俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~

角砂糖

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第五章 安息と騒乱――渚は笑い、倫太郎は赤面

混乱!?王都に広がる黒衣伝説

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王城・執事室

「……殿下を助けたいのだろう?」
低い声が闇の中から囁く。

黒衣の男が差し出したのは、怪しく光る霊糸の欠片。
「その忠義、その焦燥……力に変えてやろう」

「わ、私は……王子を……!」
ギルバートの瞳が濁りかける。
忠義の心が操られ、意識が揺らいでいた。


同刻・牢獄

「フハハ……この時を待っていたぞ!」
かつてアレクシス王子に泣かされた高官のひとりが、隙を突いて牢を抜け出した。
手にしているのは一つの召喚石。

「アレクシス王子よ……必ずや復讐を果たしてくれる!」


城内・混乱

その声が響いた瞬間、ギルバートの心に閃光が走る。
「……殿下に仇なす者を野放しにするなど……断じて許せぬ!」

彼は洗脳の枷を振り払い、全力で鐘を鳴らした。
「衛兵! 衛兵を呼べ! 賊が脱走したぞおおお!」

一斉に城内がざわめき、兵士が総動員される。

「追えーッ!」
「囲めーッ!」

黒衣の男は逃走、その後様子を離れた塔の上から見下ろし、肩をすくめた。
「……まぁ、それはそれでいいか」
そして影から伸ばした力で、脱走した高官の逃走を援護し始めた。


城門前

「ひぃぃ、あっちからも兵士が……!」
「待てぇーっ!」「捕らえろーっ!」

高官は必死で走る。
背後は城の兵士でごった返し、まるで大脱走劇。
黒衣の援護で辛くも城を抜け出すことに成功した。

「フハハ! これで王子を――」

だが、懐の召喚石を取り出した瞬間。

――ただの鈍い石ころになっていた。

「……な、なんだこれはぁぁぁぁぁぁ!」

黒衣の男は遠くからその姿を見て、くつくつと笑った。
「使用済みだったか……ふむ、滑稽でいい。まだ遊べるな」

高官の絶叫と、城兵総動員のドタバタが、夜の王都にこだました。


王都・夜の追跡戦

「逃がすな――ッ!」
静香の叱咤が鋭く飛ぶ。

理人のドローンが夜空を切り裂き、怜の双剣が影を追う。
セレス隊は包囲網を展開し、ユリウスとセリナ、ガルドまでもが通りを塞ぐ。

「これだけの布陣、逃げ切れるものか!」
セレスが声を上げた。

しかし黒衣の男は霧のように路地を抜け、幻影を撒き散らしながら影に溶けていく。
「……ふ、ふはは……っ、しぶとい……しぶとすぎる……!」

結局――捕らえられず、夜の闇へと消えた。


城外れ

捕らえられたのは、利用された高官ただ一人。
「ち、違う! 私は騙されただけだ! 黒衣が――黒衣がぁぁ!」

兵士たちに縛り上げられ、脱走の罪を追加される。
彼の絶叫は、哀れな囮の末路を物語っていた。


黒衣の独白

廃墟に腰を下ろした黒衣の男は、額を押さえながら呻いた。

「……もうやだ、この王都……」
その声には疲労と苛立ちが滲んでいた。

だが瞳の奥にはまだ消えぬ光。
「――だが、諦めぬ。必ずや……この混沌を我がものにする」


そして翌日・王城

王城の廊下では、すでに新たな噂が飛び交っていた。

「黒衣の怪人、実は王家の落胤らしいぞ!」
「いや、亡霊だ。夜な夜な胃薬を盗みに来るらしい!」
「聞いたか? 黒衣は実は殿下の影武者で、胃痛で倒れたら交代するんだと!」

「なんだそれ!?」「いや、俺は信じるぞ」

兵士たちの間で尾ひれがつき、庶民の間では「黒衣の怪人は王都に恋人を探しに来ている」という噂にまで発展していた。

井戸端会議の女中たちが、深刻そうな顔で口を揃える。
「……つまり、黒衣様は愛に飢えているのよ」

「ちょ、ちょっと待て! 俺はそんな設定、認めてない!」
遠く離れた廃墟で、黒衣が誰に聞かせるでもなく絶叫していた。


村・寄合所の広間

「ぷっ……あはははははっ!」
倫太郎は畳に転げ回る勢いで笑っていた。

「“黒衣の怪人は恋人を探してる”って……誰がそんなの信じるんだよ!」
腹を抱えて涙を浮かべる倫太郎に、巽も机を叩いて大爆笑。

「しかも“胃薬を盗みに来る亡霊”とか! 黒衣さん胃弱すぎだろ!」
「ぶははっ、やめろ巽……っ! 笑いすぎて腹筋が……!」

渚は袖で口元を隠しながらも、肩を震わせていた。
「……ふふ。王都の噂とは、いつもこうも突飛ですね」

颯真だけが冷静に首を振る。
「……情報の信頼性はゼロだ。」


甚八郎の報告

そこへ、忍びの一人が駆け込んできた。
「甚八郎様、不協和の気配が弱まっております。恐らく、王都の騒ぎで干渉が途切れたかと」

「うむ……」
甚八郎は深く頷き、渋い声で言った。
「いかなる理由であれ、結果としては良き兆しよ」


玉蓮の商魂

一方その頃――。

「ほっほっほ。『愛に飢えた黒衣』……これは売れますぞ!」
玉蓮はちゃっかり自作の薄い小冊子を広げ、村の通りで売り歩いていた。

「黒衣の男、王都に愛を求めて彷徨う! “禁断の恋編”はこちら限定版でございますぞ~!」

村人たちは面白半分に買い求め、あっという間に在庫は減っていく。


――こうして王都のシリアスな騒動は、村では“喜劇”と“商機”へと変わっていったのであった。
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