嫌われものと爽やか君

黒猫鈴

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ああ、今日は厄日だ。

まず始めに登校時に深文様と会ってしまい、盛大に舌打ちされた他「消えろ屑」とまで言われてしまった。
未だに恋心がある深文様にそんなことを言われ、慣れてしまったのに酷く悲しくて走って逃げ出してしまい、更にそこで高宮に会った。
高宮はあからさまに僕を睨みつけて「あ、俺をいじめた奴!」とか大声で言い指さしてきた。
その大声の所為で周りの注目を集めてしまい、更に周りは必ず僕の悪口だけを言う。
それは、苦しい位嫌だった。
早く逃げたかったのに、高宮は更に「謝ったら少しくらいは許してやる!」って腕掴んで叫んで…。

誰が謝るか!なんて心中言いながら、本当は無言で腕を解いた。
そして逃げるように去った。

それから教室でいつものように陰口を言われ続け、机で下を向いたまま過ごし…気が付けば昼休みに入っていた。

昔は食堂で生徒会の方々が見られる良い席を陣取って食べていたが今そんなことを出来る立場ではない。

故に食べる場所も今は決まって誰もいないような空き教室や中庭の目立たない場所で食べるようにしていた。

しかし…今日はとことん厄日らしく…

「…夏ちゃんじゃん?こんな場所にいて…遊んでほしいんだー?」
「遊びーましょ?」

2人の素行の悪そうな奴等。
ニヤニヤと気持ちの悪い笑みに心がさめてくる。

「楽しいことしよ?」
「まぁ拒否権ないけどね」

ゆらりゆらりと近付いてくる、そいつ等に諦めたように肩の力を抜いた。




ドロドロと奴らの吐き出したものが体のあらゆる場所にへばりついている。
ああ、気持ちが悪い。
寒気がした。

「とりあえず、帰ろ…」

服が精液まみれで午後の授業など受けたくはない。

「…はぁ」

早く洗わなきゃ…カピカピなったら落ちにくい。
痛いお尻をなんとか持ち上げて立ち上がる。
ピリピリする痛みを感じながら、こんなことになるのなら菅原の軟膏を返さずに持っとけばよかったと後悔した。

「あれ意外にもよく効いたからな…」

ハンカチで顔に付いた物などを拭き取りながら、家路を急ぐ。
途中誰にも会わなかったのが不幸中の幸いだった。



「っは、」

浴室で熱いシャワーを出し、壁に片手を付いて中に出されたものを掻き出す。
シャワーが身体中に掛かり、ドロついた精液も溶けていけばいいと更にシャワー温度を熱くした。
そうすれば、何もかも溶けてくれると信じて…

でも…

「ああ惨め、だ」

自分のお尻を掻き混ぜて、この惨めな気持ちは消える訳がないのに。

「どうせなら、僕も溶けてなくなればいいのに」

小さく笑った、その顔に温かい水が伝って落ちたけれど…シャワーの所為にした。


「っ」
夜。
不意に目が覚め、起き上がった。
玉のような汗が顔から流れる。

「…はぁ…はぁ」
嫌な夢を見た。

夢の中の僕は1人だった。
暗闇の中、1人椅子に座っていた。

しかし次第に周りに人が増えてきた。
人は僕を蔑んだ目で見ており、口々に悪く言う。
クラスの人…高宮や、菅原…そして最後に出てきたのは深文様。
見下ろされた瞳からは嫌悪しかなかった。

「死ね」

一言、そういわれた。
死ね、と。

その言葉は全てを壊す。
好きな人に死んでしまえなんて言われて正気でいられるわけがない。

僕は夢の中でひたすら涙を流して訴えた。

僕はあなたを愛していただけだと。
高宮をいじめたことは悪かったと必死に謝りもした。
そして、死ねの言葉を取り消してほしいとも。

夢の中の僕は必死だった。
現実の諦めた僕とは違い、訴えた。

でも深文様は何もいわなかった。

怖かった。
恐怖しかなかった。

涙を流し、周りを見れば周りの人々は「死ね」と言い出し、

「っいや!」

言って暗い中を走った。
でも聞こえてくる声は追いかけてきて…。

「嫌だ!」と叫んだ所で起きてしまった。

「っ」
夢のように暗い部屋に心臓が嫌な音を立てる。
まるで夢の続きのようで、僕は耳にこびり付く声を拭い払うように部屋から飛び出した。
寮内は真っ暗だった。
寮の電気は11時で消灯時間になり部屋の電気以外は全て消えるようになっている。
誰にでもわかっていることだ。

「っ」
でもその時の僕は錯乱状態で夢の延長線だと、そう思っていた。
だから誰もいない暗い廊下を一心不乱に走った。
走らないと声が…
追いかけてくる気がして…。

だから必死に明かりを求めていたかもしれない。

気が付けば、外に出ていた。
月の微かな明かり。
今日は満月なのか、何時もより光が強く目の前に僕の影が伸びている。

「…」

明かりの元に出て少し安心した。
心許ない明かりだが、この時ばかりは…本当に暗闇を怖れていたから…有り難かった。

走ってきたばかりで上がる息を整えながら、足はふらりと寮の裏側に位置するベンチの方へ向かっていた。



寮の裏側…
花壇に囲まれてあるベンチは季節により恋人達のデートに使われることも屡々ある。
しかし今の時間に人もいないだろ、落ち着いてきた頭で思考を巡らせた。

しかし…

「…菅原道万」

ベンチに寝ている人物はよく知っていた。
菅原道万。
彼が何故この場所にいるのかわからない。

それに…先程のこともある。
あの…暗闇…追い掛けられる感覚
死ね、と言われた記憶が蘇りそうになり、頭を押さえ地面に座り込んだ。

夢の菅原道万は酷く冷たい瞳で、躊躇なくその言葉を吐く。
そして手を伸ばし追いかけてくる。
その手に捕まれば、殺されてしまうのだ。
あの冷めた瞳で…何事もなく…殺されるのだ…

「ん…、だ、れだ?」

ベンチが軋む音と共に声。
夢の声と重なり合い恐怖で身体が震えた。

「ひ…っ」
喉の奥から出た小さな悲鳴。
逃げようにも足は動いてくれず、その場に座っている状態で相手を見ていた


菅原の瞳が此方を向く。
そして僕を見て瞳が見開かれた。

「…お前、は、槻嶋」

次第に目がつり上がってくる。
蔑んだ、その瞳。

「なんでここにいるんだ」
死ね、と吐いた冷めた口調。
全て夢に重なって…

「っごめ、なさい」

呟く。

「は?」

「ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい」

体が震える。
恐怖に涙が零れた。

ただひたすらに謝らなければいけないと、それしかなかった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「おい、」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「っなんだよお前、」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
「おい!」

怒鳴り声に肩が竦み上がる。

「ご、めんな…さい、ぼ、僕が悪かったです…だから、」

殺さないで

言った途端、相手の動きが一瞬止まった。

「ご、め…っなさい…」

下を向き必死に謝る。
冷たいあの瞳と声が忘れられない。

だから…菅原が僕に近付いていることなんてわからなかった。

「っごめ、」

次の瞬間、

「ぁ…」

温もり。
顔を上げれば、すぐ近くにある菅原の顔。
抱き締められているのだと暫くしてから気付いた。
なんで抱き締められているのかわからず、混乱する。

僕を嫌いなくせに。
なんでこんなに優しく…抱きしめているの?
それとも怒っているの?
だから嫌がらせ…で


「…ごめっ」

咄嗟に出た言葉は

「…わかったから、もう謝るな」

遮られ、月明かりに照らされ見えた菅原の瞳は抱き締められる体と同様に優しくて…

酷く安心した。

喉がヒクヒク鳴る。
涙は止まらず頬を濡らした。

優しい温もりに、夢のことなど抜け落ち…

「…っ、おい槻嶋?!」

気を失った
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