俺をスランプに陥れたあの邪竜だけは死んでも許さない!

AT限定

文字の大きさ
6 / 11

第6話 報告

しおりを挟む
「どうやら手痛くやられたようだな、マルク」

「はい。諜報部隊の報告とは異なり、洞窟は死霊の残党で満ち満ちておりました。ネクロマンサーも健在です。こちらも不意打ちを試みましたが、既のところで防がれてしまいました。痛恨の極みです」

 俺とフィリは王宮に出向き、王や大臣に今回の一連の流れを報告している。
 これでいい。
 諜報部隊の過失も主張しつつ、こちらも出来る限りの対応をした旨を伝える。
 これである程度こちらの立場は守れる。

「そうか……。では無理もない、か」

 王はやや不服そうな表情を浮かべるが、一応は納得したようだ。
 そんな王を尻目に大臣が皮肉を漏らす。       

「なるほど……。あなたは諜報部隊の報告が誤っていたばかりに不意を突かれ撤退した、と言いたいのですね?」

 コ、コイツはっ!!
 イチイチ嫌味を言わなければ、気が済まないのか?

「そ、そういう訳ではありませんっ! ただ、事実として共有する必要があると思いましたので」

 血が上った頭を必死に抑えつけながら、弁明を試みる。

「そうですか。陛下。勇者・マルクは、病み上がりです。やはりこれ以上無理をさせるべきではありません」
「問題ないです! もう不覚はとりません!」

 大臣の言葉に俺は食い気味に応え、王に強い視線を送る。
 大臣は深く溜息をつき、王の返事を無言で待つ。
 王は俺と大臣の双方に目配せし、嘆息を交えつつ言葉を溢す。

「諜報部隊の報告に誤りがあったことはこちらの落ち度だ。本当に申し訳ない」

 そう言うと、王は深々と頭を下げて見せた。
 そして更に続ける。

「勇者・マルク。お主はこの国を、ひいては世界を救うの存在だ。大臣も言うように、無理を押して取返しのつかない事態を招いて欲しくはない。それは分かってくれるな?」
「はい……」
「うむ。して……、勝算はあるのか?」
「はい。その点について、一点報告があります」

 俺は横に跪くフィリに視線を送る。
 フィリは無言で頷く。

「陛下もかねてよりご懸念されていたとは思いますが……、我々の場合は私とクルーグが攻撃に回ると、補助や回復が手薄になります。それが結果として1年半前の失態に繋がってしまいました。私としては今後の戦線を安定させるため人員を補充するべきと、考えます」
「ふーむ」

 王はフィリの方をまじまじと物色しながら頷く。

「そこで陛下にお目通りいただきたい人材がおります。これなるはエンゲルの街出身の魔導士、フィリでございます」
「フィリと申します」

 王も大臣も怪訝な表情を崩さない。
 無理もない。
 ましてや、エンゲルなどといった聖都にとって縁もゆかりもない街の出身ともなれば警戒するのは自然だ。
 まぁそれについては、俺自身まだ疑っている部分もあるが……。
 だから、この場で信頼を勝ち取るためには実績を主張するしかない。

「彼女は魔導士としての経験こそ浅いですが、潜在能力は申し分ありません。実戦において機転も利きます。先ほど死霊たちに不意打ちを試みたと申しましたが、それもこのフィリが画策したこと。これにより一時的に劣勢を覆し、死霊たちに一矢報いることが出来ました」
「……結果的に撤退していることに変わりないのでは? それにこちらの手の内を一つ晒してしまっては、今後の戦況に影響するでしょう」

 大臣は呆れながら、俺の言い分に反論する。
 さて、ここからが勝負だ。

「ポイントはそこです。防がれたとは言え、フィリの不意打ちは死霊たち、特に主であるネクロマンサーにとってはとなったことは事実です。敵はこちらの動きを警戒し、守りを固めるに相違ありません」

 俺がそう言うと、フィリが少し気まずそうな視線を向ける。
 当然ながら、俺は気絶していたからフィリの放った一発をどれほどのものか目の当たりにしていない。
 しかし、敵が咄嗟にレジスト魔法をかけるほどの威力であったことに間違いはない。
 だから、これくらいの脚色は許容範囲だろう。

「……それが問題なのでは? こちらの動きに備えられて、あなたたちは対応できるのですか?」

 大臣のボルテージが、あからさまに高まってきたことを感じる。
 やはりこの男は根本的に俺という人間を信用していないようだ。

「敵が守りに徹しているからこそ、その間は周囲の街が脅かされることはありません。こちらが体勢を立て直す時間も稼げます。そして、守りに徹しているなら、その裏をかきやすい、ということ」

「では、何か具体的に策がある、ということですね?」

 俺は無言で頷き、じっと大臣の顔を凝視した。

「……そうですか。詳しくは聞きません。先ほど、暫定勇者パーティーから、近い内に邪神城へ乗り込む旨の連絡をいただきました。我々としても死霊の洞窟にかまけている時間はありません」

 本当にこの男は……。
 もういい。
 イチイチこの程度の減らず口を気に留めていては、心が何個あっても足りない。

「それで、陛下。フィリをパーティーに加える件、認めていただけるでしょうか?」
「……まぁ構わぬが。だが先ほども言った通り、危険な橋は渡らないでくれ。暫定勇者たちが健闘してくれてはいるが、邪神を倒すのは飽くまでもお主だ。それだけは心に留めておいてくれ」
「はっ。ありがとうございます」
「うむ。では下がれ」

「…………」

 俺はまだ話していないことがある。
 果たして、これを共有するべきなのか。
 耐性については、ルイスから術式の詳細を聞けば身につけられるはずだ。
 ここで味方同士余計な軋轢を生み、疑心暗鬼になる必要はあるのだろうか。
 俺の中で葛藤が生まれ始めた時、フィリが何かを促すような視線を向けてきた。

 話せ、ということか。
 確かに事実を明らかにするに越したことはない。
 だが……。

「どうした? まだ何かあるのか」

 俺の様子を不審に思ったのか、王はその続きを催促する。
 仕方ない。
 やはりこの流れでは話さざるを得ない。

「陛下。もう一つ報告があります。ネクロマンサーが放った特異魔法・スコトス・カストリアについて、です」
「なにっ!?」

 王の顔色が露骨に変わったことが分かる。

「まさか王族肝いりの術式が邪神一派の口から飛び出すとは思いませんでした。お恥ずかしい話、私とクルーグには耐性がなくヤツの術中に嵌ってしまいました。その他にも、ネクロマンサー配下の死霊の騎士の剣術は、魔族の用いる型とは思えませんでした。まさかとは思いますが……、王宮内に彼らと通ずるものが」

 俺が言い終える前に、大臣が血相を変え激昂する。

「勇者・マルク!! 滅多なことを申されるな!! 我らの中に裏切り者がいるとでも!?」
「私は飽くまで疑惑を提起しているだけっ!! 万が一、私の言う通り内通者がいた場合、大臣殿はどう責任を取るおつもりか!?」
「っ!?」

 俺の反論に大臣は二の句が継げないようだ。

「陛下。こうした事実がある以上、検証はされるべきと存じます」
「……分かった。それについてはこちらで調査を行うとしよう。お主は帰って休め」
「はい。ありがとうございます。では失礼致します」

 王からお墨付きを得た俺たちは、大臣の苦々しい顔を横目に謁見の間を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/20、第一章の40話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

弟に裏切られ、王女に婚約破棄され、父に追放され、親友に殺されかけたけど、大賢者スキルと幼馴染のお陰で幸せ。

克全
ファンタジー
「アルファポリス」「カクヨム」「ノベルバ」に同時投稿しています。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...