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池ポチャした日、私はイケメンと出会った
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「うっげほげほッッ」
助かったと言葉を紡ぐよりも先に私は激しく咳き込みながらその場で粗く息を整えた。なんどもなんども咳き込む。咳き込むたびに体から先ほど飲み込んだと思われる水も吐き出す。
「大丈夫かい? 本当にここを通りかかって良かったよ、まさから空から人が降ってくるなんて思いもしなかったけれど」
なにやら言葉をかけてくれている男性を横目に、ようやく呼吸が整ってきた。どうやら彼は外国人のような顔立ちをしている。白いワイシャツに黒のダボっとしたズボン、それから長い革のブーツを身にまとっている。その容姿は金髪に緑色の瞳で、まるでゲームの、、そこまで考えて頭がズキズキと痛み出した。頭を押さえていると、男性は私の視線に合わせるようにかがんで。顔を覗き込むように再度「大丈夫かい?」と心配した様子で聞いてきた。
慌てて何度もうなずく。落ち着いてきた体とは別に今度は心臓がうるさく高鳴る。さっきまでの恐怖はどこへやら。こんなにも異性を見つめて心臓がバクバクとするのは高校生の時以来かもしれない。本当になんだ、なんなんだ、このイケメンは。どの角度からみてもイケメンとか、どれくらい得を積めばそんな顔で産まれてこれるのだ。
いや、それともこれは昔から、何十種類もの乙女ゲームをプレイしてきた私だからこそ見ている最後の走馬灯なのかもしれない。走馬灯に違いない。そうやって一人で納得してうなずいていると、その男性もニコニコとうなずいている。イケメンな上に可愛いとか、私の走馬灯最高すぎる。
「本当は色々と聞きたいけど、寒いよね。震えて可哀そうに。どうしよう、これで温まるかな?」
一瞬何が起きたのか分からなかった。彼が困ったように何かを言ったと同時に抱きしめられていた。誰が?私が?お花の甘い香りに包まれて、私の心臓は今すぐにでもはちきれそうなほどに音を立てている。
しかし一つ残念な事もある。抱きしめられている私の頭が彼の腹部らへんにあると言う事。こういう時は女性の頭が男の人の肩にくるのがちょうどよくて、いやでも彼の腹部も程よく訓練されて固い筋肉もこれまた良き、、、って私は何を考えているのだ。自分の考えに恥ずかしくなった勢いで私は彼を突き飛ばしてしまった。
正確には付き飛ばそうとした。しかし彼に強くガードされて叶わなかった。結局彼もバランスを崩してしまい、一緒に地面に転がってしまったけど。客観的に見たら私がこの男性を押し倒しているように見えなくもない。今度こそ慌てて飛び降りた。
「あはは、僕が地面側で良かったよ。大丈夫?けがは?」
私に続いて勢いよく立ち上がった男性は、いまだに地面に座ったままの私の腕を引っ張て立たせてくれた。そして再度言おう。なんだこのイケメンは?約30年生きてきた中でも見た事のないレベルのイケメンだ。僕が地面にコケて良かった?並大抵の男性は他者よりも自分の痛みで泣きわめくのに。なんだこのイケメンは。あろうことか私の怪我の有無についても確認してくるなんて。
「はっくしゅん」
あら、私でもまだまだこんなにかわいらしいくしゃみが出来るのね、なんて言いたい人生でした。人生でしたとも。突然この場に可愛らしい音が響いたと同時に、音の方向を見ると彼が両手で鼻先を抑えてくしゃみをしていたのである。そう、あの可愛らしいくしゃみは紛れもなく目の前のイケメンから出てきたものだった。女としても負けたような気がしてどことなく悔しい気持ちになる。
、、、ってこんな所で悔しがっている場合じゃない。この人は私を助けたせいで、びしょ濡れになっているのだ。目測年齢だとおそらくまだ高校生か、それ以下の少年。後になって急に罪悪感に襲われ始める。
「私を助けたせいでくしゃみを、ごめんなさい」
そう頭を下げて謝れば、今度はきょとんとした顔をした後に彼は笑っていた。どうやら私が話せないと思い込んでいたみたいだ。確かに思い返せば、地上に引き上げられてから一言も言葉を発していなかったような気がする。
「こっちにきて、君はどこからきたか分からないけど、念のため裏口から」
そう言って彼は自然と私の手を恋人繋ぎしてきた。これがわざとなら怒りに顔を染めている所だけど先ほどの行為からみても完全に天然よね。幾度となく合コンに参加してきた私だからこそ分かった。それにしても彼はあまりにも純粋すぎる。おばさんそんな子を怒れるほど非道じゃない。
なんて内心でおちゃらけていると、どうにも道があるとは言い難い草むらに案内をされる。少し躊躇していると彼は私を背負おうと提案してきたから大きく首を振って急いで前に進む。
「道中は少し薄暗いから気を付けてね」
彼は、森の中から明らかに見えているであろう町のような所では無く、大きな城がある方角に向かって進んでいる事実に私は目をそらした。
やっぱりこれは、私の走馬灯に違いないと。あんな奇麗なお城なんて見た事も無いわ。走馬灯にしてはやけにリアルな寒気と手のぬくもりを感じながら。再度、そう思ったのだった。
助かったと言葉を紡ぐよりも先に私は激しく咳き込みながらその場で粗く息を整えた。なんどもなんども咳き込む。咳き込むたびに体から先ほど飲み込んだと思われる水も吐き出す。
「大丈夫かい? 本当にここを通りかかって良かったよ、まさから空から人が降ってくるなんて思いもしなかったけれど」
なにやら言葉をかけてくれている男性を横目に、ようやく呼吸が整ってきた。どうやら彼は外国人のような顔立ちをしている。白いワイシャツに黒のダボっとしたズボン、それから長い革のブーツを身にまとっている。その容姿は金髪に緑色の瞳で、まるでゲームの、、そこまで考えて頭がズキズキと痛み出した。頭を押さえていると、男性は私の視線に合わせるようにかがんで。顔を覗き込むように再度「大丈夫かい?」と心配した様子で聞いてきた。
慌てて何度もうなずく。落ち着いてきた体とは別に今度は心臓がうるさく高鳴る。さっきまでの恐怖はどこへやら。こんなにも異性を見つめて心臓がバクバクとするのは高校生の時以来かもしれない。本当になんだ、なんなんだ、このイケメンは。どの角度からみてもイケメンとか、どれくらい得を積めばそんな顔で産まれてこれるのだ。
いや、それともこれは昔から、何十種類もの乙女ゲームをプレイしてきた私だからこそ見ている最後の走馬灯なのかもしれない。走馬灯に違いない。そうやって一人で納得してうなずいていると、その男性もニコニコとうなずいている。イケメンな上に可愛いとか、私の走馬灯最高すぎる。
「本当は色々と聞きたいけど、寒いよね。震えて可哀そうに。どうしよう、これで温まるかな?」
一瞬何が起きたのか分からなかった。彼が困ったように何かを言ったと同時に抱きしめられていた。誰が?私が?お花の甘い香りに包まれて、私の心臓は今すぐにでもはちきれそうなほどに音を立てている。
しかし一つ残念な事もある。抱きしめられている私の頭が彼の腹部らへんにあると言う事。こういう時は女性の頭が男の人の肩にくるのがちょうどよくて、いやでも彼の腹部も程よく訓練されて固い筋肉もこれまた良き、、、って私は何を考えているのだ。自分の考えに恥ずかしくなった勢いで私は彼を突き飛ばしてしまった。
正確には付き飛ばそうとした。しかし彼に強くガードされて叶わなかった。結局彼もバランスを崩してしまい、一緒に地面に転がってしまったけど。客観的に見たら私がこの男性を押し倒しているように見えなくもない。今度こそ慌てて飛び降りた。
「あはは、僕が地面側で良かったよ。大丈夫?けがは?」
私に続いて勢いよく立ち上がった男性は、いまだに地面に座ったままの私の腕を引っ張て立たせてくれた。そして再度言おう。なんだこのイケメンは?約30年生きてきた中でも見た事のないレベルのイケメンだ。僕が地面にコケて良かった?並大抵の男性は他者よりも自分の痛みで泣きわめくのに。なんだこのイケメンは。あろうことか私の怪我の有無についても確認してくるなんて。
「はっくしゅん」
あら、私でもまだまだこんなにかわいらしいくしゃみが出来るのね、なんて言いたい人生でした。人生でしたとも。突然この場に可愛らしい音が響いたと同時に、音の方向を見ると彼が両手で鼻先を抑えてくしゃみをしていたのである。そう、あの可愛らしいくしゃみは紛れもなく目の前のイケメンから出てきたものだった。女としても負けたような気がしてどことなく悔しい気持ちになる。
、、、ってこんな所で悔しがっている場合じゃない。この人は私を助けたせいで、びしょ濡れになっているのだ。目測年齢だとおそらくまだ高校生か、それ以下の少年。後になって急に罪悪感に襲われ始める。
「私を助けたせいでくしゃみを、ごめんなさい」
そう頭を下げて謝れば、今度はきょとんとした顔をした後に彼は笑っていた。どうやら私が話せないと思い込んでいたみたいだ。確かに思い返せば、地上に引き上げられてから一言も言葉を発していなかったような気がする。
「こっちにきて、君はどこからきたか分からないけど、念のため裏口から」
そう言って彼は自然と私の手を恋人繋ぎしてきた。これがわざとなら怒りに顔を染めている所だけど先ほどの行為からみても完全に天然よね。幾度となく合コンに参加してきた私だからこそ分かった。それにしても彼はあまりにも純粋すぎる。おばさんそんな子を怒れるほど非道じゃない。
なんて内心でおちゃらけていると、どうにも道があるとは言い難い草むらに案内をされる。少し躊躇していると彼は私を背負おうと提案してきたから大きく首を振って急いで前に進む。
「道中は少し薄暗いから気を付けてね」
彼は、森の中から明らかに見えているであろう町のような所では無く、大きな城がある方角に向かって進んでいる事実に私は目をそらした。
やっぱりこれは、私の走馬灯に違いないと。あんな奇麗なお城なんて見た事も無いわ。走馬灯にしてはやけにリアルな寒気と手のぬくもりを感じながら。再度、そう思ったのだった。
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