3 / 5
王子(倫太郎)の災難
しおりを挟む
昼下がりの城下町。
倫太郎は黒髪・学生服姿で街を歩いていた。
(よし、今の格好なら誰も“王子”とは思わないはず……!)
渚とミラの「護衛」も完璧。今日は普通の買い物だ。
……のはずだった。
八百屋の前
「おお、坊主! 力持ちそうだな!」
「えっ!? いや俺そんなでも……」
「ちょうどいい、芋袋を二十袋、裏の倉庫まで運んでくれ!」
「ちょ、ちょっと待っ……!?」
気づけば肩に積まれる袋。
腰を抜かしそうになりながら、倫太郎は芋まみれに。
渚は涼しい顔で。
「良い鍛錬になりますね」
ミラは慌てて。
「り、倫太郎様の腰が折れてしまいます!」
酒場の前
「おっ、そこの若造! 暇なら腕相撲の相手しろ!」
「えっ、俺!? 無理無理!」
「いいから座れぇ!」
ガシィッ!
筋骨隆々の冒険者に手首を握られ、テーブルに引きずり込まれる。
「いざ勝負!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 俺ほんとにただの通行人――」
結果、あっさり机にめり込む倫太郎の腕。
「おお! そこそこ粘ったな! 根性あるじゃねぇか!」
「……ぐえぇ……」
露店の広場
「ちょうど人手が! そこの子、マジックショーの助手やって!」
「ええっ!? 俺!? なんで!?」
「さあ箱に入って! 切られるだけだから!」
「切られる!? やめっ……!!」
ドサッ!
箱に押し込まれる倫太郎。
ナイフがひゅんひゅん突き刺さり――観客は大喝采。
「わぁ、すごい!」
「さすが大道芸!」
「……死ぬかと思った……!」
夕方
芋まみれで腕を押さえ、髪に紙吹雪をくっつけた倫太郎。
「……俺、なんでこんな目に……」
声がかすれて、情けない呻きになった。
そんな俺を見下ろしながら、渚は静かに息をついた。
乱れも汚れもない銀髪が、夕陽を受けて柔らかく光る。
「だから言ったでしょう、“普通の買い物”では済みませんと」
涼しい顔で告げるその声音は、まるで予言者。
俺の苦労を見透かしたようで、妙に悔しい。
横でミラは両手を胸の前で握りしめ、瞳をきらきら輝かせていた。
「す、すみません……でもなんだか、とても……楽しそうでした!」
「楽しそう!?」
俺はがばっと顔を上げた。
いや、確かに……途中までは面白かった気もする。
八百屋のおっちゃんが「おお助かった!」と笑った顔とか、酒場の兄ちゃんが「根性あるじゃねぇか!」と肩を叩いてくれた感触とか……。
気づけば俺は、息を吐きながら苦笑していた。
「……そうだな。楽しそうに見えたんなら……まあ、いいか」
その瞬間、渚が差し出した布で肩の埃を払ってくれた。
「お疲れさまでした、倫太郎」
その仕草は母親のように穏やかで、姉のように頼もしかった。
ミラは真っ赤になりながらも、小さな声で付け足す。
「わ、私……またご一緒したいです」
俺の胸の奥に、熱いものがじわりと広がった。
たとえ災難続きでも、この二人が笑ってくれるなら――それは、悪くない一日だった。
倫太郎は黒髪・学生服姿で街を歩いていた。
(よし、今の格好なら誰も“王子”とは思わないはず……!)
渚とミラの「護衛」も完璧。今日は普通の買い物だ。
……のはずだった。
八百屋の前
「おお、坊主! 力持ちそうだな!」
「えっ!? いや俺そんなでも……」
「ちょうどいい、芋袋を二十袋、裏の倉庫まで運んでくれ!」
「ちょ、ちょっと待っ……!?」
気づけば肩に積まれる袋。
腰を抜かしそうになりながら、倫太郎は芋まみれに。
渚は涼しい顔で。
「良い鍛錬になりますね」
ミラは慌てて。
「り、倫太郎様の腰が折れてしまいます!」
酒場の前
「おっ、そこの若造! 暇なら腕相撲の相手しろ!」
「えっ、俺!? 無理無理!」
「いいから座れぇ!」
ガシィッ!
筋骨隆々の冒険者に手首を握られ、テーブルに引きずり込まれる。
「いざ勝負!」
「ちょ、ちょ、ちょっと待って! 俺ほんとにただの通行人――」
結果、あっさり机にめり込む倫太郎の腕。
「おお! そこそこ粘ったな! 根性あるじゃねぇか!」
「……ぐえぇ……」
露店の広場
「ちょうど人手が! そこの子、マジックショーの助手やって!」
「ええっ!? 俺!? なんで!?」
「さあ箱に入って! 切られるだけだから!」
「切られる!? やめっ……!!」
ドサッ!
箱に押し込まれる倫太郎。
ナイフがひゅんひゅん突き刺さり――観客は大喝采。
「わぁ、すごい!」
「さすが大道芸!」
「……死ぬかと思った……!」
夕方
芋まみれで腕を押さえ、髪に紙吹雪をくっつけた倫太郎。
「……俺、なんでこんな目に……」
声がかすれて、情けない呻きになった。
そんな俺を見下ろしながら、渚は静かに息をついた。
乱れも汚れもない銀髪が、夕陽を受けて柔らかく光る。
「だから言ったでしょう、“普通の買い物”では済みませんと」
涼しい顔で告げるその声音は、まるで予言者。
俺の苦労を見透かしたようで、妙に悔しい。
横でミラは両手を胸の前で握りしめ、瞳をきらきら輝かせていた。
「す、すみません……でもなんだか、とても……楽しそうでした!」
「楽しそう!?」
俺はがばっと顔を上げた。
いや、確かに……途中までは面白かった気もする。
八百屋のおっちゃんが「おお助かった!」と笑った顔とか、酒場の兄ちゃんが「根性あるじゃねぇか!」と肩を叩いてくれた感触とか……。
気づけば俺は、息を吐きながら苦笑していた。
「……そうだな。楽しそうに見えたんなら……まあ、いいか」
その瞬間、渚が差し出した布で肩の埃を払ってくれた。
「お疲れさまでした、倫太郎」
その仕草は母親のように穏やかで、姉のように頼もしかった。
ミラは真っ赤になりながらも、小さな声で付け足す。
「わ、私……またご一緒したいです」
俺の胸の奥に、熱いものがじわりと広がった。
たとえ災難続きでも、この二人が笑ってくれるなら――それは、悪くない一日だった。
0
あなたにおすすめの小説
無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件
fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。
実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。
追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。
そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。
これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します
burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。
その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。
転生貴族の領地経営〜現代知識で領地を豊かにして成り上がる
初
ファンタジー
ネーデル王国の北のリーディア辺境伯家には天才的な少年レイトがいた。しかしその少年の正体は現代日本から転生してきた転生者だった。
レイトが洗礼を受けた際、圧倒的な量の魔力やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のレイトを辺境伯領の北の異種族の住むハーデミア領を治める領主とした。しかしハーデミア領は貧困に喘いだ貧乏領地だった。
これはそんなレイトが異世界の領地を経営し、領地を豊かにして成り上がる物語である。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜
幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。
転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。
- 週間最高ランキング:総合297位
- ゲス要素があります。
- この話はフィクションです。
聖女として召還されたのにフェンリルをテイムしたら追放されましたー腹いせに快適すぎる森に引きこもって我慢していた事色々好き放題してやります!
ふぃえま
ファンタジー
「勝手に呼び出して無茶振りしたくせに自分達に都合の悪い聖獣がでたら責任追及とか狡すぎません?
せめて裏で良いから謝罪の一言くらいあるはずですよね?」
不況の中、なんとか内定をもぎ取った会社にやっと慣れたと思ったら異世界召還されて勝手に聖女にされました、佐藤です。いや、元佐藤か。
実は今日、なんか国を守る聖獣を召還せよって言われたからやったらフェンリルが出ました。
あんまりこういうの詳しくないけど確か超強いやつですよね?
なのに周りの反応は正反対!
なんかめっちゃ裏切り者とか怒鳴られてロープグルグル巻きにされました。
勝手にこっちに連れて来たりただでさえ難しい聖獣召喚にケチつけたり……なんかもうこの人たち助けなくてもバチ当たりませんよね?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる