オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
44 / 169
4:不可解な夢とグライアイの三姉妹と

9

しおりを挟む
 ******

 「ここから先は願い出る者一人しか入れない。ケール、炎をおさめろ」

 アトラスの言葉に。赤い魔炎をパチパチと身体から発していたケールがスタッ・・・と地面に降り立つと、ブルブルブルと体を振っていつもの状態へと変化した。

 太陽の日差しは元より星の光ですら無縁の闇の中。足下を明るく照らしていた光源がなくなり、ヒューン、ヒューンと。辺りを無気味に飛び交う幽鬼たちの青白い光だけが頼りの世界へとまた戻った。

 「ケール、二つばかり捕まえてこい。静かにだぞ」

 「クゥ・・・」

 わずかに鼻を鳴らして頷く。や否や、タンッと小さな体が地を蹴った。

 キャァアァァーー・・・ウ”ゥ”ウ”ゥ”ゥーー・・・ヒィィイィィーー・・・・・・

 助けを求める悲鳴のような、断末魔の呻きのような、追い詰められた叫び声のような。そんな不快な音を立てながら、右に左に上に下にと。流れるように彷徨う、目と口が黒く窪んだ青白い幽鬼たちの顔を。

 バクッ、バクッとケールが立て続けにくわえて降りて来る。と、宙に浮かんだまま「取ってきました、褒めて下さい」とばかりに尻尾を振った。

 その突き出された鼻面から。アトラスが手に取り、吊り下げた火のついてないランタンの中に突っこんで蓋をする。

 「これを灯りにしろ。陰気臭いだけじゃなく、ぬかるんでいて滑りやすい。足下には気をつけろ。ケール、この中に入れ」

 無気味な顔がペッタリと張り付く、青々と光るランタンの取っ手を渡されて。複雑な気持ちで受け取ると、肩から斜め掛けさせられていた革の鞄の中に、ピョンとケールが入りこんだ。だが、全く重さを感じない。

 「奴らはやたらと警戒心が強く、異変を感じるとすぐさま攻撃してくる。だから、いいか。お前はただの飼い犬だ。魔気を発するな。相手に刺激を与えず、ここでじっとしてろ。テセウスの身に危険が及んだ時は、すぐさま戦え。いいな?」

 「クゥ・・・」

 あるじをしっかりと見つめ返し、ケールがコクンと首を振る。よしとアトラスが頷いた。

 「テセウス、いいか、お前は霊託を聞きに行くだけだ。戦う必要はない。不潔極まる不愉快な輩だが、争う気配を見せるな。

 用心深く、敵意を感じた途端に襲いかかってくるような連中だ。あくまでも自分は冥府の王ハデスの代わりに、王妃ペルセフォネの行方に関するお告げを聞きに来たと伝え、それに徹しろ。いいな?」

 「わかった」

 「本来ならば、奴らの機嫌を取るために処女や童貞の貢ぎ物をする。性交経験のない無垢な肉体を、汚れた異形どもが寄ってたかってとことん弄ぶのを好む。だが――」

 あまりの不愉快な内容に露骨に顔をしかめると、アトラスが気が付いてフッと笑みを浮かべた。

 「霊託と言っても邪霊の力を借りるような奇形だ。品性も知性もない。それでも的確に予言する。今回は割り切れ」

 「・・・・それで、貢ぎ物とやらはどうするんだ?」

 釈然としない気持ちのまま、尋ねた。

 「これを持っていけ」

 アトラスがあるモノを差し出した。

 「えっ・・・これって・・・」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた

こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

処理中です...