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ー地底からの使者ー
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高千穂は空気が澄んでいて空が高い。
夜は周りに明かりが無いせいもあるが、空に誰かが星を張り付けたのではないだろうかと思うような数限りない星が瞬いている。
タケル達はしばらく夜空を見上げた。
「なぁ、アビ、リサ…」
「ん~?」
阿比留が上を向いたままで何気なく返事をした。
「生き物がいる所って、この地球だけと思うか?」「どうしたん?急に…」
リサがタケルを見た。
タケルも夜空を見上げたままだ。
「無限の宇宙には数えきれない程の星があるやろ?その無数の星の中で、本当に生命体の星はこの地球だけなんやろうか!?」
「…」
「俺は、この地球のように生物がいるような星がどっかにあるような気がするんよ」
「あぁ、この星の数を見てるとなんかそんな気もしてくる…。意外に、俺たちの近くにもそんなのが居たりして…」
と、ちょっと笑った。
「またぁ…。でも、本当に綺麗やね。南阿蘇村があんな事になってるのが信じられんくらい」
三人は夜空を見上げたままで、近くにありながらも変わり果てた南阿蘇村に心を馳せて、一刻も早く南阿蘇村が元に戻れることを願っていた。
その夜は三人で祖母信子の家に泊まり、夜遅くまで話しをして過ごした。
翌朝リサは、タケルと阿比留を天岩戸神社に案内した。
天岩戸神社の西本宮は、神社には欠かせないはずの《本殿》を持たず、御神体となる天岩戸を遥拝所から拝むようになっている。
三人で手を合わせたあと、駐車場へ歩いて行く途中でリサのスマホが鳴った。
リサの兄からだった。
「南阿蘇村が!?わかった、すぐに帰るけん!」
「どうした?」タケルが尋ねた。
「南阿蘇村が山火事らしか…」
タケル達は一度祖母信子の家に戻り、信子も乗せて南阿蘇村へ車を走らせた。
南阿蘇村は、阿蘇山の裾野の森が白い煙りを次々と空に上げていた。
「兄ちゃん!」
リサが兄にかけよった。
「おぅ、リサ。タケル君も阿比留君も悪かね、せっかくの休みに…。ばあちゃんも来てくれたとね!?」
「ちょっと心配になったけん」
信子も山火事に目をやった。
「どんなふうね?」
「この辺の人達は今、火に対しては特に神経質になって気を付けとったんやけど、何かの原因で火が付いたらしか…。もう、あっという間やったよ」
「そうやろうね!これだけ乾燥しとったら、火の走るのも早かろう!」
タケル達の周りには、うっすらと白い煙が流れていた。
「ちょっと!あれ!!」
リサが阿蘇山の上空を指をさして、突然大声をあげた。
「ほら、あれ!あれは何? 飛行機!?」
リサの指の先には、阿蘇山の噴煙と山火事の煙りの合間で、飛行機ほどの赤黄色い物体が見え隠れしていた。
「飛行機!?
あの飛行機、燃えとる!?」
タケルが驚き、一歩退いた。
「朱雀たい…!」
聞き覚えのあるおちついた声が、タケル達の背後から聞こえた。
「キクちゃん!!」
信子が目を見開いて驚いた。
キクは燃える物体を見上げている。
そこに立っているキクは、昨日信子の家で楽しげに居間に座っていたキクではなく、眉間を寄せて険しい顔をしたキクだった。
「あれは飛行機じゃなか、火の鳥、朱雀たい」
リサと阿比留は、この場で不謹慎だと思いながらも吹き出してしまった。
「キクおばちゃん!ちょっと、すざくっ…」
「朱雀だ!!」
リサの兄が叫んで、リサの言葉をさえぎった。
キクが朱雀と言った大鳥は、頭から首にかけては金色で、胴体と翼は赤とオレンジの炎に包まれていた。
その翼を煙りの中で上下に動かしていた。
皆立ちすくんだままで、朱雀を目で追うだけが精一杯だった。
誰も何の言葉も口にしない。
「嘘やろ?…。今のこの時代に…!?」
しばらくして、阿比留が独り言のようにつぶやいた。
朱雀は、阿蘇山の上空を音も立てずにゆっくりと旋回している。
南阿蘇村の住人もいつの間にか集まり、何人かづつでかたまりを作って、朱雀の姿に驚いている。
誰もが黙ったままだ。
「あの朱雀は操られとるようやね。何かに憑かれとる…」
キクが口を開いた。
「キクちゃん…。キクちゃんは、なんでそんな事が分かると?」
「…」
「誰に操られとると!?」
「のぶちゃん…」
キクの斜め後ろから、信子の名を呼ぶ者がいた。
「えっ!!」
声の方を振り向いて、みんなが息をのんだ。
そこには、もう一人キクが立っていたのだ。
「のぶちゃん、詳しいことはあとで話すよ…」
「姉さん!朱雀は…!?」
「姉さん!?」
キクから姉さんと呼ばれた女は、阿蘇山の噴煙がのぼる脇をにらみつけた。
すると、突然サーッと身震いするような冷たい風が流れたかと思うとなま暖かい風に変わって吹き荒れ、小枝や枯れ葉を巻き上げた。
辺りが夕暮れのように暗くなると、阿蘇山の方向には黒く重たい雲が現れていた。
気味の悪いどす黒い色をした雲で、雨を降らすような雲ではない。
「キクちゃん、あれを見てん!」
キクの姉がにらみつけた阿蘇山の上には黒い雲が現れていた。
その黒い雲は少しずつ形を変えると、そこにスクリーンがあるかのような形を作った。
そして、その黒いスクリーンには、目がつり上がった不気味な女の顔が浮かびあがった。
「おろかな人間どもよ…」
不気味な女の声が辺りに響いた。
夜は周りに明かりが無いせいもあるが、空に誰かが星を張り付けたのではないだろうかと思うような数限りない星が瞬いている。
タケル達はしばらく夜空を見上げた。
「なぁ、アビ、リサ…」
「ん~?」
阿比留が上を向いたままで何気なく返事をした。
「生き物がいる所って、この地球だけと思うか?」「どうしたん?急に…」
リサがタケルを見た。
タケルも夜空を見上げたままだ。
「無限の宇宙には数えきれない程の星があるやろ?その無数の星の中で、本当に生命体の星はこの地球だけなんやろうか!?」
「…」
「俺は、この地球のように生物がいるような星がどっかにあるような気がするんよ」
「あぁ、この星の数を見てるとなんかそんな気もしてくる…。意外に、俺たちの近くにもそんなのが居たりして…」
と、ちょっと笑った。
「またぁ…。でも、本当に綺麗やね。南阿蘇村があんな事になってるのが信じられんくらい」
三人は夜空を見上げたままで、近くにありながらも変わり果てた南阿蘇村に心を馳せて、一刻も早く南阿蘇村が元に戻れることを願っていた。
その夜は三人で祖母信子の家に泊まり、夜遅くまで話しをして過ごした。
翌朝リサは、タケルと阿比留を天岩戸神社に案内した。
天岩戸神社の西本宮は、神社には欠かせないはずの《本殿》を持たず、御神体となる天岩戸を遥拝所から拝むようになっている。
三人で手を合わせたあと、駐車場へ歩いて行く途中でリサのスマホが鳴った。
リサの兄からだった。
「南阿蘇村が!?わかった、すぐに帰るけん!」
「どうした?」タケルが尋ねた。
「南阿蘇村が山火事らしか…」
タケル達は一度祖母信子の家に戻り、信子も乗せて南阿蘇村へ車を走らせた。
南阿蘇村は、阿蘇山の裾野の森が白い煙りを次々と空に上げていた。
「兄ちゃん!」
リサが兄にかけよった。
「おぅ、リサ。タケル君も阿比留君も悪かね、せっかくの休みに…。ばあちゃんも来てくれたとね!?」
「ちょっと心配になったけん」
信子も山火事に目をやった。
「どんなふうね?」
「この辺の人達は今、火に対しては特に神経質になって気を付けとったんやけど、何かの原因で火が付いたらしか…。もう、あっという間やったよ」
「そうやろうね!これだけ乾燥しとったら、火の走るのも早かろう!」
タケル達の周りには、うっすらと白い煙が流れていた。
「ちょっと!あれ!!」
リサが阿蘇山の上空を指をさして、突然大声をあげた。
「ほら、あれ!あれは何? 飛行機!?」
リサの指の先には、阿蘇山の噴煙と山火事の煙りの合間で、飛行機ほどの赤黄色い物体が見え隠れしていた。
「飛行機!?
あの飛行機、燃えとる!?」
タケルが驚き、一歩退いた。
「朱雀たい…!」
聞き覚えのあるおちついた声が、タケル達の背後から聞こえた。
「キクちゃん!!」
信子が目を見開いて驚いた。
キクは燃える物体を見上げている。
そこに立っているキクは、昨日信子の家で楽しげに居間に座っていたキクではなく、眉間を寄せて険しい顔をしたキクだった。
「あれは飛行機じゃなか、火の鳥、朱雀たい」
リサと阿比留は、この場で不謹慎だと思いながらも吹き出してしまった。
「キクおばちゃん!ちょっと、すざくっ…」
「朱雀だ!!」
リサの兄が叫んで、リサの言葉をさえぎった。
キクが朱雀と言った大鳥は、頭から首にかけては金色で、胴体と翼は赤とオレンジの炎に包まれていた。
その翼を煙りの中で上下に動かしていた。
皆立ちすくんだままで、朱雀を目で追うだけが精一杯だった。
誰も何の言葉も口にしない。
「嘘やろ?…。今のこの時代に…!?」
しばらくして、阿比留が独り言のようにつぶやいた。
朱雀は、阿蘇山の上空を音も立てずにゆっくりと旋回している。
南阿蘇村の住人もいつの間にか集まり、何人かづつでかたまりを作って、朱雀の姿に驚いている。
誰もが黙ったままだ。
「あの朱雀は操られとるようやね。何かに憑かれとる…」
キクが口を開いた。
「キクちゃん…。キクちゃんは、なんでそんな事が分かると?」
「…」
「誰に操られとると!?」
「のぶちゃん…」
キクの斜め後ろから、信子の名を呼ぶ者がいた。
「えっ!!」
声の方を振り向いて、みんなが息をのんだ。
そこには、もう一人キクが立っていたのだ。
「のぶちゃん、詳しいことはあとで話すよ…」
「姉さん!朱雀は…!?」
「姉さん!?」
キクから姉さんと呼ばれた女は、阿蘇山の噴煙がのぼる脇をにらみつけた。
すると、突然サーッと身震いするような冷たい風が流れたかと思うとなま暖かい風に変わって吹き荒れ、小枝や枯れ葉を巻き上げた。
辺りが夕暮れのように暗くなると、阿蘇山の方向には黒く重たい雲が現れていた。
気味の悪いどす黒い色をした雲で、雨を降らすような雲ではない。
「キクちゃん、あれを見てん!」
キクの姉がにらみつけた阿蘇山の上には黒い雲が現れていた。
その黒い雲は少しずつ形を変えると、そこにスクリーンがあるかのような形を作った。
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「おろかな人間どもよ…」
不気味な女の声が辺りに響いた。
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