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September
9月10日(火) 私と先輩と部活
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福岡の中でも北に位置するここ――北九州。
他県からは『修羅の国』と揶揄されることで有名な場所であるけれど、同県の別地域からも同じように『修羅の国』と蔑まれているのが、このウチの地元である。
そんな中に位置するウチらの学校は、しがない県立高校。
クリーム色のボロボロな校舎。生徒数は四百五十人ほどでたいして大きくもなく、制服も在り来りなデザインだ。
変わった点といえば、体育科と言われる学科がこの
学区内で唯一存在することくらい。
でもだからこそ、その受験倍率は毎年高く、国公立故の授業料免除とも相まって人気の高い学校だ。
ウチの一つ上の先輩――亮吾くんもまた例に漏れず受験した者の一人である。
しかし運がいいのか、能力が高かったのか、何ともまぁ無事に合格してしまったせいで、ウチもここへ来なければいけなくなったわけだけど……。
とはいえ、ウチは普通科。
元々の学年差に加えて、カリキュラムの違いから接する機会は殆どない。
なので学校行事もしくは、今のようにこうして部活動の時間に会うほか方法はないのであった。
というわけで、今日もマネージャーとして頑張るっス!
♦ ♦ ♦
「――なぁ、琴葉。君もマネージャーなんだから、もう少し何かしても良いんじゃないか?」
体育館の壇上、そのヘリに座って練習を眺めていたウチに亮吾くんは呆れ顔で話しかけてきた。
「……って言われても、他の子はお爺ちゃんが見てるし、亮吾くんは言われた自主練メニューをやってるしで、特にやることがないんスよ」
「いや……なら、部室の掃除とかさ……」
「そんなことしたら、練習姿が見られないじゃないっスか!」
理不尽な先輩の要求に、私は憤慨してみせる。
なんて酷いことを言うんだ、この人は。ウチの入部動機を知っての発言かー!
まぁ、そもそもが話してないし、鈍感な亮吾くんに気付けるわけもないけど……。
「じゃあ……ドリンクを持ってくるとかはどうだ? ほかの部活ではよくやってると聞くけど」
「残念な話、ウチの部活にそんな予算はないっス。弱小っスからね」
「さいですか…………」
沈鬱な雰囲気で辺りは沈む。
悲しいかな。体育科という学科は存在しながらもせいぜいが一クラス――三十人ほどであるため、全ての運動系の部活が強いわけではないのだ。
ウチの部も亮吾くんを除けば全員が普通科の学生で、かつ殆どが授業経験だけの初心者。
むしろ、亮吾くんが入ってくれているだけこの部活はマシというレベルなのである。
テニス部なんて、先生も含めてが素人の集まりでしかない。
男子に人気のサッカー部や野球部、女子のバレー部といった強豪チームとは扱いが雲泥の差だ。
「でもじゃあ、琴葉には何が出来るんだよ……」
「……………………応援っスね」
しばらく考え、ウチは何とか解答を捻り出した。
「……もう解雇でいいんじゃないかなぁ」
「いやいや、よく考えてみてくださいよ。私みたいなそこそこ可愛い子をマネージャーにしてるだけで、割とアドっスよ? 応援の時、力出ますよ? 亮吾くんのライバル視してる和白高校なんか特にそうっスよね!」
「いや、俺は特に――」
「亮吾くんの話なんか誰もしてないっス!」
なおも口答えをする先輩を差し置いて、ウチは一喝。
その後ろで会話を盗み聞きしていた他の部員へと目を向け、意見を求めた。
「確かに、和白の子らはみんな可愛かったよなぁ……」
「正直、あれだけ応援されて羨ましかった」
「ぼ、僕……無口そうな顔の子が良いなって思――」
「俺は断然、一年生っぽいちっちゃい子だな。いただろ?」
「少なくとも、妬みはするよね」
ほれ見たことか。
やはり、可愛いは正義なのであるのだよ……亮吾くん。
「……けど、強豪だから集まるのかな?」
「いや、それよりも立派な理由があるだろ」
「それな」
「あ、あの無表情さは……僕の心にビビっと刺――」
「まぁ、それしかないよな」
『結局、畔上翔真が目当てなんだろうなー……』
しかし、話題を振ったはいいものの、彼らの興に乗せ過ぎたようで無意味な考察までし始めていた。
しかも、その結論として挙げられた単語が、またある者の火を付け――。
「畔上翔真……! 十一月の新人戦では、絶対に負けない」
話そっちのけで一人自主練へと戻ってしまう。
「ほっほっほ、元気がいいな」
「あっ、お爺ちゃん」
そんな様子を眺めていると、部活の顧問と体育教師とを兼任しているウチのお爺ちゃんが笑いながら入ってくる。
「そんなに元気なら、もっと練習を増やしても大丈夫みたいだの。なーに、君たちはまだ若い。死にゃせん」
そうして告げられる、鬼の宣告。
『そんなぁー!』
悲嘆する部員。
「…………………………………………」
黙々と練習に励む先輩。
ウチの部活は今日騒がしくて、楽しくて、居心地が良い。
他県からは『修羅の国』と揶揄されることで有名な場所であるけれど、同県の別地域からも同じように『修羅の国』と蔑まれているのが、このウチの地元である。
そんな中に位置するウチらの学校は、しがない県立高校。
クリーム色のボロボロな校舎。生徒数は四百五十人ほどでたいして大きくもなく、制服も在り来りなデザインだ。
変わった点といえば、体育科と言われる学科がこの
学区内で唯一存在することくらい。
でもだからこそ、その受験倍率は毎年高く、国公立故の授業料免除とも相まって人気の高い学校だ。
ウチの一つ上の先輩――亮吾くんもまた例に漏れず受験した者の一人である。
しかし運がいいのか、能力が高かったのか、何ともまぁ無事に合格してしまったせいで、ウチもここへ来なければいけなくなったわけだけど……。
とはいえ、ウチは普通科。
元々の学年差に加えて、カリキュラムの違いから接する機会は殆どない。
なので学校行事もしくは、今のようにこうして部活動の時間に会うほか方法はないのであった。
というわけで、今日もマネージャーとして頑張るっス!
♦ ♦ ♦
「――なぁ、琴葉。君もマネージャーなんだから、もう少し何かしても良いんじゃないか?」
体育館の壇上、そのヘリに座って練習を眺めていたウチに亮吾くんは呆れ顔で話しかけてきた。
「……って言われても、他の子はお爺ちゃんが見てるし、亮吾くんは言われた自主練メニューをやってるしで、特にやることがないんスよ」
「いや……なら、部室の掃除とかさ……」
「そんなことしたら、練習姿が見られないじゃないっスか!」
理不尽な先輩の要求に、私は憤慨してみせる。
なんて酷いことを言うんだ、この人は。ウチの入部動機を知っての発言かー!
まぁ、そもそもが話してないし、鈍感な亮吾くんに気付けるわけもないけど……。
「じゃあ……ドリンクを持ってくるとかはどうだ? ほかの部活ではよくやってると聞くけど」
「残念な話、ウチの部活にそんな予算はないっス。弱小っスからね」
「さいですか…………」
沈鬱な雰囲気で辺りは沈む。
悲しいかな。体育科という学科は存在しながらもせいぜいが一クラス――三十人ほどであるため、全ての運動系の部活が強いわけではないのだ。
ウチの部も亮吾くんを除けば全員が普通科の学生で、かつ殆どが授業経験だけの初心者。
むしろ、亮吾くんが入ってくれているだけこの部活はマシというレベルなのである。
テニス部なんて、先生も含めてが素人の集まりでしかない。
男子に人気のサッカー部や野球部、女子のバレー部といった強豪チームとは扱いが雲泥の差だ。
「でもじゃあ、琴葉には何が出来るんだよ……」
「……………………応援っスね」
しばらく考え、ウチは何とか解答を捻り出した。
「……もう解雇でいいんじゃないかなぁ」
「いやいや、よく考えてみてくださいよ。私みたいなそこそこ可愛い子をマネージャーにしてるだけで、割とアドっスよ? 応援の時、力出ますよ? 亮吾くんのライバル視してる和白高校なんか特にそうっスよね!」
「いや、俺は特に――」
「亮吾くんの話なんか誰もしてないっス!」
なおも口答えをする先輩を差し置いて、ウチは一喝。
その後ろで会話を盗み聞きしていた他の部員へと目を向け、意見を求めた。
「確かに、和白の子らはみんな可愛かったよなぁ……」
「正直、あれだけ応援されて羨ましかった」
「ぼ、僕……無口そうな顔の子が良いなって思――」
「俺は断然、一年生っぽいちっちゃい子だな。いただろ?」
「少なくとも、妬みはするよね」
ほれ見たことか。
やはり、可愛いは正義なのであるのだよ……亮吾くん。
「……けど、強豪だから集まるのかな?」
「いや、それよりも立派な理由があるだろ」
「それな」
「あ、あの無表情さは……僕の心にビビっと刺――」
「まぁ、それしかないよな」
『結局、畔上翔真が目当てなんだろうなー……』
しかし、話題を振ったはいいものの、彼らの興に乗せ過ぎたようで無意味な考察までし始めていた。
しかも、その結論として挙げられた単語が、またある者の火を付け――。
「畔上翔真……! 十一月の新人戦では、絶対に負けない」
話そっちのけで一人自主練へと戻ってしまう。
「ほっほっほ、元気がいいな」
「あっ、お爺ちゃん」
そんな様子を眺めていると、部活の顧問と体育教師とを兼任しているウチのお爺ちゃんが笑いながら入ってくる。
「そんなに元気なら、もっと練習を増やしても大丈夫みたいだの。なーに、君たちはまだ若い。死にゃせん」
そうして告げられる、鬼の宣告。
『そんなぁー!』
悲嘆する部員。
「…………………………………………」
黙々と練習に励む先輩。
ウチの部活は今日騒がしくて、楽しくて、居心地が良い。
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