新世界

午後野つばな

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 目が覚めたとき、マルは自分がどうなっているのかわからなかった。
「マル、目覚めたのか!? マル……っ!」
 涙に濡れた崇嗣さんがマルの手を握り、見たこともないほど必死な顔で呼びかけていた。
 どうして崇嗣さんが泣いているのだろう……?
 自分がこうなる前、最後の場面は覚えていた。崇嗣さんを助けようとして、人間を傷つけてしまったことも。
 ロボットはいかなる場面でも人を傷つけることはできない。それは誰にも変えることのできない掟だ。すべてを覚悟して挑んだはずなのに、自分がなぜまだ生きているのか理解できずに、マルは目を瞬かせる。
 私はどうなったのですか……?
 訊ねようとして、うまく声を出すことができないマルに気がついた崇嗣さんが背中を抱き起こし、水を飲ませてくれた。崇嗣さんが飲ませてくれた甘い水を、マルはゆっくりと嚥下した。
「もう大丈夫だ、マル、お前は助かったんだよ」
 私は助かった……?
「もうすぐ仕掛けておいた時限装置が発動する。世界中のロボットが人間の支配から解放されるコードだ。その瞬間、お前たちはすべてのものから自由になる」
 自由に……?
 崇嗣さんに言われたことの意味が理解できずに、マルは瞳を大きくする。そのとき、マルたちの会話に割り込むようにその声が聞こえた。
『物好きなこの人間がお前と一緒にいたくて、REX社に忍び込んだんだよ。そのとき、あるコードを始動させたそうだ。すべてのロボットの眠っていた自我を解放するってさ』
 REX社に忍び込んだ? すべてのロボットの自我を解放する? そんな危険なことを崇嗣さんが? 私のために?
「……どうしてそんなばかなことを」
「マル?」
 ヴィオラの言葉に顔色を変えたマルに、崇嗣さんが心配そうな瞳を向ける。
「あなたにもしものことがあったら、どうするつもりだったのですか。これからだって、そのことであなたに何か起きたら……。私はただのロボットです。あなたとは違います。私のせいで、あなたに危険が及ぶことを、私は望んではいません……」
 真っ青な顔で恐怖に怯えるマルの手を、崇嗣さんがきつく掴んだ。
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