2 / 169
1:囚人テセウス
2
しおりを挟む
「さすがだ。さすがは・・・・・・だ。テセウス、罪なき罪人よ。お前に恩赦が出た。ありとあらゆる汚物の溜まり場、忌み嫌われた恐怖の奈落タルタロス第八監獄……この穢れに穢れた不浄の地から光り輝くオリュンポスの地上へと。お前は戻れる。水の道に沿って進むがいい」
(水の道・・・?)
疑問に思うや否や、ぱしゅんっ・・・と目の前の暗闇に白く光る線が走った。
ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・
途端にその縦に長く入った切れこみから、薄暗い外へと向かって中味が流れ始める。先を競い合うようにして出て行く物体。それは薄く青白く光る――
(水・・・?)
そのモノ自体が色を持っているのか。それとも差しこんできた光の加減でそう見えるのか。勢いよく流れ出るは自分を取り巻いていた液体だ。
ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・
身体を取り巻いていた環境が水圧を感じていた状態から自由の効く気圧へと。互いの割合を徐々に徐々にと移行し、入れ替わっていく。
首、肩、胸、腰、足と。どれだけの水量なのか。随分と長く多く流れていく。その水の感触が足首へと至った時、ぱしゅんっ・・・と手足を拘束していた何かが外れた。
ぶらんと両手が勢いよく下がり、身体が拘束から解放される。立っていた状態の足がバランスを取るために一歩を踏み出した。パシャンと音が響く。
そのまま勢いを付けたように。一歩また一歩と。パシャン・・・パシャン・・・と水溜まりの中を前へと進んでいく。
薄く光が漏れる縦の切れこみへと誘われるように手をかけた。それはまるでペラリとした紙でも触るかのようで。難なく左右に開いた。
「!!」
目に飛びこんできた光景は――まるで上も下も右も左も満天の星々の、ちょうど真ん中にでも浮いているかのような場所だ。
(ここは・・・一体・・・)
生物の気配などない、わずかに空気が吹きつけてくる静かな空間の中。時折ヒュンヒュンと青白い光が走る。それは実体のない幽鬼が起こす風だ。
踏み出して初めて、自分がとてつもなく大きな樹の中に入っていたことに気がついた。
後ろを振り返り見上げれば、天の星空に吸いこまれるようにして黒く太い幹がどこまでもどこまでも続いている。上空でさわさわと枝葉が揺れる暗い影の気配はするものの、その先は全くわからない。
かたや下は腕よりも太いモノから小指よりも細いモノまで。黒い根っこが透明な地中を走るようにして、星々の中を縦横無尽に這っている。
(どこなんだ、ここは・・・)
突如として放り出されたような感覚のまま、まずはじっと手を見る。異常のない手だ。割としっかりしている。
(水の道・・・?)
疑問に思うや否や、ぱしゅんっ・・・と目の前の暗闇に白く光る線が走った。
ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・
途端にその縦に長く入った切れこみから、薄暗い外へと向かって中味が流れ始める。先を競い合うようにして出て行く物体。それは薄く青白く光る――
(水・・・?)
そのモノ自体が色を持っているのか。それとも差しこんできた光の加減でそう見えるのか。勢いよく流れ出るは自分を取り巻いていた液体だ。
ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・
身体を取り巻いていた環境が水圧を感じていた状態から自由の効く気圧へと。互いの割合を徐々に徐々にと移行し、入れ替わっていく。
首、肩、胸、腰、足と。どれだけの水量なのか。随分と長く多く流れていく。その水の感触が足首へと至った時、ぱしゅんっ・・・と手足を拘束していた何かが外れた。
ぶらんと両手が勢いよく下がり、身体が拘束から解放される。立っていた状態の足がバランスを取るために一歩を踏み出した。パシャンと音が響く。
そのまま勢いを付けたように。一歩また一歩と。パシャン・・・パシャン・・・と水溜まりの中を前へと進んでいく。
薄く光が漏れる縦の切れこみへと誘われるように手をかけた。それはまるでペラリとした紙でも触るかのようで。難なく左右に開いた。
「!!」
目に飛びこんできた光景は――まるで上も下も右も左も満天の星々の、ちょうど真ん中にでも浮いているかのような場所だ。
(ここは・・・一体・・・)
生物の気配などない、わずかに空気が吹きつけてくる静かな空間の中。時折ヒュンヒュンと青白い光が走る。それは実体のない幽鬼が起こす風だ。
踏み出して初めて、自分がとてつもなく大きな樹の中に入っていたことに気がついた。
後ろを振り返り見上げれば、天の星空に吸いこまれるようにして黒く太い幹がどこまでもどこまでも続いている。上空でさわさわと枝葉が揺れる暗い影の気配はするものの、その先は全くわからない。
かたや下は腕よりも太いモノから小指よりも細いモノまで。黒い根っこが透明な地中を走るようにして、星々の中を縦横無尽に這っている。
(どこなんだ、ここは・・・)
突如として放り出されたような感覚のまま、まずはじっと手を見る。異常のない手だ。割としっかりしている。
1
あなたにおすすめの小説
女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。
山法師
BL
南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。
彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。
そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。
「そーちゃん、キスさせて」
その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。
流れる星は海に還る
藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。
組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。
<登場人物>
辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。
若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。
中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。
ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。
表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️
ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果
SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。
そこで雪政がひらめいたのは
「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」
アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈
ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ!
※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】
晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。
発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。
そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。
第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結】エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる