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しおりを挟む家に帰る。体が重い。乳酸がたまった足はカチコチしていて、重い。階段をのぼる。黙っている。鈴さんはああ言っていたけど。どうなんだろう。所詮僕には関係ないことなのかもしれない。
『拓磨。起きているか』
家に帰ると戸井田からメッセージが届いていた。僕はそのメッセージを無視してしまおうかと思った。
『バイトに帰ったばかり。あとにしてくれ』
『聞け。彼女と喧嘩したんだよ』
『いつものことじゃん』
『マッサージがエロマッサージと勘違いされたんだよ』
『で』
『おまえからも言ってくれ』
わかったと言った。僕はため息をつきたくなった。新しいバイトを探さなきゃいけないなと気がついた。
薄情と僕自身思った。いつかこうなるのはわかっていたつもりだ。
寒かったからエアコンをつけて、うとうとしていた。疲れて眠くて、ひたすら眠くて。シャワーで体を浴びたのに冷やしていた。ごろん、と横になる。
夜のチャットルームを見る。夜にはなにも書いていない。ぼんやりと見つめていた。
朝になった。日が高いとスマホの着信音で目覚めた。
「あっ、ヤベ」
時計を見たら、ギクリとした。授業はもう始まって終わっている。休み時間だ。
「戸井田」
『おい、寝坊かよ』
「うん」
『だから、代わりに出した出席票』
ありがとう。ありがとうと言った。早く来いと言われ、慌てて駆け出した。身支度も適当に。僕は外の日差しのまぶしさに目を細めて、自分の影だけが走っているようでこころもたなかった。
「寒い」
コートから冷えた空気が入ってくる。走っているせいでもある。チャイムが鳴る前に棟の教室に入らなければならない。急げと思う。
ゼエゼエ言いながら教授が入る前に教室に入れた。戸井田は「やっぱ、学校に近いと便利だな」と言った。
「腹へった」
「がんばれ」
「他人事かよ」
「まあ、そうだ」
「おまえ」
仲良く僕達は会話をした。教室に教授が入ると教授は気がついた。
「ギリギリだったのかな」
教授が周りに言った。うんとうなずいた。
「社会人になったらこれは通用しないと思いなさい。君達は」
お説教が始まったのだった。教授はひとしきり説教をして満足したのか、授業をはじめていた。寒かった体があたたかくなった。
「拓磨」
「なんだよ」
「昼休み空いているか」
うんっと、言った。真澄ちゃんがこちらを見たような気がした。
「朝食買いに行く」
「気をつけろ」
真澄ちゃんが近寄る。そうしてあたしも一緒に行くわとウィンク付きで言われた。僕は真澄ちゃんを呆然としてみていた。真澄ちゃんは僕の手をつかんだ。
そのまま腕を組ませていた。
「真澄ちゃん、やめて」
「一緒に行っていいのね」
断ることなど僕にはできなかった。
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