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4:不可解な夢とグライアイの三姉妹と
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「ここから先は願い出る者一人しか入れない。ケール、炎をおさめろ」
アトラスの言葉に。赤い魔炎をパチパチと身体から発していたケールがスタッ・・・と地面に降り立つと、ブルブルブルと体を振っていつもの状態へと変化した。
太陽の日差しは元より星の光ですら無縁の闇の中。足下を明るく照らしていた光源がなくなり、ヒューン、ヒューンと。辺りを無気味に飛び交う幽鬼たちの青白い光だけが頼りの世界へとまた戻った。
「ケール、二つばかり捕まえてこい。静かにだぞ」
「クゥ・・・」
わずかに鼻を鳴らして頷く。や否や、タンッと小さな体が地を蹴った。
キャァアァァーー・・・ウ”ゥ”ウ”ゥ”ゥーー・・・ヒィィイィィーー・・・・・・
助けを求める悲鳴のような、断末魔の呻きのような、追い詰められた叫び声のような。そんな不快な音を立てながら、右に左に上に下にと。流れるように彷徨う、目と口が黒く窪んだ青白い幽鬼たちの顔を。
バクッ、バクッとケールが立て続けにくわえて降りて来る。と、宙に浮かんだまま「取ってきました、褒めて下さい」とばかりに尻尾を振った。
その突き出された鼻面から。アトラスが手に取り、吊り下げた火のついてないランタンの中に突っこんで蓋をする。
「これを灯りにしろ。陰気臭いだけじゃなく、ぬかるんでいて滑りやすい。足下には気をつけろ。ケール、この中に入れ」
無気味な顔がペッタリと張り付く、青々と光るランタンの取っ手を渡されて。複雑な気持ちで受け取ると、肩から斜め掛けさせられていた革の鞄の中に、ピョンとケールが入りこんだ。だが、全く重さを感じない。
「奴らはやたらと警戒心が強く、異変を感じるとすぐさま攻撃してくる。だから、いいか。お前はただの飼い犬だ。魔気を発するな。相手に刺激を与えず、ここでじっとしてろ。テセウスの身に危険が及んだ時は、すぐさま戦え。いいな?」
「クゥ・・・」
主をしっかりと見つめ返し、ケールがコクンと首を振る。よしとアトラスが頷いた。
「テセウス、いいか、お前は霊託を聞きに行くだけだ。戦う必要はない。不潔極まる不愉快な輩だが、争う気配を見せるな。
用心深く、敵意を感じた途端に襲いかかってくるような連中だ。あくまでも自分は冥府の王ハデスの代わりに、王妃ペルセフォネの行方に関するお告げを聞きに来たと伝え、それに徹しろ。いいな?」
「わかった」
「本来ならば、奴らの機嫌を取るために処女や童貞の貢ぎ物をする。性交経験のない無垢な肉体を、汚れた異形どもが寄ってたかってとことん弄ぶのを好む。だが――」
あまりの不愉快な内容に露骨に顔をしかめると、アトラスが気が付いてフッと笑みを浮かべた。
「霊託と言っても邪霊の力を借りるような奇形だ。品性も知性もない。それでも的確に予言する。今回は割り切れ」
「・・・・それで、貢ぎ物とやらはどうするんだ?」
釈然としない気持ちのまま、尋ねた。
「これを持っていけ」
アトラスがあるモノを差し出した。
「えっ・・・これって・・・」
「ここから先は願い出る者一人しか入れない。ケール、炎をおさめろ」
アトラスの言葉に。赤い魔炎をパチパチと身体から発していたケールがスタッ・・・と地面に降り立つと、ブルブルブルと体を振っていつもの状態へと変化した。
太陽の日差しは元より星の光ですら無縁の闇の中。足下を明るく照らしていた光源がなくなり、ヒューン、ヒューンと。辺りを無気味に飛び交う幽鬼たちの青白い光だけが頼りの世界へとまた戻った。
「ケール、二つばかり捕まえてこい。静かにだぞ」
「クゥ・・・」
わずかに鼻を鳴らして頷く。や否や、タンッと小さな体が地を蹴った。
キャァアァァーー・・・ウ”ゥ”ウ”ゥ”ゥーー・・・ヒィィイィィーー・・・・・・
助けを求める悲鳴のような、断末魔の呻きのような、追い詰められた叫び声のような。そんな不快な音を立てながら、右に左に上に下にと。流れるように彷徨う、目と口が黒く窪んだ青白い幽鬼たちの顔を。
バクッ、バクッとケールが立て続けにくわえて降りて来る。と、宙に浮かんだまま「取ってきました、褒めて下さい」とばかりに尻尾を振った。
その突き出された鼻面から。アトラスが手に取り、吊り下げた火のついてないランタンの中に突っこんで蓋をする。
「これを灯りにしろ。陰気臭いだけじゃなく、ぬかるんでいて滑りやすい。足下には気をつけろ。ケール、この中に入れ」
無気味な顔がペッタリと張り付く、青々と光るランタンの取っ手を渡されて。複雑な気持ちで受け取ると、肩から斜め掛けさせられていた革の鞄の中に、ピョンとケールが入りこんだ。だが、全く重さを感じない。
「奴らはやたらと警戒心が強く、異変を感じるとすぐさま攻撃してくる。だから、いいか。お前はただの飼い犬だ。魔気を発するな。相手に刺激を与えず、ここでじっとしてろ。テセウスの身に危険が及んだ時は、すぐさま戦え。いいな?」
「クゥ・・・」
主をしっかりと見つめ返し、ケールがコクンと首を振る。よしとアトラスが頷いた。
「テセウス、いいか、お前は霊託を聞きに行くだけだ。戦う必要はない。不潔極まる不愉快な輩だが、争う気配を見せるな。
用心深く、敵意を感じた途端に襲いかかってくるような連中だ。あくまでも自分は冥府の王ハデスの代わりに、王妃ペルセフォネの行方に関するお告げを聞きに来たと伝え、それに徹しろ。いいな?」
「わかった」
「本来ならば、奴らの機嫌を取るために処女や童貞の貢ぎ物をする。性交経験のない無垢な肉体を、汚れた異形どもが寄ってたかってとことん弄ぶのを好む。だが――」
あまりの不愉快な内容に露骨に顔をしかめると、アトラスが気が付いてフッと笑みを浮かべた。
「霊託と言っても邪霊の力を借りるような奇形だ。品性も知性もない。それでも的確に予言する。今回は割り切れ」
「・・・・それで、貢ぎ物とやらはどうするんだ?」
釈然としない気持ちのまま、尋ねた。
「これを持っていけ」
アトラスがあるモノを差し出した。
「えっ・・・これって・・・」
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