オメガの戦士はアルファに囚われる~ギリシャ神話オメガバース~

壱度木里乃(イッチー☆ドッキリーノ)

文字の大きさ
57 / 169
5:非道な霊託と淫毒を刺された身体と

11

しおりを挟む
 逞しい両腕に抱かれたまま。アトラスがスタンッと飛び降り、獣車クーペの中に素早く寝かされた。

 「水を持ってくる。すぐに戻る。ケール、汚らわしい液体を焼き払っておけ。汚れだけだぞ。加減を忘れるな、いいな」

 指示を出しながらバサッと幌が降ろされる。と同時に、仰向けに置かれた身体を横向きにした。

 (あっつ・・・い・・・)

 不愉快な汚液がベッタリと張り付いて。堪えようもないほどに気持ちが悪い。だが、それ以上にズクズクと疼き続けている、気怠いだけじゃない、その感覚を。なんとか打ち消そうと身を縮こまらせた。
 
 (いやだ・・・)

 ギュッと下腹部を手で押さえて。ハァハァと途切れない息を整えるために、ゴクリと嚥下する。自分の身体に何をされたのか。

 『オメガじゃぁ!! 上等なオメガじゃぁあぁ!!』

 『オメガに淫毒を刺すじゃぁ!! もっと注ぐじゃぁあぁ!!』

 脳裏に、先ほどの老婆たちの叫び声が浮かんだ。枝で拘束された時、二回ほど刺すような痛みが走ったのだ。あの時に淫毒とやらを注がれたのだろう。そして―――

 (オメガの・・・オス・・・)

 そう言われたのは、間違いなく自分だ。確か、へその下にあるアルケーの源泉の一つに手をあてて。呪術師が視てわかるはずの属性を。枝に貫かれたことで読み取られたというのか。

 (でも・・・オレは・・・)

 この身体がオメガだなんて思いたくない。記憶がない自分の中に、確固たる性的知識がある。

 男型の身でありながら、その発情期の繁殖力の強さ故に。孕まされる側として常に扱われ、時に見下され、抱かれることが役割だとばかりに虐げられる存在の。そんなオメガだなんて。

 「クゥゥーン・・・」

 耳元でした鳴き声にハッと現実に意識を戻した。

 「ケー・・・ル・・・」

 背後からペロペロと顔や髪を舐め始めた小さな体に。
 
 「お前・・・無事で・・・ハァハァ・・・よかったな・・・ハァハァ・・・心配した」

 優しく撫でてやりたいが、言葉すらままならない。

 「いい・・・って・・・ハァハァ・・・お前が・・・汚れる・・・から・・・」

 一生懸命に舐め取ろうとするその鼻先を。手で押さえて動きを制する。赤い焔から見事に復活したケールとは違って。汚液まみれの身体なのだ。だが――

 (あっ・・・)

 蝋燭程度の柔らかく弱い魔炎に。包まれたケールの足裏が舌がいたわるように触れてくるたびに、ジュッ・・・ジュッ・・・と黒い液体が消えていく。

 (そうだ・・・ケールは・・・)

 この小さな体が闇に消えた後、矢が現れ、邪気の源泉でもあるダイモーンの竈が深紅の炎で燃え上がったのだ。

 それを天の火と言っていた老婆たち。あれがもし本当にプロメテウスの火であるのならば、それは聖火だ。

 (でも・・・なんでだ・・・)

 矢を放ったのはアトラスに違いない。だが、なぜ、その聖なる火を持っていたのか。

 さらにはあの箱だ。蓋が開けられ、炎が噴き出し、岩山を焼き始めた。あれもおそらくはその神火しんかだ。ということは、つまり――と考えた途端、バサッと幌が上がった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

流れる星は海に還る

藤間留彦
BL
若頭兄×現組長の実子の弟の血の繋がらない兄弟BL。 組長の命で弟・流星をカタギとして育てた兄・一海。組長が倒れ、跡目争いが勃発。実子の存在が知れ、流星がその渦中に巻き込まれることになり──。 <登場人物> 辻倉一海(つじくらかずみ) 37歳。身長188cm。 若い頃は垂れ目で優しい印象を持たれがちだったため、長年サングラスを掛けている。 組内では硬派で厳しいが、弟の流星には甘々のブラコン。 中村流星(なかむらりゅうせい) 23歳。身長177cm。 ストリートロックファッション、両耳ピアス。育ててくれた兄には甘えん坊だが、兄以外の前では──。 表紙イラストは座頭狂様に描いて頂きました✨ ありがとうございます☺️

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

巣ごもりオメガは後宮にひそむ【続編完結】

晦リリ@9/10『死に戻りの神子~』発売
BL
後宮で幼馴染でもあるラナ姫の護衛をしているミシュアルは、つがいがいないのに、すでに契約がすんでいる体であるという判定を受けたオメガ。 発情期はあるものの、つがいが誰なのか、いつつがいの契約がなされたのかは本人もわからない。 そんななか、気になる匂いの落とし物を後宮で拾うようになる。 第9回BL小説大賞にて奨励賞受賞→書籍化しました。ありがとうございます。

女子にモテる極上のイケメンな幼馴染(男)は、ずっと俺に片思いしてたらしいです。

山法師
BL
 南野奏夜(みなみの そうや)、総合大学の一年生。彼には同じ大学に通う同い年の幼馴染がいる。橘圭介(たちばな けいすけ)というイケメンの権化のような幼馴染は、イケメンの権化ゆえに女子にモテ、いつも彼女がいる……が、なぜか彼女と長続きしない男だった。  彼女ができて、付き合って、数ヶ月しないで彼女と別れて泣く圭介を、奏夜が慰める。そして、モテる幼馴染である圭介なので、彼にはまた彼女ができる。  そんな日々の中で、今日もまた「別れた」と連絡を寄越してきた圭介に会いに行くと、こう言われた。 「そーちゃん、キスさせて」  その日を境に、奏夜と圭介の関係は変化していく。

ヤンキーΩに愛の巣を用意した結果

SF
BL
アルファの高校生・雪政にはかわいいかわいい幼馴染がいる。オメガにして学校一のヤンキー・春太郎だ。雪政は猛アタックするもそっけなく対応される。  そこで雪政がひらめいたのは 「めちゃくちゃ居心地のいい巣を作れば俺のとこに居てくれるんじゃない?!」  アルファである雪政が巣作りの為に奮闘するが果たして……⁈  ちゃらんぽらん風紀委員長アルファ×パワー系ヤンキーオメガのハッピーなラブコメ! ※猫宮乾様主催 ●●バースアンソロジー寄稿作品です。

【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。【番外編あります】

紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。 相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。 超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。 失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。 彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。 ※番外編を公開しました(2024.10.21) 生活に追われて恋とは無縁の極貧イケメンの涼と、何もかもに恵まれた晄矢のラブコメBL。二人の気持ちはどっちに向いていくのか。 ※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。

オメガ大学生、溺愛アルファ社長に囲い込まれました

こたま
BL
あっ!脇道から出てきたハイヤーが僕の自転車の前輪にぶつかり、転倒してしまった。ハイヤーの後部座席に乗っていたのは若いアルファの社長である東条秀之だった。大学生の木村千尋は病院の特別室に入院し怪我の治療を受けた。退院の時期になったらなぜか自宅ではなく社長宅でお世話になることに。溺愛アルファ×可愛いオメガのハッピーエンドBLです。読んで頂きありがとうございます。今後随時追加更新するかもしれません。

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

処理中です...