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第1章 ラスラ領 アミット編
41 夜風に乙女
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___感謝祭の夜。
アーガイル家は騒がしい。
「じゃ・か・らっ! そんなもん『デッドグリーンプラント』一択に決まっておろう!!」
と、一歩も引かない様子のアイリーン。
足元には酒瓶が転がって踏み場もない。
「ふざけんな! 『デッドレッドプラント』に決まってんだろうが!!」
と、こちらも負けず劣らずのシルビアさん。
「分かっておらん! 全然分かっておらんぞ!!」
「こんのロリババアがー!!」
「なんじゃとトサカ頭! 犯罪者ヅラがっ!」
とうとう二人は取っ組み合いを始めた。
二人の対格差は二倍近くにも及んでいたが、俊敏なアイリーンが一歩上手だ。
「やれやれー! アイリーン様、このバカの根性叩き直してやってください!」
「ちょっと、ガーネットまで囃し立てないでくださいよー」
あー……床がお酒でベトベトだ……
「なあ、ペリドット。一体全体二人は何の言い争いをしてるんだ?」
さっき来たばかりのリディアが僕に耳打ちをした。
突然の囁きにビクッとする。
「最初こそ仲良く飲み始めてたんだけどさ……酒のつまみに最適な魔獣の話が出た途端に、意見を違えちゃったみたいなんだ……」
「えっ、魔獣を食べるの……?」
「冒険者のやることは理解に苦しむよ……」
二人は更に白熱した様子で持論を展開する。
「グリーンの方が豊潤で、なおかつ食感が上じゃ! 異論は認めんぞ!」
「その見解はレッドの深みのある甘みを無視してやがる! ババアは全然わかっちゃいねえ!」
「もう二人ともやめてくださいよ! 僕のうちが壊れてしまいます!」
意に介さずといったところか……
既に泥酔状態の二人に何を言っても無駄なようだ。
僕は諦めてベランダに夜風を浴びに出た。
ベランダから眺める町は賑やかで明るい。
きっとたくさんの人々が僕達と同じように騒いでいるのだろう。
僕はこの町のそんな騒々しさが嫌いじゃなかった。
一人そんなことを思っていると、ベランダにサラとガーネットがやってきた。
僕は反射的に物陰に隠れてしまった。
何故そうしたのかは分からないし、そうしなければ良かったと後悔するのだが……
サラとガーネットお嬢様は椅子に腰かけ、しばらく黙って町明かりを眺めている。
するとガーネットお嬢様が口を開いた。
「ねえ。サラは好きな人とかいるの?」
僕は耳をそばだてた。
愛する妹の思い人のことは少なくとも知っておかなければいけない。
そんな謎の使命感が僕の精神の主軸にある。
「うーん、今はいないかなー。
とにかく今は勉強を頑張らなきゃだし、私に彼氏ができた日にはお兄ちゃんが何をしでかすかわからないしね。ふふ」
ほっ。
さすがはサラ。
学生の本分をわきまえていらっしゃる。
既に学内トップの優秀な成績にも関わらず、サラは更に上を目指しているのか……
僕と血が繋がっているとは思えないほどの勤勉だ……
そういえば……サラは将来何になりたいんだろう?
今の成績なら何にでもなれそうなのだけれど、ちゃんとした目標をサラ自身の口から聞いたことは無かったよな……
「ペリドットはサラにべったりだもんね……異常なくらい……
でも、サラはこんなに綺麗なんだもの、男の子は放っておかないでしょ?」
「そんなことないよ。
それに何だか同級生の男の子って、子供に見えちゃってダメみたい。
お兄ちゃんのことを近くで見てきたからかな?」
「サラってペリドットのことが大好きなんだね」
「うん。大好きだよ。
だってお兄ちゃんは私の英雄だもん」
感無量。
生きてきて良かった。
生れて来て良かった。
もはや僕は今日死んだって構わない。
あれ? 死亡フラグ立ってますか?
「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「ううん。ガーネットちゃんの話も聞きたいなって思ったの」
「わ、私の話!?」
「だって、誰かに好きな人を聞くっていうのは、そのこ自身が恋をしている証拠だもん」
「サラは鋭いのね……
白状するわ。私には好きな人がいるの」
「やっぱり! どんな人なの? お姉さんに話してごらん?」
普段見ることの無いサラが居た。
お姉さんか……
もしもサラが僕のお姉さんだったら……
『___もう! ペリドットはいつまでお寝坊さんなのかな? 早く起きないとお姉ちゃんが添い寝しちゃうぞっ』
『サラ姉ちゃん……やめてくれよ。僕はもう子供じゃないんだ』
想像してみると、それはそれで最高だった。
面倒見のいいサラのことだ、きっと弟の僕を甘やかしてくれるだろう。
『ほらペリドット。お姉ちゃんが洗ってあげるからこっちおいで』
『サラ姉ちゃん……やめてくれよ。僕はもう子供じゃないんだ……ほら___』
いかんいかん。妄想が過ぎるぞ僕。
この先は危険だ。帰って来れなくなる。
落ち着こう、今はガーネットお嬢様の恋バナの最中だ。
集中して聞こうじゃないか。
ガーネットお嬢様は自信なさげに話し始めた。
「その人は私よりもずっと年上で遠い人。私なんか眼中にないのよ……」
「届かない恋なのね……どうしてその人のことが好きになったの?」
「うん。私が今よりずっと子供の頃にね、彼は突然、私の前に現れたの______」
アーガイル家は騒がしい。
「じゃ・か・らっ! そんなもん『デッドグリーンプラント』一択に決まっておろう!!」
と、一歩も引かない様子のアイリーン。
足元には酒瓶が転がって踏み場もない。
「ふざけんな! 『デッドレッドプラント』に決まってんだろうが!!」
と、こちらも負けず劣らずのシルビアさん。
「分かっておらん! 全然分かっておらんぞ!!」
「こんのロリババアがー!!」
「なんじゃとトサカ頭! 犯罪者ヅラがっ!」
とうとう二人は取っ組み合いを始めた。
二人の対格差は二倍近くにも及んでいたが、俊敏なアイリーンが一歩上手だ。
「やれやれー! アイリーン様、このバカの根性叩き直してやってください!」
「ちょっと、ガーネットまで囃し立てないでくださいよー」
あー……床がお酒でベトベトだ……
「なあ、ペリドット。一体全体二人は何の言い争いをしてるんだ?」
さっき来たばかりのリディアが僕に耳打ちをした。
突然の囁きにビクッとする。
「最初こそ仲良く飲み始めてたんだけどさ……酒のつまみに最適な魔獣の話が出た途端に、意見を違えちゃったみたいなんだ……」
「えっ、魔獣を食べるの……?」
「冒険者のやることは理解に苦しむよ……」
二人は更に白熱した様子で持論を展開する。
「グリーンの方が豊潤で、なおかつ食感が上じゃ! 異論は認めんぞ!」
「その見解はレッドの深みのある甘みを無視してやがる! ババアは全然わかっちゃいねえ!」
「もう二人ともやめてくださいよ! 僕のうちが壊れてしまいます!」
意に介さずといったところか……
既に泥酔状態の二人に何を言っても無駄なようだ。
僕は諦めてベランダに夜風を浴びに出た。
ベランダから眺める町は賑やかで明るい。
きっとたくさんの人々が僕達と同じように騒いでいるのだろう。
僕はこの町のそんな騒々しさが嫌いじゃなかった。
一人そんなことを思っていると、ベランダにサラとガーネットがやってきた。
僕は反射的に物陰に隠れてしまった。
何故そうしたのかは分からないし、そうしなければ良かったと後悔するのだが……
サラとガーネットお嬢様は椅子に腰かけ、しばらく黙って町明かりを眺めている。
するとガーネットお嬢様が口を開いた。
「ねえ。サラは好きな人とかいるの?」
僕は耳をそばだてた。
愛する妹の思い人のことは少なくとも知っておかなければいけない。
そんな謎の使命感が僕の精神の主軸にある。
「うーん、今はいないかなー。
とにかく今は勉強を頑張らなきゃだし、私に彼氏ができた日にはお兄ちゃんが何をしでかすかわからないしね。ふふ」
ほっ。
さすがはサラ。
学生の本分をわきまえていらっしゃる。
既に学内トップの優秀な成績にも関わらず、サラは更に上を目指しているのか……
僕と血が繋がっているとは思えないほどの勤勉だ……
そういえば……サラは将来何になりたいんだろう?
今の成績なら何にでもなれそうなのだけれど、ちゃんとした目標をサラ自身の口から聞いたことは無かったよな……
「ペリドットはサラにべったりだもんね……異常なくらい……
でも、サラはこんなに綺麗なんだもの、男の子は放っておかないでしょ?」
「そんなことないよ。
それに何だか同級生の男の子って、子供に見えちゃってダメみたい。
お兄ちゃんのことを近くで見てきたからかな?」
「サラってペリドットのことが大好きなんだね」
「うん。大好きだよ。
だってお兄ちゃんは私の英雄だもん」
感無量。
生きてきて良かった。
生れて来て良かった。
もはや僕は今日死んだって構わない。
あれ? 死亡フラグ立ってますか?
「どうしたの? 私の顔に何かついてる?」
「ううん。ガーネットちゃんの話も聞きたいなって思ったの」
「わ、私の話!?」
「だって、誰かに好きな人を聞くっていうのは、そのこ自身が恋をしている証拠だもん」
「サラは鋭いのね……
白状するわ。私には好きな人がいるの」
「やっぱり! どんな人なの? お姉さんに話してごらん?」
普段見ることの無いサラが居た。
お姉さんか……
もしもサラが僕のお姉さんだったら……
『___もう! ペリドットはいつまでお寝坊さんなのかな? 早く起きないとお姉ちゃんが添い寝しちゃうぞっ』
『サラ姉ちゃん……やめてくれよ。僕はもう子供じゃないんだ』
想像してみると、それはそれで最高だった。
面倒見のいいサラのことだ、きっと弟の僕を甘やかしてくれるだろう。
『ほらペリドット。お姉ちゃんが洗ってあげるからこっちおいで』
『サラ姉ちゃん……やめてくれよ。僕はもう子供じゃないんだ……ほら___』
いかんいかん。妄想が過ぎるぞ僕。
この先は危険だ。帰って来れなくなる。
落ち着こう、今はガーネットお嬢様の恋バナの最中だ。
集中して聞こうじゃないか。
ガーネットお嬢様は自信なさげに話し始めた。
「その人は私よりもずっと年上で遠い人。私なんか眼中にないのよ……」
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