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4:不可解な夢とグライアイの三姉妹と
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ガサガサと藪の中を進み、岩肌から水が溢れ出ている場所へとたどり着くと――
(もう・・・だから、なんなんだ、一体・・・)
と脱力した。その愛情表現といい、触り方といい。それに過保護なのか。心配性なのか。いや、これはもう絶対に度が過ぎていないか。陰になる場所で用を足しながら、想いを寄せる。もちろん、嫌いではないけれども。
(なんだか、先が思いやられるような気がする・・・)
すぐ傍らの流れから水を手ですくってその場を流し、そのままジャバジャバと顔も洗った。
「あぁ、ケール、ありがとな」
パタパタと。耳を下げながら、嬉しそうに尻尾を振って。横で待機しているケールの口から布を受け取り、水で濡らして身体も拭く。汚れていたとは思わないが、やはり清潔になれると気持ちがいい。
(そうだな。帰りはやはり風呂に入りたいかもな)
自分のために温泉を探してもいいと発言していた存在を思い出しつつ、また低木を分けるようにして外に出る。と、すぐ側の大木に寄りかかって、腕を組んで待っていた相手を見つめた。
「いちいち、そんなに気にしなくても大丈夫だから」
わずかに嘆息しながら伝える。
「オレの目の届かない所で、身の程知らずの輩にでも襲われたら困るからな」
「そんな奴はいない。仮にいても、返り討ちにしてやるから心配するな」
「テセウス、お前はわかっていない。お前ほど美しい存在をオレは知らない。オレは気が気じゃない」
前を通り過ぎようとして、腕を掴まれた。
「お前を早くオレのモノにしたい。お前の全てを・・・早くオレのモノに」
「アトラス・・・いいか」
なんなんだ、その焦っているかのような態度は。よし、もうこの際、ここで少し釘を打っておくかと。意を決して、相手に向き合う。が突然、アトラスがふいっと顔を上げて空を見つめた。
「来るか」
「えっ?」
何かを探るようなその真剣な眼差しに。一緒になって顔を上に向ける。黒い雲が増え、より暗くなっていると感じた途端、告げられた。
「テセウス、急いで戻れ」
肩を抱かれたまま駆け足のような状態となって獣車を目指し、背中を強引に押される。なだれこむようにして入ると同時に激しい雷鳴が轟いた。
ゴロゴロゴロゴロ・・・・ゴォォオォォォォーーッ・・・・・・・
「な、なんだ?」
ガッシャァァアァーー・・・・・・バリバリバリバリィィーー・・・・・・
ザァァアァァァーーッ・・・・・・
直ぐ近くにでも落ちたかなような音と稲光りと。一瞬にして真っ暗となった中、突風とともに猛烈な勢いで雨が降ってくる。「ルーベ、ケール、出せ」とアトラスが命じ、バサッと幌がすぐさま降ろされた。
「アォォーーン」
吠え声とともに動き始める。そのけたたましい豪雨と強風が遮断され、静かに守られた空間で口を開けた。
「なぁ・・・ケールはさすがに中に入れた方がいいんじゃないか?」
常に外にいる彼らだが、大型のルーベはさておき、猫程度の大きさのケールは飛ばされてしまうのではないか。そう思えるほど、先ほどの現象は異常だったのだ。心配に襲われる。
(もう・・・だから、なんなんだ、一体・・・)
と脱力した。その愛情表現といい、触り方といい。それに過保護なのか。心配性なのか。いや、これはもう絶対に度が過ぎていないか。陰になる場所で用を足しながら、想いを寄せる。もちろん、嫌いではないけれども。
(なんだか、先が思いやられるような気がする・・・)
すぐ傍らの流れから水を手ですくってその場を流し、そのままジャバジャバと顔も洗った。
「あぁ、ケール、ありがとな」
パタパタと。耳を下げながら、嬉しそうに尻尾を振って。横で待機しているケールの口から布を受け取り、水で濡らして身体も拭く。汚れていたとは思わないが、やはり清潔になれると気持ちがいい。
(そうだな。帰りはやはり風呂に入りたいかもな)
自分のために温泉を探してもいいと発言していた存在を思い出しつつ、また低木を分けるようにして外に出る。と、すぐ側の大木に寄りかかって、腕を組んで待っていた相手を見つめた。
「いちいち、そんなに気にしなくても大丈夫だから」
わずかに嘆息しながら伝える。
「オレの目の届かない所で、身の程知らずの輩にでも襲われたら困るからな」
「そんな奴はいない。仮にいても、返り討ちにしてやるから心配するな」
「テセウス、お前はわかっていない。お前ほど美しい存在をオレは知らない。オレは気が気じゃない」
前を通り過ぎようとして、腕を掴まれた。
「お前を早くオレのモノにしたい。お前の全てを・・・早くオレのモノに」
「アトラス・・・いいか」
なんなんだ、その焦っているかのような態度は。よし、もうこの際、ここで少し釘を打っておくかと。意を決して、相手に向き合う。が突然、アトラスがふいっと顔を上げて空を見つめた。
「来るか」
「えっ?」
何かを探るようなその真剣な眼差しに。一緒になって顔を上に向ける。黒い雲が増え、より暗くなっていると感じた途端、告げられた。
「テセウス、急いで戻れ」
肩を抱かれたまま駆け足のような状態となって獣車を目指し、背中を強引に押される。なだれこむようにして入ると同時に激しい雷鳴が轟いた。
ゴロゴロゴロゴロ・・・・ゴォォオォォォォーーッ・・・・・・・
「な、なんだ?」
ガッシャァァアァーー・・・・・・バリバリバリバリィィーー・・・・・・
ザァァアァァァーーッ・・・・・・
直ぐ近くにでも落ちたかなような音と稲光りと。一瞬にして真っ暗となった中、突風とともに猛烈な勢いで雨が降ってくる。「ルーベ、ケール、出せ」とアトラスが命じ、バサッと幌がすぐさま降ろされた。
「アォォーーン」
吠え声とともに動き始める。そのけたたましい豪雨と強風が遮断され、静かに守られた空間で口を開けた。
「なぁ・・・ケールはさすがに中に入れた方がいいんじゃないか?」
常に外にいる彼らだが、大型のルーベはさておき、猫程度の大きさのケールは飛ばされてしまうのではないか。そう思えるほど、先ほどの現象は異常だったのだ。心配に襲われる。
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