俺をスランプに陥れたあの邪竜だけは死んでも許さない!

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第5話 フィリの手柄

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 ここは……、俺の家か。
 どうやらあの後気絶してしまい、自室の寝床まで運ばれたようだ。
 またパーティーに多大な迷惑をかけてしまったらしい。
 しかも今回は、パーティーに加入したばかりのフィリに無様な姿を見せてしまうというオマケ付きだ。
 死霊の騎士が言ったように、廃人になった方がいくらかマシだったかもしれない。

「あっ。やっと起きた」

 俺が瞼を開くと、待ち合わせていたかのように俺の枕元に腰掛けるフィリは得意げに微笑む。
 何かを催促されていることは分かる。
 そして、それが何か、も。
 だが今回ばかりは何の言い逃れもできまい。
 俺たちはフィリに助けられた。
 それは紛れもない事実だ。

「あー、すまん。お前がアイツらを倒してくれたんだよな? 礼を言う」
「まだカッセルは倒していないわよ。フィリの不意打ちは確かに効いた。でも直前でレジスト魔法(魔法耐性を上げる術式)を掛けられて、致命傷にはならなかったわ。死霊の騎士が追撃してきそうだったから、フィリに目くらましの一発をお願いして、何とか逃げて来れたの。アンタたち担いでここまで来るのチョー大変だったんだからね!」

 と、フィリよりも先にルイスが恨み節全開で事の顛末を話し出す。

「ハハハ……、面目ない……」

 ルイスの言葉に、クルーグはバツが悪そうに謝る。
 そうか。
 今回は俺だけじゃない。
 クルーグも耐性を持ち合わせていなかった。
 そう考えれば、少しだけ気が楽になる。
 そんなクルーグに対して、フィリは意味深な視線を送っていた。

「ん? フィリちゃん、どうしたの?」

 フィリの視線に気づいたクルーグが問いかける。

「い、いえ! なんでもありません! それよりマルちゃん。死霊討伐は叶わなかったとは言え、私のおかげである程度の体裁は保てた、ということでよろしいですね?」

 確かに……。
 諜報部隊の報告ではネクロマンサーは既に討伐され死霊の残党もわずか、ということだった。
 不意打ちを食らい、一時撤退ということにしておけばある程度メンツは保てるのかもしれない。
 だが、腐っても俺たちは勇者パーティーだ。
 表面的な期待値を真に受けてはいけない。
 この程度のイレギュラーを跳ねのけてこそ真の勇者であると、多くの人々は無意識的に思っていることだろう。
 もっとも、その潜在的な期待値すらもはや既にどん底である可能性もあるが。
 いずれにせよフィリのおかげで、王や大臣に合わせる顔までは失わずに済んだことは確かだ。

「あぁ、その通りだよ。マジで感謝してる。ルイスもありがとな。あの後、俺やクルーグを治療してくれたんだろ?」
「っ!? 別にアタシはそんな大したことしてないし……」

 ルイスは顔を赤くしながら、俺の感謝の意に応える。

「そ・れ・で! どうです? 私を正式にパーティーに加える気になっていただけましたか?」
「……分かった。この後、王に戦況の報告に行くから付いてこい」
「やったーっ! 私、頑張ります!」

 俺の答えを聞き、フィリは喜び勇んで見せた。

「あー、その前に聞きたいことがある。お前は何で王族伝承の術式を知っていたんだ?」
「へっ? 何のことですか?」
「とぼけんじゃないわよ。耐性がなければ立つことすら出来ないはずよ」
「いえ。何だか良く分からないですが、マルちゃんもクルーグさんも倒れていたので私も倒れたフリをすれば不意打ちできるかなー、なんて思ってやっただけなので。そう言えば、死霊の人が何かブツブツ言ってたかもしれませんね。あまり興味がなかったので良く覚えてませんが」

 フィリの言葉に俺たち三人は反応に窮する。
 なんなんだ、それは。
 相変わらず底の知れん女だ。
 俺はルイスを呼びつけ、耳元で疑問を投げかける。

「なぁルイス。こんなことあり得んのか?」
「こっちが聞きたいわよ……。一応最上級魔法よ。生まれつき完全耐性があるとしか考えられないわ。この子がしらばっくれてるだけかもしれないけど」

 納得のいかない様子でルイスは応える。
 そして、俺たちは今一度フィリを見る。
 フィリの屈託のない表情を見て、俺たちは力が抜ける。

 もうぶっちゃけ分からん……。
 というより、寝起きでこれ以上難しいことを考える余裕がない。

「……分かった。そういうことにしておく。しばらくしたら王宮に行くから準備しておけよ」
「はいっ! よろしくお願いします!」

 フィリの目的が明らかでない以上、彼女が何か隠しているのは明白だ。
 だが、今回の一連の出来事とは関連がない可能性だってある。
 きっかけはどうあれ、彼女はもうパーティーの一員だ。
 イチイチ疑心暗鬼になっていたら、またぞろチームが崩壊しかねない。
 ただでさえ、俺が原因でギクシャクした空気が流れているというのに。
 フィリはいつか目的を話すと約束してくれた。
 それだけで、彼女を信じる理由としては十分だろう。
 少なくとも、今は。
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