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男たちの目すべてが聖女キリリンさまに釘付け

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「素晴らしい…キリリンの美しさを見事に引き出している」

 王子の絶賛する声に、そうかなぁと。
 キリンエットは小首を傾げました。
 そのピラピラとした服は透け透けの布地でできていて実に頼りないのです。
 脚にピッタリと履かされた物なんて漁師の使う網のようです。
 さらに下衣の左右には切りこみスリットも入っているので、風が入れば、ふわりと簡単に舞い上がってしまいそうです。
 胸だって少しかがめば、剥き出しのままの胸の尖りが上から覗き放題です。
 それなのにホタテの貝カバーもしないだなんて、どういうことでしょう。
 早急に善処ヲ求ムなんだゾと。
 憤慨気味に絵に描いて要求してみたところ、なぜだか逆に真ん中に穴が開いている胸当てのような物をモブサンローランに付けられてしまいました。
 意味がわかりません。
 全く隠れていません。
 むしろ見せています。
 モブサンローランのことを著名な仕立屋と紹介されましたが、服を出されれば出されるほど疑わしくなっていきます。
 いえ、そもそもがなぜ、人間界のメスの格好をさせられているのかがキリンエットには理解できませんでした。
 紐パンと称される下着が王子の手によって出っぱなしのナニに装着させられたのですが、その時に立ち会った者はみな、オスであることをわかっているはずです。
 どういうことなのだろうと疑問はつきません。

「よし、今宵の舞踏会はこれにするか」

(えっ…)

 よりによって、この格好で?と。
 キリンエットはびっくりしてしまいました。
 就寝用としてならばまだしも舞踏会だとは。
 大好きなキリンオといえども、現世のその感性は大丈夫なのでしょうか。
 この薄っぺらさでありえませんと不自由な発音なりにも抗議しようとした時です。

「お待ちください、殿下」

 できる補佐モブー二が口を開きました。

「その衣装は少々適切ではないかと」
「なんだって?」

 忌憚きたんなく異論を唱えられて王子がムッとします。
 ですがモブー二が動じることなく続けました。

「そちらですと男たちの目すべてが聖女キリリンさまに釘付けとなりますが、よろしいのですか」
「ん、他のにしよう」

 あっさりと切り替わった態度に、軽いなぁと心の中で思っても誰も言いません。
 自分らの主人なわけですから言えるわけがありません。
 誰しも不敬罪で捕まりたくないのです。

「キリリンの上品さ、清楚さ、清廉さ、無邪気さ、控えめさ、それでいて醸し出されている万人受けと妖艶さと小悪魔的な魔性ぶりと小ずるさと大胆さと…それら全部を最大限に引き出しながらも、下品な輩の視線に晒されることがなく、なおかつ見る者を圧倒するような高尚な服にしなくてはならない、わかるな、モブサンローラン…」
「は、はい、承知しております」
「で、どれだ?」
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