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疑い
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わたしが純平を疑い始めたのは、結婚してすぐのことだった。友達に結婚の報告をしなきゃね、と話したのをきっかけに旧友の話題になり、話の流れからお互いの友達の写真を見せることになった。わたしは手が疲れるほど携帯をスクロールし、最初の方に残っていた写真のデータを純平に見せた。たしか、自転車で家から三十分ほどの植物園へお花見に行ったときのものだ。
「この子きれいだね。」
写真にはわたしの他に三人写っていて、皆がこちらを笑顔で見つめている。皆小学校からの幼馴染で、今でもときどき顔を合わせるほど仲が良い。十年ほど前のわたしたちは大人として完成していたけれど、どこかあどけなさも残っていた。
「色白で整ってる。」
純平がある一人を指して言う。
「ああ、志織ちゃんだね。」
携帯を覗き込んで答える。答えながら心はズンと重い。
「女優のあの人に似てる。ほら…、出てこない。顔は出てくるんだけどな。えーと、あいりって名前だった気がするけど。」
そう言って自分の携帯を手に取り調べ始める。
「…あ、この人。松井愛莉。」
どれどれとこちらに向けられた画面を見ると、なるほどたしかに似ている。
「…うん、似てるね。」
似てないよ、と言いたい気持ちを必死に抑えながら素直に答える。悔しいが、志織は芸能人、さらに女優に似ているほど美人だった。
「俺色白の子好きなんだよね。」
知っている。テレビに映るアナウンサーや女優を観ながら色白だな、と目を輝かせているし、バイトのときに付き合っていた彼女も色白だった。それに比べてわたしは、中学生の頃から日焼けした浅黒い肌のままだ。今さらながら、肌の手入れを碌にしていなかったことを後悔した。
志織ちゃんみたいな子がいいんでしょ―。
言いかけた言葉を飲み込む。色白で美人。純平の好みど真ん中で、彼はもちろんそうだ、と頷くに決まっている。志織はわたしと距離の近い友達だから、いつか二人が顔を合わせる機会があるかもしれない。そのときに純平の心がときめかないと言えるだろうか。そういえば、元カノと別れた理由を聞いていなかったなと思う。別れた理由は、もしかしたら純平の浮気の可能性だってある。現実を知るのが怖かった。
小学生のころから人気者で美人で明るい彼女に劣等感を抱いていたわたしは、たとえ心の中だけでも一番大好きな人を彼女に取られるのが耐えられなかった。
純平がわたしだけを好きでいてくれているという証がほしい。その日からわたしは純平に対して小さな不信感を抱くようになった。
「この子きれいだね。」
写真にはわたしの他に三人写っていて、皆がこちらを笑顔で見つめている。皆小学校からの幼馴染で、今でもときどき顔を合わせるほど仲が良い。十年ほど前のわたしたちは大人として完成していたけれど、どこかあどけなさも残っていた。
「色白で整ってる。」
純平がある一人を指して言う。
「ああ、志織ちゃんだね。」
携帯を覗き込んで答える。答えながら心はズンと重い。
「女優のあの人に似てる。ほら…、出てこない。顔は出てくるんだけどな。えーと、あいりって名前だった気がするけど。」
そう言って自分の携帯を手に取り調べ始める。
「…あ、この人。松井愛莉。」
どれどれとこちらに向けられた画面を見ると、なるほどたしかに似ている。
「…うん、似てるね。」
似てないよ、と言いたい気持ちを必死に抑えながら素直に答える。悔しいが、志織は芸能人、さらに女優に似ているほど美人だった。
「俺色白の子好きなんだよね。」
知っている。テレビに映るアナウンサーや女優を観ながら色白だな、と目を輝かせているし、バイトのときに付き合っていた彼女も色白だった。それに比べてわたしは、中学生の頃から日焼けした浅黒い肌のままだ。今さらながら、肌の手入れを碌にしていなかったことを後悔した。
志織ちゃんみたいな子がいいんでしょ―。
言いかけた言葉を飲み込む。色白で美人。純平の好みど真ん中で、彼はもちろんそうだ、と頷くに決まっている。志織はわたしと距離の近い友達だから、いつか二人が顔を合わせる機会があるかもしれない。そのときに純平の心がときめかないと言えるだろうか。そういえば、元カノと別れた理由を聞いていなかったなと思う。別れた理由は、もしかしたら純平の浮気の可能性だってある。現実を知るのが怖かった。
小学生のころから人気者で美人で明るい彼女に劣等感を抱いていたわたしは、たとえ心の中だけでも一番大好きな人を彼女に取られるのが耐えられなかった。
純平がわたしだけを好きでいてくれているという証がほしい。その日からわたしは純平に対して小さな不信感を抱くようになった。
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