オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

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1:囚人テセウス

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 「さすがだ。さすがは・・・・・・だ。テセウス、罪なき罪人よ。お前に恩赦が出た。ありとあらゆる汚物の溜まり場、忌み嫌われた恐怖の奈落タルタロス第八監獄……この穢れに穢れた不浄の地から光り輝くオリュンポスの地上へと。お前は戻れる。水の道に沿って進むがいい」

 (水の道・・・?)

 疑問に思うや否や、ぱしゅんっ・・・と目の前の暗闇に白く光る線が走った。

 ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・

 途端にその縦に長く入った切れこみから、薄暗い外へと向かって中味が流れ始める。先を競い合うようにして出て行く物体。それは薄く青白く光る――

 (水・・・?)

 そのモノ自体が色を持っているのか。それとも差しこんできた光の加減でそう見えるのか。勢いよく流れ出るは自分を取り巻いていた液体だ。
 
 ざあぁぁあぁぁぁぁーーーっ・・・・・・

 身体を取り巻いていた環境が水圧を感じていた状態から自由の効く気圧へと。互いの割合を徐々に徐々にと移行し、入れ替わっていく。

 首、肩、胸、腰、足と。どれだけの水量なのか。随分と長く多く流れていく。その水の感触が足首へと至った時、ぱしゅんっ・・・と手足を拘束していた何かが外れた。

 ぶらんと両手が勢いよく下がり、身体が拘束から解放される。立っていた状態の足がバランスを取るために一歩を踏み出した。パシャンと音が響く。

 そのまま勢いを付けたように。一歩また一歩と。パシャン・・・パシャン・・・と水溜まりの中を前へと進んでいく。

 薄く光が漏れる縦の切れこみへと誘われるように手をかけた。それはまるでペラリとした紙でも触るかのようで。難なく左右に開いた。

 「!!」

 目に飛びこんできた光景は――まるで上も下も右も左も満天の星々の、ちょうど真ん中にでも浮いているかのような場所だ。

 (ここは・・・一体・・・)

 生物の気配などない、わずかに空気が吹きつけてくる静かな空間の中。時折ヒュンヒュンと青白い光が走る。それは実体のない幽鬼が起こす風だ。

 踏み出して初めて、自分がとてつもなく大きな樹の中に入っていたことに気がついた。

 後ろを振り返り見上げれば、天の星空に吸いこまれるようにして黒く太い幹がどこまでもどこまでも続いている。上空でさわさわと枝葉が揺れる暗い影の気配はするものの、その先は全くわからない。

 かたや下は腕よりも太いモノから小指よりも細いモノまで。黒い根っこが透明な地中を走るようにして、星々の中を縦横無尽に這っている。

 (どこなんだ、ここは・・・)

 突如として放り出されたような感覚のまま、まずはじっと手を見る。異常のない手だ。割としっかりしている。

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