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5:非道な霊託と淫毒を刺された身体と
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逞しい両腕に抱かれたまま。アトラスがスタンッと飛び降り、獣車の中に素早く寝かされた。
「水を持ってくる。すぐに戻る。ケール、汚らわしい液体を焼き払っておけ。汚れだけだぞ。加減を忘れるな、いいな」
指示を出しながらバサッと幌が降ろされる。と同時に、仰向けに置かれた身体を横向きにした。
(あっつ・・・い・・・)
不愉快な汚液がベッタリと張り付いて。堪えようもないほどに気持ちが悪い。だが、それ以上にズクズクと疼き続けている、気怠いだけじゃない、その感覚を。なんとか打ち消そうと身を縮こまらせた。
(いやだ・・・)
ギュッと下腹部を手で押さえて。ハァハァと途切れない息を整えるために、ゴクリと嚥下する。自分の身体に何をされたのか。
『オメガじゃぁ!! 上等なオメガじゃぁあぁ!!』
『オメガに淫毒を刺すじゃぁ!! もっと注ぐじゃぁあぁ!!』
脳裏に、先ほどの老婆たちの叫び声が浮かんだ。枝で拘束された時、二回ほど刺すような痛みが走ったのだ。あの時に淫毒とやらを注がれたのだろう。そして―――
(オメガの・・・オス・・・)
そう言われたのは、間違いなく自分だ。確か、臍の下にある気の源泉の一つに手をあてて。呪術師が視てわかるはずの属性を。枝に貫かれたことで読み取られたというのか。
(でも・・・オレは・・・)
この身体がオメガだなんて思いたくない。記憶がない自分の中に、確固たる性的知識がある。
男型の身でありながら、その発情期の繁殖力の強さ故に。孕まされる側として常に扱われ、時に見下され、抱かれることが役割だとばかりに虐げられる存在の。そんなオメガだなんて。
「クゥゥーン・・・」
耳元でした鳴き声にハッと現実に意識を戻した。
「ケー・・・ル・・・」
背後からペロペロと顔や髪を舐め始めた小さな体に。
「お前・・・無事で・・・ハァハァ・・・よかったな・・・ハァハァ・・・心配した」
優しく撫でてやりたいが、言葉すらままならない。
「いい・・・って・・・ハァハァ・・・お前が・・・汚れる・・・から・・・」
一生懸命に舐め取ろうとするその鼻先を。手で押さえて動きを制する。赤い焔から見事に復活したケールとは違って。汚液まみれの身体なのだ。だが――
(あっ・・・)
蝋燭程度の柔らかく弱い魔炎に。包まれたケールの足裏が舌がいたわるように触れてくるたびに、ジュッ・・・ジュッ・・・と黒い液体が消えていく。
(そうだ・・・ケールは・・・)
この小さな体が闇に消えた後、矢が現れ、邪気の源泉でもあるダイモーンの竈が深紅の炎で燃え上がったのだ。
それを天の火と言っていた老婆たち。あれがもし本当にプロメテウスの火であるのならば、それは聖火だ。
(でも・・・なんでだ・・・)
矢を放ったのはアトラスに違いない。だが、なぜ、その聖なる火を持っていたのか。
さらにはあの箱だ。蓋が開けられ、炎が噴き出し、岩山を焼き始めた。あれもおそらくはその神火だ。ということは、つまり――と考えた途端、バサッと幌が上がった。
「水を持ってくる。すぐに戻る。ケール、汚らわしい液体を焼き払っておけ。汚れだけだぞ。加減を忘れるな、いいな」
指示を出しながらバサッと幌が降ろされる。と同時に、仰向けに置かれた身体を横向きにした。
(あっつ・・・い・・・)
不愉快な汚液がベッタリと張り付いて。堪えようもないほどに気持ちが悪い。だが、それ以上にズクズクと疼き続けている、気怠いだけじゃない、その感覚を。なんとか打ち消そうと身を縮こまらせた。
(いやだ・・・)
ギュッと下腹部を手で押さえて。ハァハァと途切れない息を整えるために、ゴクリと嚥下する。自分の身体に何をされたのか。
『オメガじゃぁ!! 上等なオメガじゃぁあぁ!!』
『オメガに淫毒を刺すじゃぁ!! もっと注ぐじゃぁあぁ!!』
脳裏に、先ほどの老婆たちの叫び声が浮かんだ。枝で拘束された時、二回ほど刺すような痛みが走ったのだ。あの時に淫毒とやらを注がれたのだろう。そして―――
(オメガの・・・オス・・・)
そう言われたのは、間違いなく自分だ。確か、臍の下にある気の源泉の一つに手をあてて。呪術師が視てわかるはずの属性を。枝に貫かれたことで読み取られたというのか。
(でも・・・オレは・・・)
この身体がオメガだなんて思いたくない。記憶がない自分の中に、確固たる性的知識がある。
男型の身でありながら、その発情期の繁殖力の強さ故に。孕まされる側として常に扱われ、時に見下され、抱かれることが役割だとばかりに虐げられる存在の。そんなオメガだなんて。
「クゥゥーン・・・」
耳元でした鳴き声にハッと現実に意識を戻した。
「ケー・・・ル・・・」
背後からペロペロと顔や髪を舐め始めた小さな体に。
「お前・・・無事で・・・ハァハァ・・・よかったな・・・ハァハァ・・・心配した」
優しく撫でてやりたいが、言葉すらままならない。
「いい・・・って・・・ハァハァ・・・お前が・・・汚れる・・・から・・・」
一生懸命に舐め取ろうとするその鼻先を。手で押さえて動きを制する。赤い焔から見事に復活したケールとは違って。汚液まみれの身体なのだ。だが――
(あっ・・・)
蝋燭程度の柔らかく弱い魔炎に。包まれたケールの足裏が舌がいたわるように触れてくるたびに、ジュッ・・・ジュッ・・・と黒い液体が消えていく。
(そうだ・・・ケールは・・・)
この小さな体が闇に消えた後、矢が現れ、邪気の源泉でもあるダイモーンの竈が深紅の炎で燃え上がったのだ。
それを天の火と言っていた老婆たち。あれがもし本当にプロメテウスの火であるのならば、それは聖火だ。
(でも・・・なんでだ・・・)
矢を放ったのはアトラスに違いない。だが、なぜ、その聖なる火を持っていたのか。
さらにはあの箱だ。蓋が開けられ、炎が噴き出し、岩山を焼き始めた。あれもおそらくはその神火だ。ということは、つまり――と考えた途端、バサッと幌が上がった。
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