俺がワガママ王子なわけがない! ~交通事故で転生したら、評判最悪の王族になっていた件~

角砂糖

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第五章 安息と騒乱――渚は笑い、倫太郎は赤面

休暇と引きこもり延期、寄合所でバレた正体

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王都・謁見の間

豪奢な玉座に、アレクシス王子の姿で腰を下ろす倫太郎。
横には渚が控え、周囲を取り囲むのは重臣や侍女たち。

「余は……深く失望した」
堂々とした口調で放たれた一言に、場が凍りついた。

召喚石を使ってしまった侍女は、震えながら頭を下げている。
メイド長は青ざめ、重臣の視線に晒されていた。

倫太郎は深く息を吐き、渚の小声の補佐を受けながら裁定を下す。

「召喚石を扱った侍女は、奉仕活動と再研修に処す。――己の過ちを悔い、学び直せ」

「……は、はいっ……!」

「そして、メイド長は再教育だ。侍女の心を追い詰めるなど、あってはならぬ」

「……ひ、ひえぇっ……」
情けない悲鳴を上げ、メイド長は引き立てられていった。

被害が最小限に抑えられたことで、なんとか場は収まった。
だが重臣たちの間では「王子のご決断は厳しくも的確」と評価される一方で――
場の空気をさらに重くしていた。

倫太郎は玉座を離れると、深く息を吐き出す。
「……よし、これで体裁は整ったな」

渚は苦笑しながら頷く。
「お疲れさまでした。……でも」

倫太郎は玉座を振り返り、仰々しく手を振り上げて宣言した。

「余は深く失望した。よって――しばし謁見を控える。引きこもりを延期する!」

「えぇぇ……」
重臣たちの嘆息を背に、倫太郎はくるりと背を向ける。


王子としての役目を果たした後、こっそりと正体を解いた倫太郎は、渚と共に村へ帰還した。

「……やっぱり俺は、王都よりこっちの方が性に合ってるわ」
村の空気を吸い込み、肩の荷を下ろすように呟く倫太郎。

渚はそんな彼を見て、そっと微笑むのだった。


村・寄合所

「……はぁ。王子様、また“引きこもり延期”か」
報告を受けた尊は額に手を当て、苦笑を浮かべる。

透花は困ったように目を細め、剛士は覆面の下で肩を震わせた。
「……いや、わかりやす過ぎだろ。あれは完全に倫太郎だ」

「……あ」
口をついて出た剛士の言葉で、場の空気が一瞬止まった。

倫太郎は固まり、次の瞬間には頭を抱えて机に突っ伏す。
「やっべぇぇぇ……!」

巽が大げさに手を叩き、にやりと笑う。
「だったら話は早ぇじゃねぇか! ここで事情、ぶっちゃけちまえよ!」

颯真も腕を組み、冷静に頷いた。
「どちらにせよ、いずれは伝える相手だ。タイミングが早まっただけだ」

渚はくすっと微笑み、柔らかく倫太郎の背に手を置く。
「……無駄に悩むより、すっきりしてしまいましょう」

「……だよなぁ」
観念した倫太郎は、顔を上げて一同を見渡した。
そして、自分が“王子の中身”であることを包み隠さず語った。

尊と透花、剛士は目を丸くしながらも、すぐに真剣な顔で頷く。
「……なるほど。だから城と村を行き来してたわけか」

「お前らしいといっちゃお前らしいな、倫太郎」
尊が笑い混じりに肩を叩く。

――そのとき。

「ふむ……」
ずっと静かに茶を啜っていた甚八郎が、ゆっくりと口を開いた。

「わしは、最初から気づいておった」

「「「えっ!!?」」」
倫太郎たちが一斉に叫ぶ。

甚八郎は髭を撫でながら、泰然と笑みを浮かべた。
「王子の気配と、そなたの気配。……似ておるようで、まるで違う。気づかぬはずがなかろう」

倫太郎は顔を真っ赤にし、崩れ落ちる。
「マジかよぉぉ……! 最初からバレバレだったのかよ……!」

巽と颯真は声を上げて笑い、渚は肩を揺らして目を細めた。
「……倫太郎、安心してください。もう隠す必要はありません」

こうして、村の仲間たちへも倫太郎の秘密は共有されることとなった。


尊が懐から端末を取り出し、慣れた動作で通信を開く。
映し出されたのは、王都のギルド長にして部隊長でもある静香の姿だった。

「……倫太郎から、直接お話を」
尊が促すと、倫太郎は居住まいを正し、画面に向かって頭を下げる。

「えっと……アレクシス王子の中身が俺だってこと、尊たちにバレちゃいました。俺の口から伝えるべきだと思って……」

静香は一拍おいてから、穏やかに頷いた。
「……そうですか。実は、明日のミーティングで第二部隊に共有する予定でした。ですから、特に問題はありません」

「なっ……そ、そうだったのか……」
倫太郎は目を丸くし、頭をかいた。

隣で聞いていた甚八郎が、ゆったりと髭を撫でながら口を開く。
「わしは初めから気づいておった。……尊らが知る時が来た、それだけのことよ」

尊も透花も剛士も、真剣な顔で頷く。
「隠す必要がなくなった、俺たちはこれからも仲間として動くだけだ」

静香も画面越しに微笑んだ。
「ええ。その通りです。……ですので、明日のミーティングは取りやめにしましょう」

「えっ!? じゃあ……」
倫太郎がきょとんとすると、静香は柔らかく言葉を添える。

「倫太郎と渚は、どうか明日も休暇を。――ゆっくりお過ごしなさい」

渚は思わず頬を緩め、倫太郎は肩の力を抜いて深く息を吐いた。
「……助かる。じゃあ、もう少し休ませてもらうわ」

こうして、“アレクシス=倫太郎”の秘密はアルモニカ全員に正式に共有され、翌日も倫太郎と渚の甘酸っぱい休暇が続くこととなった。
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