新世界

午後野つばな

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「本当に何もなかったら、崇嗣さんはあんなことは言いません」
 あくまでも自分の主張を曲げないマルに、ヴィオラは金色の目を細めた。
『だったらどうするのさ?』
「自分でその訳を調べます」
 マルは意識を集中すると、初めのとき以来ずっと避けていた崇嗣さんの周辺のデータを探った。ニュース関連やSNS、中央政府のデータベースなど、ありとあらゆるデータにアクセスする。マルが深く情報を探るまでもなく、REX社のセクサロイドが行方不明になっていることで高額な懸賞金がかけられ、最後の目撃情報から、アジア系グループが崇嗣さんを探していることまで突き止めた。
「どうしよう……」
 マルは両手で口を塞ぐと、その場に膝をついた。真っ青な顔で震えるマルに、ヴィオラがぴくぴくと耳を動かした。
『何だよ、何かわかったのかよ』
「あなたが、指名手配をされているようです。高い懸賞金が出て……、アジア系のグループが崇嗣さんを探しているようです……」
 マルははっとしたように顔を上げた。こんなことをしてはいられない。一刻も早く崇嗣さんに危険を伝えないと。
『ちょ、ちょっと、何をするつもり!?』
 コートを着込み、出掛ける支度をするマルに、ヴィオラが目を丸くした。
「じっとしてなんかいられません。崇嗣さんに危険が迫っていることを伝えなければ」
『は!? 何言ってんの!?』
 いまにも崇嗣さんの後を追おうとするマルに、ヴィオラが飛びかかり、襟元についているてんとう虫の投影機を奪った。
「ヴィオラ、返してください。あなたと遊んでいる暇はありません」
 ヴィオラは高台に飛び移ると、金色の瞳でマルを見下ろした。
『少しは冷静になれよ。あの人間が知らないはずはないだろう。だからあんたに家から出るなって言い残したんじゃないか。あんたがよけいなことをすれば、それはあの人間に迷惑をかけることになるんじゃないの?』
 ぴしゃりとヴィオラに遣り込められて、マルはうなだれた。
「……でも、それならば私はどうすればいいのでしょうか」
 自分はここにいていいのだと、あの人が教えてくれた。誰からももらったことのない、愛情とやさしさをただのロボットである自分に。それなのに、自分が崇嗣さんにできることは何もないのだ。
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