.」
張警司がズカズカと歩いてくるのが見えた。
ユンは身構えた。
「張Sir、どうなんですか?今回の銃撃戦は周刑事の…。」
記者たちが駆け寄ろうとした…が。
「搞錯呀!!!」
記者たちも近くにいた署員たちも凍り付いた。
「この大馬鹿脳筋ドンパチキチガイが!来い!」
張はユンの襟を握り、事務室に引きずり込んだ。
「また勝手に行動しただろ!」
警司は椅子にドカッと座った。
「Yes,Sir.」
「何のためにSDUを呼んだと思っているんだ!?オマケに廃車同然とはいえ覆面車までオシャカにしおって…。」
「Sorry,Sir.」
「っ…いいか、ユン。」
警司は落ち着きを取り戻した。
「今度こそお前をクビにしようかと思っていたところでだな、李やレオンが説得してきたよ。
お前のおかげで手こずっていた突入作戦がうまくいった面もあるので、勘弁してやってくれと。
まぁ今日のところは大目に見る。だが、これ以上やらかしたら承知せんぞ、このバカタレ!!!」
「ハッ!Thank you ,Sir!」
「…今日はもういい。報告書を書いたらもう家に帰れ!!」
「え…いや、でも取り調べが…。」
「参加しなくてもいいから今日はさっさと帰れ!!いいな?」
「…Yes,Sir…」
ユンはすぐに部屋から出てきた。
「え?もう終わり?」
「…李やレオンが口添えしたから、今日は勘弁してやるから家に帰れとさ。はぁ…。」
「それで終わり?」
信じられない、もっと絞られると思ったのに…。
「はぁ…報告書さっさと書かねぇと・・・。」
ユンはとぼとぼ去っていった。
記者たちはなおも追おうとしたが…。
「あー記者の諸君!」
張が部屋から出てきた。
「公式会見は今から10分後に行う。それまで他の署員を追い回さないように。過剰な取材を行った場合、警察を代表して社の方に抗議する。いいな?」
「…はい…。」
記者たちはすごすご引き下がっていった。
「はぁ…いつまで突っ立っている。取調べに行け。」
「Yes,Sir…。」
「…あ、キン、君は話がある。」
「は?…はい。先行ってて。」
「ああ…。」
キンは事務室に入った。
「話というと…例の件ですか?」
「ああ…悪いが、見送りだ。」
「え?」
「君はもう少し残ってくれ。」
「え?どうしてですか?自分は…。」
「言いたいことは分かっている。」
張の顔は先ほどとは大違いで穏やかだった。
「先月の一件。先にガソリンスタンドに突入したのはユンではなく君だった。そして君は僅か一分間とはいえ人質にされ、ユンがそれを救出した。その代償としてガソリンスタンド一軒を丸焼きにしたが。」
「…。」
「君はこのところポカが多い。聴取の不手際、拳銃の暴発…だが、それは本当にミスか?」
「!」
キンは嫌な予感に包まれた。
「キン…君がなぜあんな…わざとらしいミスを繰り返して評判を下げるような真似をしてきたのか、その理由もちゃんとわかっている。まだあれを気にしているんだろう?」
「…。」
「辛い気持ちは分かるが、あれは事故だった。お前が悩む必要はない。
それにこのところうちは人手不足だ。お前に抜けられたら困る。」
「他の部署から誰か呼べばいいじゃないですか。」
納得いかず、という感情をさらけ出した。
「そう言うな。ユン、ティン、それにお前はこの署の桃園兄弟と呼ばれているんだぞ。
それだけみんな期待しているんだ。早まるんじゃない。」
「それは買い被りです。」
「買い被りじゃない。お前があの生き残った客の女性に付き添おうとした事情も知っている。
お前さんは自分のやり方でやってもいいんだ。だから辞めるな。」
「何言うんです。ユンには厳しいくせに。」
「あいつは放っておけば町を破壊しかねない。それにストップをかける為にもお前さんやティンが必要なんだ。」
「…。」
「この話はもう終わりだ。さ、取り調べに行け。」
「…。」
中環にあるジャズバー・「ジョンズ・クラブ」。
バンドが陽気でゆっくりとした曲を奏でるのを横目に、ユンは一人を酒を呷っていた。
「でぇ…もう一杯。」
「はいよ。」
マスターのジョンがグラス半分にテキーラを注いだ。続いて炭酸水を注ぐ。
「どうも。」
ユンはグラスにハンカチをかけて握り、カウンターに叩きつけた。
シュワシュワという音がして、グラスは泡であふれかえった。
ユンはそれをまた一気飲みした。
「元気出せよ、ユン。」
ジョンがユンの肩を叩いた。
「警司だって、ああ見えてお前に目をかけているんだ。そうクサクサするな。
お前は確かにちょっとやり方が乱暴だが、1セントも賄賂を貰ったことがない。そこが昔の俺達と違う。」
ジョンもかつては刑事だった。
礼儀正しく、後輩の面倒見もよく、ユンたちも慕っていた。
しかし、所属していた部署の上司が三合会と癒着していたのを廉政公署(※1)に密告した。
それ以来同じ部署の同僚から白い目で見られるようになり、警察を辞めた。
退職後は元警官や更生を目指す前科者などを雇ったりしつつ、この店を切り盛りしている。
「明日になんてすぐに来る。今夜はゆっくり休めばいい。だから…その辺にしろ。
ここの酒全部飲み乾されて店潰されちゃかなわん。」
「對唔住…。」
ユンはレジに向かった。財布からドル札を数枚取り出し、レジ係に渡した。
小銭を貰い、ポケットに突っ込みながら店を出た。
「ホンによろしくな!」
「ああ…。」
灣仔署・取調室の一つ
「いつまで障害者の真似している気だ?」
部屋の真ん中に机が置かれ、その前に逮捕された用心棒の一人が座っている。
阿繼と呼ばれていた男だ。
突入作戦の際、必死に抵抗しようとしたものの、フラッシュバン攻撃でなすすべなく捕らえられていた。
彼を四人の刑事が囲んでいた。一人がキン。残りはパッキーたちOCTBの刑事だ。
「ほら、さっさと言ってくれよ。なぜ韓彥英は、レオンたちを殺し屋と勘違いしたんだ?
韓彪は誰に狙われていたんだ?答えろよ。」
阿繼と向かい合っていたパッキーが、灰皿をペンでコンコン叩いた。
阿繼は無表情・無口のままだった。
「…チッ。」
パッキーはキンの方を向いた。
「ウェイキン。電話帳持ってこい。」
「電話帳?」
嫌な予感が頭をよぎった。
「電話帳ぐらい持って来れるだろ?」
「何に使うつもりだ?」
「…何でもいいだろ。持ってこい。」
「…。」
渋々取調室を出た。
出ざまにパッキーの言葉が続いた。
「エリック、お前は装備係からアレ持ってこい。」
電話帳を取って戻ると、取調室が何やら騒がしくなっていた。
ドアを開けると…
「オラオラオラオラ…。」
阿繼にパッキーが往復ビンタを食らわしていた。
「パッキー哥、よせよ。」
「そうだな…。」
ビンタをやめた。
「お楽しみは取っておかないとな。」
「…お楽しみ?それって…。」
「お待たせ。」
エリックと呼ばれていた、筋肉質の若い刑事が入ってきた。柄の長いハンマーを抱えて。
「!?…まだその手を使っているのか?」
キンは戦慄するというよりは呆れていた。
「取調室でハンマーを見るのは、4年前が最後だったんだけど?」
「キン。用心棒ってのは強情な人種なんだぜ。これぐらいしないと素直に吐いちゃくれまい。さぁ…。」
パッキーが電話帳をひったくり、阿繼の頭に押さえつけた。
流石の阿繼も顔がひきつるのが分かった。彼は電話帳を払いのけようとした…が。
「おい、キングマン。」
残る一人が阿繼の両足に手錠をかけ、椅子につないだ。
更に手を後へねじり、押さえつけた。
阿繼はもがいたが、ダメ押しにパッキーが足を踏みつけた。
「エリック、外すなよ。絶対外すなよ。」
「任しといてくださいって。」
「お、おい…。」
キンは止めようかどうか迷った。
香港警察では昔から拷問めいた取調べが横行していた。
裸にひん剥いたり、電話帳をクッションにして殴ったり蹴ったり、ウィスキーで濡らしたタオルで顔を塞いであやうく窒息死させかけた事もあった。
最近では廉政公署の監視の目が厳しくなり、こうしたことは行われなくなってきた。
大抵の容疑者は減刑や釈放を餌にすれば言うことを聞いてくれる。
ただし、阿繼のように何で釣ろうとしても頑として聞かない者もいる。
「キン、止めないよな?」
「…。」
キンは黙って取調室から出た。
「唔…唔好啊!(よ、よせ!)」
背後で阿繼の声が聞こえた。
「唔…唔好啊ーーー!(や、やめろーー!)」
ボン!!!!!
その後、ドアの向こうで、ドサッと言う音が聞こえた。
九龍半島側・ 紅磡
香港島から海底トンネルを抜けてきた二階建てバス群は料金所前に集結し、そこからまたそれぞれの目的地へ向かうことになる。
ユンが乗ったバスは最初のインターチェンジから左へと進む。
しばらくすると西九龍高架道路が見えてきたがそちらではなく、加士居道の方へ進んだ。バスはやがて左にそれ、佐敦道へ。
ユンは彌敦道に入る直前のバス停で降りた。
酔いは醒めていた。バスに乗る前、酔っぱらって皇后像広場に迷い込んで噴水に落ちたせいだ。
その足で彌敦道へ出る。ここは香港の中でも店舗、レストランが特に密集する一大繁華街で「ゴールデン・マイル」とも呼ばれている。
雑踏を何度か搔き分けつつ、その足で5分ほど歩き、目当ての場所に着いた。
一軒のビル。他と同じようにネオンと看板でけばけばしく飾られている。
その多数の看板の中に「クラブ・梅」の名があった。
ビルの入口を見ると、そこにも「クラブ・梅」の看板。このビルの一階(※2)で営業していることが記されている。
階段を上り、一階へ上がると、すぐそこに「梅」があった。
用心棒と思われるごついドアマンが二人、ガラス戸の両脇に立っていた。
一人は178cmくらいの長身で、角顔にアーモンド形の目、小さい鼻に中くらいの口。
もう一人は190cmくらいと更に長身で、顔中に筋が入った厳つい面構えだった。
「やぁ、ボルト、アンペル。」
「当店をご利用ですか?」
ドスの効いた厳つい声でボルト-190cmくらいの方-が答えた。
「いや…今夜はもう充分飲んできた。実は海華にちょっと聞きたいことがあってね…。」
「そうですか…しかしそろそろ例の時間です。」
「待つさ。時間はかかるまい。」
「じゃどうぞ。」
「ごゆっくり、周Sir。」
ガラス戸が開けられ、ユンは通された。
店内はかなり盛り上がっている。あるテーブルからは中年らしい男が馬鹿みたいな笑い声を上げ、またあるテーブルでは男女が手拍子を叩いては酒を飲み干す仲間を囃していた。
ユンは彼らを横目に、奥にあるステージの方を見た。
アフロヘアのバンドが赤いカーテンを背にし、サックスやドラムを奏でていた…と。
「御越しの皆さん、お楽しみいただけているでしょうか?」
ステージ中央に、マイクを持った野暮ったい見た目の小男が現れた。
「少しでも皆様を盛り上げるため、今夜もこの時間がやってまいりました。当店のマダム、梅海華による歌唱、ゆっくりと聴いてくださいませ。曲は『問我』です。」
小男が立ち去ると同時に方々からパチパチという音が聞こえ、バンドが別の曲を演奏し始めた。
そのタイミングでカーテンの陰から女が現れた。
半開きの目に小さな鼻、厚めの唇…やぼったく見えてどこか色気の感じられる顔立ちだった。
桃色の花柄のチャイナドレスに身を包んだ彼女は、堂々とした態度でステージ中央に立ち、マイクをこちらに向けて語り始めた。
問我歡呼聲有幾多 問我悲哭聲有幾多
(どれだけ喜びの声があり、どれだけ悲しみの声があり)
我如何 能夠 一一 去數清楚
(どうやったらそれを一つ一つ数えられるか自分に問うの)
問我點解會高興 究竟點解要苦楚
(なぜ幸せなのか、なぜ惨めなのか?と自分に問い、)
我笑住 回答 講一聲 我係我
(ただ笑って答えるだけ。私は私だからと)
無論我有百般對 或者千般錯 全心去承受結果
(自分がどれだけ正しくても、どれだけ間違っていようと、心を込めて結果を受け止めよう)
面對世界一切 那怕會如何 全心保存真的我
(世の中のあらゆることに直面しても、どんなことがあっても、本当の自分を貫いていこう)
問我得失有幾多 其實得失不必清楚
(どれだけのものを得て、どれだけのものを失ったか、知る必要はないけど、)
我但求 能夠 一一 去數清楚
(それでも一つ一つ数えられるようになりたい)
願我一生去到終結 無論歷盡幾許風波
(幾つもの荒れ狂う波を乗り越えて、人生の終わりまで行きたいと願う)
我仍然 能夠 講一聲 我係我
(これだけはまだ言える。私は私なんだと。)
無論我有百般對 或者千般錯 全心去承受結果
(自分がどれだけ正しくても、どれだけ間違っていようと、心を込めて結果を受け止めよう)
面對世界一切 那怕會如何 全心保存真的我
(世の中のあらゆることに直面しても、どんなことがあっても、本当の自分を貫いていこう)
問我歡呼聲有幾多 問我悲哭聲有幾多
(どれだけ喜びの声があり、どれだけ悲しみの声があり)
我如何 能夠 一一 去數清楚
(どうやったらそれを一つ一つ数えられるか自分に問うの)
問我點解會高興 究竟點解要苦楚
(なぜ幸せなのか、なぜ惨めなのか?と自分に問い、)
我笑住 回答 講一聲 我係我
(ただ笑って答えるだけ。私は私だからと)
笑住回答 講一聲 我係我…
(笑って答えるの。私は私だと…)
彼女が歌い終わる瞬間、再びパチパチという音が店内中に鳴り響いた。
「多謝…。」
彼女は照れ臭そうな笑顔を見せると、カーテンの向こうへ消えていった。
ユンはその後を追った。
「やぁ、海華。」
「ユン…また来たの。」
彼女は驚きもしていなかった。
「今日は何の情報が欲しいの?」
彼女は椅子に座って足を組み、テーブルに置いてあった煙草を一本取り、火を付けた。
「…深水灣道に住んでいた韓彪って知っているか?」
「韓彪…?」
海華は一瞬、動きを止めた。表情が固まっているように見えた。
「ああ、銅鑼湾で武装強盗に殺された貴金属商ね。」
「今日、そいつの家で派手にやってね…。」
「銃撃戦ね?」
「ああ…奴の女房と用心棒が何を勘違いしたか、いきなり俺たちに撃ってきた。その原因を調べているんだ。韓彪は…約23年間、子供の売買と監禁と虐待を繰り返していた。」
海華の顔にしわが寄った。
「それでな…。」
ユンは胸ポケットから写真2枚を取り出した。
例の1963年と67年に監禁されていた子供の写真。押収したアルバムから剥がしてきたのだ。
それを海華に渡した。
「あの屋敷のアルバムから見つけてきたんだ。こっちの男の子は23年前」
海華は黙って写真を見つめていたが…。
「帰って。」
写真を突き返した。
彼女の顔は青ざめ、目はカッと見開き、頬がぴくぴくしていた。
「海華…。」
「帰ってちょうだい。」
「…分かった。」
ユンは写真をポケットに収め、すごすごとメインフロアへ戻っていった。
「もうお帰りで?」
店から出る時、アンペルが声をかけてきた。
「今日はえらく不機嫌でね。」
「そうですか…実は海華様、このところ、いろいろ悩んでまして…。」
「原因は?」
「それは私共の口からは…。」
アンペルは人差し指をクイクイと動かした。
「ただ、問題はすぐに解決しやすよ。きっと。」
「そうか…それじゃ。」
ユンは、階段を降りて…行こうとしたが、
「そういえば、ボルト。」
「ん?」
「お前、最近おふくろさんと会っているか?」
「…。」
ボルトはうつむいて上目にユンを見た。
「…会ってないようだな?たまには帰って顔見せてやれよ。」
「私もボルト…兄貴も仕事が忙くて…。」
アンペルが口を挟んできた。
「海華に頼めば休暇ぐらい幾らでも貰えるだろ。」
「でも…。」
「とにかく。」
ボルトの肩を軽く叩いた。
「おふくろさんに元気な所見せてやるんだぞ。いいな?」
「…はい。」
「よし。じゃあな。」
「クラブ・梅」を出た後、ユンは啟德方面へ向かうミニバスに乗った。
バスは佐敦道、加士居道、漆咸道を経て、馬頭涌道を進む。
ユンはバスの運転手に頼み、木廠街へ曲がらせた。しばらくするとバスは馬頭角に差し掛かる。
ここには十三街と呼ばれる市街地がある。その名の通り、13本の通りから成るエリアで、北側に木廠街、南側に馬頭角道、そしてその2つの間に11本の通りが垂直に走っている。
ユンは燕安街への入り口で止めてもらい、代金を払って降りた。
この十三街にはもう一つ大きな特徴がある。それは、自動車の修理工場や部品販売店などが至る所に存在することだ。
その中の一つに金輪車房があった。
十三街の整備工場のガレージはどれも小さくて狭く、どう頑張ってもせいぜい3台程度の自動車しか入れることができない。
そんな狭いガレージ内で、金輪車房の経営者・曾雄は、ヤマハのオートバイXV700ビラーゴを前に手を動かしていた。
「ホンさん。」
「おお、ユンか。どこかに逃げ出したと思ったぞ…冗談だが。」
「ホンさん…そいつ、どんな具合だ。」
「そうだな…あと1日必要ってとこかな…。」
「そうか…。」
ホンは作業をやめ、ガレージの外に出て、シャッターを閉める。
「食事作ろうか?」
「外で食ってきた。今日はもうクタクタだ。」
「そうかい。」
ホンはビルの入り口の鉄門の鍵を開けた。
十三街では、ガレージで働く若者が住人を襲撃する事件が70年代から相次いでいた。そのため、ビルの入り口にこうした鉄門を設置することで、ならず者の侵入を防いでいた。
扉を開け、内側から鍵をかけてから、階段を上がる。
ホンの部屋はガレージの真上。ユンもそこに居候して、たまにガレージで仕事を手伝っている。
香港のアパートのドアは二重構造になっているものが多い。
ホンが外側の鉄製ドアの鍵を解除して開け、次に普通のドアを同じ要領で開け、中へ入る。
ホンの部屋は寝室2つとリビング兼ダイニング、キッチン、シャワールーム、トイレなどで構成されている。
前は二人とも同じ寝室を使っていたが、ホモ疑惑をかけられそうになったので、今は別々の部屋にベッドを置いている。
ユンは自分の寝室のドアを開ける。狭い部屋には小さなデスクとキャビネット、ベッド、それに5,6個の段ボールが置かれていた。タンスはなく、着替えの服は無造作に物干しの上に置かれ、下着は麻編みの籠に放り込んであった。デスクの上にはモデルガンやプラモデルの箱、雑誌やその他もろもろが山積みになっていた。
ユンはシャツとズボンを脱ぎ、まるめて籠の一つに放り投げた。明日洗濯に出すつもりだった。
ベルトは物干しにひっかけておいた。
後は靴を脱いでベッドに飛び込み、ゴロンと仰向けになった。
「早唞(おやすみ)、ユン。」
「早唞、ホンさん…。」
睡魔に襲われる刹那、海華の事を思い出していた…。
海華と出会ったのは4年前だ。
彼女は孤児だった。どこで生まれたのかは本人もよく分からないという。
5歳の時、梅家の夫婦に拾われ、育てられた。
養父は「クラブ・梅」の創設者だったが、ヤクザの抗争に巻き込まれ殺された。
彼女の叔父が三合会系の組長で、とばっちりの報復を受けたのだ。
店は他人に権利が渡るかと思われたが、意外にも海華が継いだ。
その時の彼女はわずか十九歳だった。叔父が後見人として後押ししたのだ。
ドアマン兼用心棒のアンペルとボルトも、元は彼女の叔父の組織の若衆だった。二人とも離島の出身で、実家に母と兄弟を残して九龍にやって来ていたところ、組織に入った。
海華の叔父は、兄弟の報復のため、アンペルたち手下を使って、犯人を探し出して見せしめに殺そうと目論んだ。
しかし、あと一歩のところでユンが捕まえ、犯人は裁判所送りになった。
逮捕した直後、叔父はユンに、犯人を連れ出して引き渡せ、そうすれば金はたんまりやると言ってきた。一回だけではなく何度もだ。だが、ユンは無視した。
叔父は終いには腹を立て、連れ出さなければユンを殺すとまで言ってきた。
だがユンは一歩も譲らなかった。「俺は自分の仕事を果たす。」と言い返しただけだった。
犯人の有罪が確定したその日、海華がユンを訪ねてきた。
彼女は叔父たちの非礼を謝り、お詫びと犯人を逮捕したお礼を兼ね、ユンに情報を持ってきた。
香港から日本へ麻薬を密輸している組織の情報だった。
ユンは最初拒んだが、後にその組織が絡んだ殺人事件の捜査に参加することになった。
捜査は難航し、やむをえず海華の情報に頼ることになった。
結果は大当たりで、麻薬組織を一つ潰すことに成功した。
それ以来、ユンはたびたび海華の情報を頼りにしている。
ユンの他にも彼女を情報源にしている刑事がいると聞いていたが、それが誰なのかは知らなかった。
彼女には、情報屋のようなことはもうやめるようにと何度か言っているのだが、結局持ちつ持たれつで現在に至っている。
いつまでこの関係が続くのか不安だった。というのも、海華が叔父の組織を継ぐ可能性が囁かれているからである。
彼女は若いながらカリスマ性があり、人を束ねるのに長けている。
そして彼女の叔父の組は、香港島への勢力拡大を狙っているという噂もあった。
もし彼女が組を継ぎ、香港島で抗争が起きたら…。
ユンはそこで考えるのをやめることにした。今は頭も体も休めて、明日を待とう。
一方。香港島北東部に位置する太古城。
香港島の中でも特に人口が集中する住宅街にして商業地区で、高層団地が連立している。
団地は形状によって、翠湖臺、高山臺、金殿臺、安盛臺、海景花園など複数のグループに分けられている。
その中の一つのエレベーター内にキンはいた。
あれから結局、仮病を使って早退した。我ながら陳腐な手だとは思っているが、相手がどんな悪党であっても拷問に加担したくなかった。今頃灣仔署は阿鼻叫喚だろう。
ぼんやりしているうちにエレベーターが動きを止める。「チン」という音が鳴り、扉が開く。
キンは少しふらつきながらエレベーターを降り、自分の部屋の前に行き、鍵を開ける。
部屋に入り、さっさと明かりをつける。
キンの住んでいる部屋は、十三街のアパートより少し広い。
寝室二つにリビングとダイニング、それにトイレ付きのバスルームとキッチンという構成だ。
ダイニングのテーブルの上に紙切れが置いてある。
手に取って読むと…
「哥哥(お兄さんへ)
李Sir受命工作,今晚不能回家(李Sirから仕事を任され、今夜は帰れません)
冰箱里有晚餐,請加熱食(冷蔵庫に夕飯があるので温めてください)
筠」
冷蔵庫の中を見ると、発砲スチロールの箱二つとカップが置かれていた。
箱を開けると、一つはご飯、もう一つは野菜炒め。カップの中身はスープのようだ。
まとめて電子レンジに入れ、2分ほど温める。
2分経ったらまとめて取り出し、むさぼり食った。
簡素な食事を終えたら、ベッドルームへ。ユンの部屋と違い、片付いていてすっきりしている。
ベッドに寝転がり、電灯を見つめる。これからどうしようかと思った。本当は昨年度中の人事異動を望んでいた。それが叶わなかったので、張警司の言うように小細工を重ねていた。だが、それも徒労に終わった。
いっそ捜査で手抜きを…思い切ってサボってやろうか…と思った時、包珠玲…チュの顔がふと脳裏をよぎった。
彼女の家族の無念を無視して、自分のことばかり考えている。
それでいいのか?キンは少し情けない気持ちになった。
いつから自分はこんな奴になったのか…キンは考えるのを一旦そこでやめた。
今日はもう寝よう。布団を被り、枕に頭をぐりぐり押し当てつつ目を瞑った。
だが、チュの顔はしばらく目に映ったまま消えなかった。
(※1)ICAC。警察などの公務員の腐敗を取り締まる目的で1974年に作られた外部組織。70年代は警察官に対する取り締まりが厳しかった。
(※2)英領時代の香港では、日本でいう「一階」部分は「地下」(グラウンドフロア)扱い。
よって、香港の「一階」は「二階」になる。
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